動物病院を怖がる犬猫|通院ストレスを減らす方法と往診という選択肢を獣医師が解説

「キャリーケースを出しただけで隠れてしまう」

「車に乗ると震えたり、鳴き続けたりする」

「動物病院に着くと緊張して、普段とはまったく違う様子になる」

犬や猫の中には、動物病院へ行くことを強く怖がる子がいます。

診察そのものだけではありません。

キャリーケースに入ること。

車で移動すること。

知らない場所へ行くこと。

他の犬や猫の気配。

待合室で過ごすこと。

そして、知らない人に身体を触られること。

通院には、犬猫にとって普段とは違う出来事がいくつも重なっています。

そのため、

「病院に連れて行くたびに、こんなに怖がらせていいのかな」

と悩む飼い主さんもいらっしゃると思います。

ただし、怖がるからといって、必要な診察まで諦める必要はありません。

通院方法を工夫したり、事前に動物病院へ相談したり、ご自宅で診察を受ける往診を検討したりと、その子に合った方法を考えることができます。

今回は、

  • 犬猫はなぜ動物病院を怖がるのか
  • 通院ストレスのサイン
  • 猫のキャリーケース対策
  • 犬の車移動や待合室での工夫
  • 動物病院へ事前に相談できること
  • 往診という選択肢
  • 往診が必ずしも合うとは限らない理由

について、獣医師の立場からお伝えします。

犬猫にとって「通院」は診察室に入る前から始まっています

私たちは「動物病院へ行く」と聞くと、診察室で獣医師に診てもらう時間を思い浮かべるかもしれません。

ですが、犬や猫にとって通院はもっと前から始まっています。

猫の場合は、

キャリーケースが出てくる。

捕まえられてキャリーに入る。

家の外へ出る。

車に乗る。

知らない場所へ着く。

犬や猫の鳴き声や匂いがする。

診察室へ入り、知らない人に触られる。

そして、再び車に乗って帰宅する。

こうした一連の流れすべてが負担になることがあります。

犬でも、

車が苦手。

知らない犬が苦手。

待合室の音が苦手。

診察台が怖い。

身体を触られることが苦手。

など、怖がる理由はその子によって異なります。

だからこそ、

「病院が嫌いな子」

というひとことで終わらせず、

「通院のどの場面で負担を感じているのか」

を考えてみることが大切です。

こんな様子があれば、通院に強いストレスを感じている可能性があります

犬や猫が怖がっていても、必ず大きな声で鳴いたり暴れたりするとは限りません。

たとえば、

  • 身体が震える
  • 呼吸が速くなる
  • ハアハアする
  • よだれが増える
  • 鳴き続ける
  • キャリーケースの奥で固まる
  • 隠れようとする
  • 逃げようとする
  • 身体を低くする
  • 耳を伏せる
  • しっぽを身体に巻き込む
  • シャーと威嚇する
  • 唸る
  • 咬もうとする
  • まったく動かなくなる

