「病院へ連れて行きたいけれど、一人では車に乗せられない」
「足腰が弱くなって、抱きかかえることができなくなった」
「立てなくなった大型犬を、どうやって病院まで運べばいいの?」
大型犬と暮らしていると、体調が悪くなった時に、
「病院で診てもらう必要はあるけれど、そもそも連れて行くことができない」
という問題が起こることがあります。
若い頃は自分で車に飛び乗っていた犬でも、高齢になれば足腰が弱くなったり、病気や痛みによって立つことが難しくなったりすることがあります。
小型犬であれば抱きかかえられる場面でも、体重が20kg、30kg、40kg以上ある大型犬では、飼い主さん一人で安全に移動させることが難しい場合があります。
今回は、
- 大型犬の通院が難しくなる理由
- 無理に抱き上げない方がよいケース
- 歩ける大型犬の移動を助ける方法
- 歩けない大型犬を移動する時の注意点
- スロープや補助ハーネスの活用
- 動物病院へ事前に相談できること
- 往診という選択肢
- 緊急時に気をつけたいこと
について、獣医師の立場からお伝えします。
- 大型犬は「病院へ行くまで」が大きな負担になることがあります
- 「一人で持ち上げれば何とかなる」と無理をしないでください
- まだ歩ける場合は「歩くのを助ける」方法があります
- 車への乗り降りにはスロープが役立つこともあります
- 歩けない大型犬を移動する時は複数人で
- 動物病院へ到着したら、駐車場から手伝ってもらえる場合もあります
- 玄関や階段が通院の大きな壁になることもあります
- 滑る床も大型犬の移動を難しくします
- 「最近車に乗れなくなった」は身体の変化のサインかもしれません
- 元気なうちに大型犬の「移動プラン」を考えておきましょう
- 一人で移動させられない時には往診という方法があります
- かかりつけ医と往診を使い分けることもできます
- 緊急性が高い場合には、往診を待たない方がよいこともあります
- 「大型犬だから連れて行けない」で診察を諦めないでください
- 福岡市で大型犬の往診をご検討の方へ
大型犬は「病院へ行くまで」が大きな負担になることがあります
大型犬の通院では、診察そのものだけではなく、
玄関まで移動する。
階段や段差を越える。
車まで歩く。
車へ乗る。
病院の駐車場から院内へ移動する。
そして、診察後に同じ道を戻る。
という移動があります。
元気な時には問題なくできていたことでも、高齢になったり病気になったりすると、一つひとつが難しくなることがあります。
特に、
- 後ろ足が弱っている
- 関節に痛みがある
- 自分で立ち上がれない
- 少し歩くだけで疲れてしまう
- 車へ飛び乗れなくなった
- 階段の上り下りが難しい
といった変化がある場合には、通院方法について考える必要があります。
AAHAのシニアケアガイドラインでも、高齢の犬では移動能力の低下や関節痛などを考慮し、スロープや補助ハーネスなどを活用して移動を助ける方法が紹介されています。
「一人で持ち上げれば何とかなる」と無理をしないでください
大型犬が歩けなくなると、
「何とか抱えて車まで運ぼう」
と思うこともあると思います。
ですが、無理に持ち上げることはおすすめできません。
犬の状態によっては、身体を動かすことで痛みが強くなったり、ケガを悪化させたりする可能性があります。
また、大型犬を一人で持ち上げることで、飼い主さん自身が腰や背中を痛めてしまうこともあります。
特に、
- 交通事故など大きな外傷がある
- 骨折が疑われる
- 強い痛みがある
- 首や背中を痛めている可能性がある
- 呼吸が苦しそう
といった場合には、自己判断で大きく身体を動かさず、まず動物病院へ連絡して移動方法について指示を受けてください。
まだ歩ける場合は「歩くのを助ける」方法があります
自分でまったく立てないわけではなく、
「立つことはできるけれど、後ろ足がふらつく」
「少し支えれば歩ける」
という大型犬では、補助ハーネスなどが役立つことがあります。
たとえば、
- 胸やお腹を支える補助ハーネス
- 後肢を支えるスリング
- 身体全体を支えられる介護用ハーネス
などです。
大型犬では、ただ身体を引っ張るのではなく、胸・腰・後肢などをバランスよく支えることが大切です。
ただし、どの部分を支えるのが安全かは病気によって異なります。
関節の病気なのか。
神経の病気なのか。
骨折などの外傷なのか。
原因によって適切な支え方が変わります。
初めて補助具を使う場合には、獣医師やリハビリテーションの専門家へ相談することをおすすめします。