といった様子がみられることがあります。

特に、

「大人しくしている=怖がっていない」

とは限りません。

強い恐怖によって動けなくなっている場合もあります。

普段の様子と比較して、

「病院へ行く時だけ明らかに違う」

という変化があれば、次回の診察前に獣医師やスタッフへ伝えておくとよいでしょう。

怖がることを「わがまま」と考えなくて大丈夫です

犬や猫が病院で逃げたり、隠れたり、唸ったりすると、

「迷惑をかけてしまって申し訳ない」

と感じる飼い主さんもいらっしゃると思います。

ですが、その行動は単なる「わがまま」ではなく、

怖い、逃げたい、自分を守りたい

という反応として現れていることがあります。

大切なのは無理に我慢させることではなく、

「この子は何を怖がっているのだろう」

と考えることです。

強く押さえつければ診察できる、というものでもありません。

その経験がさらに怖い記憶として残り、次回の通院がもっと難しくなることもあります。

怖がりなこと、過去に咬んだこと、診察時に暴れたことなども、遠慮せず事前に動物病院へ伝えてください。

安全に診察する方法を考えるための大切な情報です。

猫はキャリーケースを「病院へ行く合図」にしない工夫を

猫の場合、

キャリーケースを見るだけで逃げる

というご相談は珍しくありません。

普段は押し入れなどにしまっていて、病院へ行く日にだけ突然キャリーが出てくる。

そして捕まえられて中へ入れられ、そのまま苦手な病院へ行く。

これを繰り返すと、

「キャリーケース=嫌なことが起こる」

と覚えてしまうことがあります。

そのため、可能であればキャリーケースを普段から部屋に置き、

  • 中にお気に入りの毛布を入れる
  • おやつを入れておく
  • 自由に出入りできるようにする
  • 中で眠れる環境を作る

など、日常生活の一部にしておく方法があります。

「病院へ行く時だけ使う箱」ではなく、

普段から知っている安全な場所

に近づけていくことが目的です。

すでに強く怖がる猫の場合は、無理に中へ押し込む練習を繰り返すのではなく、その子に合った方法を獣医師へ相談してください。

キャリーを運ぶ時にも少し工夫できます

猫がキャリーに入ったあとも、移動方法によって負担が変わることがあります。

キャリーが大きく揺れたり、周囲の刺激が次々に見えたりすると、不安が強くなる子もいます。

移動するときには、

  • キャリーを大きく揺らさない
  • 安定するように持つ
  • 車内でも倒れたり動いたりしないよう固定する
  • 必要に応じて通気性を確保したうえで布などで視界を遮る
  • 車内をできるだけ静かにする

といった工夫があります。

どの方法を好むかは猫によって違います。

外が見えない方が落ち着く子もいれば、逆に不安になる子もいます。

その子の反応を見ながら調整してください。

犬の場合は「車=病院」になっていないか確認してみましょう

犬でも、

「車に乗った瞬間から震える」

という子がいます。

もし車に乗る機会が動物病院へ行く時だけなのであれば、

車に乗る=怖い病院へ行く

という関連ができている可能性もあります。

車が苦手ではなく、健康状態に問題がない子であれば、

短時間だけ車に乗って帰る。

楽しい場所へ出かける。

車の中でおやつを食べる。

など、病院以外の経験を少しずつ増やす方法もあります。

ただし、車酔いをする犬もいます。

車に乗るとよだれや嘔吐がみられる場合には、「怖がっているだけ」と判断せず、獣医師へ相談してください。

待合室が苦手なら、病院へ相談してみましょう

犬猫によっては、

診察そのものよりも待合室が苦手ということがあります。

知らない犬。

知らない猫。

鳴き声。

人の出入り。

さまざまな匂い。

こうした刺激が重なることで、不安が強くなることがあります。

病院によって対応は異なりますが、

  • 混雑しにくい時間帯に予約できるか
  • 車などで待機できるか
  • 診察室へ早めに案内してもらえるか
  • 他の犬猫との距離をとれる場所があるか

などを相談できる場合があります。

「怖がりなので、できれば待ち時間を少なくしたい」

と予約時に伝えておくだけでも、病院側が対応を考えやすくなることがあります。

病院へ行く前のお薬を相談できる場合もあります

通院への恐怖や不安が非常に強い犬猫では、獣医師が状態を確認したうえで、来院前に使用するお薬を検討する場合があります。

目的は、

「動けなくすること」

ではありません。

強い恐怖や不安をできるだけ和らげ、犬猫自身の負担を減らしながら、安全に必要な診察を行えるようにすることです。

ただし、お薬の種類や量は、

年齢。

体重。

持病。

現在使用している薬。

身体の状態。

などによって異なります。

以前処方された薬や人用のお薬を自己判断で使用せず、必ず獣医師へ相談してください。

「次の通院もかなり怖がりそう」

と分かっている場合には、診察当日ではなく事前に相談しておくことをおすすめします。

自宅で身体を触られることに少しずつ慣れる方法もあります

病院へ行くと、

耳。

口。

足先。

お腹。

など、普段はあまり触られない場所を確認することがあります。

健康で、触られることを極端に嫌がらない犬猫であれば、普段から短い時間だけ身体に触れ、

落ち着いていられたら褒めたり、おやつを使ったりして、

「身体を触られる=嫌なことだけではない」

という経験を積む方法もあります。

ただし、

嫌がっているのに無理に続けない。

痛そうな場所は触らない。

咬む可能性がある場合は無理をしない。

ことが大切です。

特に高齢犬・高齢猫では、以前は触られても平気だったのに、関節などの痛みによって急に嫌がるようになることもあります。

「最近、触ると怒るようになった」

という変化がある場合には、性格だけではなく痛みについても獣医師へ相談してください。

怖がる子に往診という選択肢もあります

さまざまな工夫をしても、

病院へ行くこと自体が非常に大きな負担になる犬猫もいます。

そのような場合には、獣医師がご自宅へ伺って診察する往診が選択肢になることがあります。

往診では、

車で移動する。

待合室で待つ。

知らない犬猫と同じ空間で過ごす。

といった過程がありません。

その子が普段生活している部屋や、いつものベッド、ご家族のそばなどで診察できます。

環境が変わることへの負担が大きい子では、自宅で診察することで通院に伴うストレスを減らせる場合があります。

怖がりな犬猫なら「必ず往診が合う」わけではありません

ここは、とても大切なところです。

病院を怖がる犬猫=往診なら必ず大丈夫

というわけではありません。

犬や猫の中には、

「自分の縄張りに知らない人が入ってくる」

ことを強く警戒する子もいます。

玄関チャイムが苦手。

来客に吠える。

知らない人が入ると隠れて出てこない。

家の中で他人に触られることを嫌がる。

このような子では、往診でも緊張することがあります。

特に猫では、普段安心している自宅だからこそ、知らない人による診察を強く嫌がる場合もあります。

そのため、

「病院と往診のどちらがその子に合っているか」

は、一頭一頭異なります。

往診ではできない検査・治療もあります

もうひとつ知っておいていただきたいのが、往診の設備には限りがあることです。

状態によっては、

  • レントゲンなど設備を必要とする検査
  • 手術
  • 全身麻酔が必要な処置
  • 入院管理
  • 緊急処置

など、動物病院でなければ対応できないことがあります。

そのため、

「病院が怖いから、どんな状態でも往診だけで」

と決めるのではなく、

必要な医療と、その子のストレスの両方を考えることが大切です。

詳しい検査は動物病院。

普段の状態確認は往診。

というように、使い分ける方法もあります。

「怖がるから病院へ行かない」ではなく、診察方法を考えてみてください

病院へ行くたびに強く震えたり、隠れたり、鳴いたりする姿を見ると、

「この子にこんな思いをさせてまで病院へ連れて行くべきなのかな」

と思うこともあると思います。

ですが、怖がることを理由に、必要な診察そのものを長く先延ばしにしてしまうと、病気の発見や治療が遅れてしまうことがあります。

だからこそ、

病院での待ち時間を減らす。

キャリーに慣れる練習をする。

車での移動方法を工夫する。

低ストレスな診察方法について相談する。

必要なら来院前のお薬について相談する。

往診を利用する。

「診察を受けるか、受けないか」ではなく、「どうすればこの子が少しでも負担の少ない方法で診察を受けられるか」

を考えてみてください。

急な体調不良では、ストレスよりも治療を優先する場合があります

どれだけ病院を怖がる子であっても、緊急性が高い状態では、設備の整った動物病院での診療が必要になる場合があります。

たとえば、

  • 呼吸が非常に苦しそう
  • 意識がない、反応がおかしい
  • けいれんが続いている
  • 大量に出血している
  • 急激にぐったりした
  • 交通事故など大きな外傷がある
  • 誤食や中毒が疑われる

といった場合です。

こうした場合には、

「病院を怖がるから」

ということだけを理由に受診を遅らせないでください。

病院へ向かう前に連絡できる状況であれば、

「非常に怖がる子です」

と伝えておくことで、可能な範囲で対応を考えてもらえることがあります。

その子に合った診察方法を探していきましょう

犬や猫にも、それぞれ性格があります。

病院でも比較的落ち着いて過ごせる子。

キャリーに入るだけで強く怖がる子。

車が苦手な子。

他の犬猫を見ると緊張する子。

知らない人が自宅へ来る方が苦手な子。

みんな同じではありません。

だからこそ、

「この方法がすべての犬猫に一番良い」

という答えもありません。

大切なのは、

その子が何を怖がっているのかを知ること。

必要な診療を受けられること。

できるだけ不必要な恐怖やストレスを減らすこと。

この3つを一緒に考えることだと思います。

動物病院を怖がることで通院に悩んでいる場合には、まずかかりつけの獣医師へ相談してみてください。

そして、通院そのものが大きな負担になっている場合には、往診という方法も選択肢のひとつとして知っておいていただけたらと思います。

福岡市で病院を怖がる犬猫の往診をご検討の方へ

福岡犬猫往診クリニックでは、福岡市を中心に犬猫の往診を行っています。

「キャリーに入れるだけでも強く怖がる」

「車での移動が大きなストレスになっている」

「病院では緊張が強く、通院することに悩んでいる」

という場合には、往診専用LINEからご相談いただけます。

▼往診についてのご相談はこちら
https://lin.ee/P5x6bjfZ

犬猫の性格や症状によっては、往診よりも動物病院での診療が適している場合があります。

福岡犬猫往診クリニック
獣医師 かわの わいちろう


※この記事は、動物病院を怖がる犬猫の通院ストレスや往診について一般的な情報をお伝えするものです。強い恐怖や不安がある場合の対応は、犬猫の性格・年齢・健康状態などによって異なります。来院前のお薬を含め、自己判断で薬を使用せず、かかりつけの獣医師へご相談ください。

参考情報

  • AAHA「Preparing Your Pet for a Successful Veterinary Visit」
  • AAHA「Helping Your Cat Cope With Veterinary Visits」
  • AAHA「Canine and Feline Behavior Management Guidelines」
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