車への乗り降りにはスロープが役立つこともあります
「歩くことはできるけれど、車へ飛び乗れない」
という大型犬では、ペット用スロープを利用する方法があります。
高齢犬では、
車へ飛び乗る。
高い段差から飛び降りる。
という動きが、関節や足腰への大きな負担になることがあります。
スロープを使用することで、段差を小さくし、移動を助けられる場合があります。
ただし、
滑りやすい。
傾斜が急すぎる。
幅が狭い。
といったスロープは、かえって転倒につながることがあります。
滑りにくく、犬の体格に合ったものを選び、体調が良い時から少しずつ練習しておくと安心です。
急に体調を崩した日に初めてスロープを出しても、怖がって使えないことがあります。
歩けない大型犬を移動する時は複数人で
自分で立つことができない大型犬の場合には、可能であれば複数人で移動する方が安全です。
状態によっては、
- 大きなタオルや毛布を身体の下へ通して支える
- 搬送用のスリングを使用する
- ストレッチャーのようなものを利用する
といった方法があります。
VCA Animal Hospitalsでも、歩けない大型犬を搬送する場合、毛布などをスリングとして使用して身体を支える方法が紹介されています。
ただし、これはすべての状態で安全という意味ではありません。
特に外傷や強い痛みがある場合には、動かし方によって状態を悪化させる可能性があります。
実際に移動する前に、動物病院へ電話して状況を伝え、どのように運ぶべきか確認してください。
動物病院へ到着したら、駐車場から手伝ってもらえる場合もあります
大型犬を車へ乗せることはできても、
「病院に着いてから車から降ろせない」
ということもあります。
その場合には、病院へ到着してから一人で無理に降ろそうとせず、まず受付へ連絡してみてください。
病院によっては、スタッフが駐車場まで来て移動を手伝える場合があります。
AAHAのシニアケアガイドラインでも、高齢犬の診療では、車への乗り降りをスタッフがサポートすることなどが、シニア犬の通院負担を減らす方法として挙げられています。
事前に、
「大型犬で、自力では車から降りられません」
と予約時に伝えておくと、病院側も準備しやすくなります。
玄関や階段が通院の大きな壁になることもあります
意外と見落としやすいのが、自宅から車までの移動です。
たとえば、
2階から階段を下りなければならない。
玄関に大きな段差がある。
マンションの共用部を長く歩く必要がある。
駐車場まで距離がある。
といった環境では、車へ乗せる前の段階で移動が難しくなることがあります。
高齢犬では、小さな段差でも負担になる場合があります。AAHAも、シニア犬では階段や段差、滑りやすい床などが移動の妨げになり得るとしています。
普段から、
「この子が歩けなくなったら、どうやって外まで運ぶ?」
と一度考えておくことも大切です。
滑る床も大型犬の移動を難しくします
高齢の大型犬では、
立ち上がろうとしても後ろ足が滑る。
歩き始めに踏ん張れない。
方向転換で転びそうになる。
ということがあります。
フローリングなど滑りやすい床では、足腰が弱った犬の負担がさらに大きくなる場合があります。
自宅では、
- 滑りにくいマットを敷く
- 移動する場所だけでもカーペットを敷く
- 足元の障害物を減らす
などの工夫があります。
こうした環境調整は、通院のためだけではなく、普段の生活を安全にすることにもつながります。
「最近車に乗れなくなった」は身体の変化のサインかもしれません
大型犬が、
「以前は車に乗れたのに、最近嫌がる」
という時には、単にわがままになったとは限りません。
たとえば、
関節が痛い。
後ろ足に力が入りにくい。
段差を上がることが難しい。
視力が低下している。
身体のバランスが取りづらい。
といった変化が隠れている可能性もあります。
高齢犬の慢性的な痛みや移動能力の低下は、「年齢のせい」と見過ごされることがあります。AAHAも、シニア犬では痛みや移動能力を継続して評価することを重視しています。
「車に乗らなくなった」という行動の変化も、診察時に獣医師へ伝えてください。
元気なうちに大型犬の「移動プラン」を考えておきましょう
大型犬の場合、急に立てなくなってから移動方法を考えるのは大変です。
元気な時に、
- 車へどう乗せるか
- スロープは使用できるか
- 補助ハーネスを準備しておくか
- 一人で無理な場合に誰へ助けを頼むか
- 動物病院のスタッフに移動を手伝ってもらえるか
- 往診を利用できる地域か
などを確認しておくと安心です。
特に高齢になってきた大型犬では、
「まだ歩けるから大丈夫」ではなく、「歩けなくなった時にどうするか」
を少し早めに考えておくことをおすすめします。
一人で移動させられない時には往診という方法があります
さまざまな方法を考えても、
「一人ではどうしても車へ乗せられない」
「寝たきりで移動そのものが難しい」
「階段があり、自宅から外へ連れ出せない」
という場合には、獣医師がご自宅へ伺う往診が選択肢になることがあります。
往診では、犬を病院まで移動させる必要がありません。
普段過ごしている場所で身体の状態を確認し、その子の状態や設備に応じて、
- 身体検査
- 一部の検査
- 注射などの治療
- お薬の処方
- 在宅療養や介護についての相談
などを行える場合があります。
また、実際の生活環境を確認できるため、
「この床で大丈夫?」
「このスロープは使えそう?」
「どう支えて歩かせればいい?」
といった移動や介護について相談できる場合もあります。
かかりつけ医と往診を使い分けることもできます
普段から通っている動物病院がある場合でも、往診を利用することはできます。
たとえば、
自分で歩ける時は、かかりつけの動物病院。
移動が難しくなった時は往診。
レントゲンなど詳しい検査が必要な時は病院。
自宅での経過確認や介護相談は往診。
というような使い分けです。
大型犬が高齢になったからといって、
「これからは病院か往診のどちらかだけ」
と決める必要はありません。
その時の状態に合わせて診療方法を選ぶことができます。
緊急性が高い場合には、往診を待たない方がよいこともあります
大型犬を移動させることが難しくても、状態によっては設備の整った動物病院での緊急診療が必要になることがあります。
たとえば、
- 呼吸が非常に苦しそう
- 意識がない、反応がおかしい
- けいれんが続いている
- 大量に出血している
- 交通事故など大きな外傷がある
- お腹が急に大きく張って苦しそう
- 急激にぐったりした
- 誤食や中毒が疑われる
といった場合です。
このような時には、
「一人では運べないからどうしよう」
と自宅だけで悩まず、まず動物病院へ連絡してください。
大型犬であること、自力で歩けないこと、一人では移動できないこと
も含めて状況を伝えてください。
どのように搬送するのがよいのか、往診を待てる状態なのか、すぐに病院へ向かう必要があるのかを相談しましょう。
「大型犬だから連れて行けない」で診察を諦めないでください
大型犬と暮らしていると、身体の大きさゆえの現実的な問題があります。
小型犬のように簡単には抱きかかえられない。
一人では身体を支えられない。
車へ乗せられない。
階段を下ろせない。
それは、飼い主さんの気持ちや努力が足りないということではありません。
だからこそ、
無理に一人で動かそうとするのではなく、
補助具を使う。
家族や周囲に協力を求める。
動物病院へ移動の相談をする。
往診を利用する。
その子とご家族が安全に続けられる方法を考えることが大切です。
「連れて行けないから、診てもらえない」
と諦める前に、まず獣医師へ相談してください。
福岡市で大型犬の往診をご検討の方へ
福岡犬猫往診クリニックでは、福岡市を中心に大型犬の往診も行っています。
「一人では大型犬を車へ乗せられない」
「高齢になり、自分で歩けなくなった」
「寝たきりになって病院へ連れて行くことが難しい」
という場合には、往診専用LINEからご相談いただけます。
▼往診についてのご相談はこちら
https://lin.ee/P5x6bjfZ
犬の状態によっては、往診ではなく設備の整った動物病院での検査・治療をご案内する場合があります。
福岡犬猫往診クリニック
獣医師 かわの わいちろう
※この記事は、大型犬の通院・移動・往診について一般的な情報をお伝えするものです。病気や外傷によって安全な移動方法は異なります。自力で歩けない、強い痛みがある、外傷が疑われるなどの場合には、無理に移動させず、まず獣医師へご相談ください。
参考情報
- AAHA「2023 AAHA Senior Care Guidelines for Dogs and Cats」
- VCA Animal Hospitals「First Aid for Limping Dogs」
- VCA Animal Hospitals「First Aid for Falls in Dogs」
