終末期の犬猫を自宅で診てもらいたい時|在宅ケアと往診について獣医師が解説

「病院へ連れて行くことが、もう大きな負担になっている」

「できるだけ慣れた自宅で過ごさせてあげたい」

「食事も少なくなってきたけれど、このまま家で見ていて大丈夫なのだろうか」

大切な犬や猫が病気になり、少しずつ身体の状態が変化していくと、飼い主さんはさまざまな迷いを抱えると思います。

治療を続けたい。

苦しい思いはさせたくない。

できれば大好きな家で過ごさせてあげたい。

その一方で、

「自宅にいることで、必要な治療を受けられなくならないだろうか」

と心配になることもあるかもしれません。

そのようなときに知っていただきたい選択肢のひとつが、獣医師がご自宅へ伺う往診です。

今回は、

  • 終末期の犬猫における在宅ケアとは
  • 往診でどのようなことを相談できるのか
  • 自宅で確認しておきたいポイント
  • 少しでも過ごしやすくするための環境づくり
  • 往診と動物病院の使い分け
  • すぐに動物病院へ相談したい変化

について、獣医師の立場からお伝えします。

「終末期だから、もう何もできない」わけではありません

病気が進行し、

「治すことが難しい」

という段階を迎えることがあります。

そのとき、

「もう治療できないのなら、何もしてあげられないのでは」

と感じる飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。

ですが、病気を治すことだけが獣医療ではありません。

痛みや苦しさをできるだけ和らげる。

食事や水分について考える。

楽に休める姿勢や環境を整える。

排泄をお手伝いする。

呼吸や身体の状態を確認する。

その子が少しでも穏やかに過ごせる時間を支える。

こうしたことも、大切なケアです。

終末期や進行した病気では、病気そのものへの治療に加えて、苦痛をできるだけ少なくするための緩和ケアを考えることがあります。

緩和ケアは、「すべての治療をやめる」という意味ではありません。

その子の病状やご家族のお考えに合わせて、必要な治療と組み合わせながら行うこともあります。

終末期の犬猫も往診で診察できる場合があります

通院が難しくなった犬猫では、ご自宅で診察を受ける往診が選択肢になることがあります。

たとえば、

  • 立ち上がることが難しくなった
  • 寝ている時間が大きく増えた
  • 車での移動が負担になった
  • 大型犬で家族だけでは移動させることが難しい
  • 病院へ行ったあとの疲れが非常に大きい
  • 自宅で療養を続けたい

といった場合です。

往診では、ご自宅へ伺って身体の状態を確認し、その子に今どのようなケアが必要なのかを考えていきます。

状態によっては、ご自宅で診察や一部の検査、注射、お薬の処方などを行える場合もあります。

ただし、往診でできる検査や治療には限りがあります。

大切なのは、

「何でも自宅で行う」ことではなく、「その子に必要な医療をどこで受けるのがよいか」を考えることです。

自宅で過ごす時に確認したい6つのポイント

終末期や在宅療養では、

「今、この子は苦しくないだろうか」

と心配になることが多いと思います。

そのようなときには、ひとつの症状だけではなく、毎日の状態をいくつかの方向から見てあげてください。

1.呼吸は苦しくなさそうか

呼吸は、とても大切なポイントです。

普段より明らかに呼吸が速い。

胸やお腹を大きく使って呼吸している。

口を開けて苦しそうに呼吸している。

横になれず、落ち着かない。

といった変化がある場合には注意が必要です。

呼吸が苦しそうな場合には、往診を待つよりも早急な医療が必要になることがあります。

2.痛みや不快感はないか

犬や猫は、痛みを言葉で伝えることができません。

たとえば、

  • 触ると嫌がる
  • 落ち着いて眠れない
  • 同じ姿勢から動こうとしない
  • 身体を丸めたまま過ごしている
  • 以前より家族との関わりが減った

などの変化がみられることがあります。

痛みの表現は、その子によって異なります。

「いつもと違う」と感じたら、その様子を獣医師へ伝えてください。

3.食事と水分はとれているか

食欲は、病気の進行や体調の変化によって低下することがあります。

何をどのくらい食べたのか。

水は飲めているのか。

飲んでも吐いてしまわないか。

などを確認しておきましょう。

ただし、

「食べないから何とか食べさせなければ」

と無理をすることが、かえって負担になる場合もあります。

食事や水分をどのようにするかは、その子の病状によって異なるため、獣医師へ相談してください。

4.排尿・排便はできているか

自分でトイレまで行けなくなることもあります。

尿は出ているか。

便は出ているか。

排泄するときに苦しそうではないか。

身体が排泄物で汚れていないか。

なども見てあげてください。

寝たきりの子では、排泄の介助や身体を清潔に保つことについても相談が必要になることがあります。

5.自分で動けているか

立ち上がれるか。

歩けるか。

寝返りができるか。

水や食事の場所まで移動できるか。

こうした日常の動作も大切です。

できないことが増えてきた場合には、

「介助すればできること」

「環境を変えれば楽になること」

がないか考えていきます。

6.その子らしい時間が残っているか

体調だけではなく、

家族の声に反応する。

好きな場所で眠る。

撫でてもらうと落ち着く。

好きなものに興味を示す。

といった、その子らしい反応を見ることも大切です。

毎日記録していると、

「今日は比較的穏やかだった」

「最近、つらそうな日が増えてきた」

という変化が見えやすくなることがあります。

「良かった日・つらそうだった日」を記録する方法もあります

終末期の犬猫を毎日見ていると、少しずつ起きている変化に気づきにくくなることがあります。

そのようなときには、

カレンダーやノートに、

○=比較的穏やかに過ごせた日

△=少し気になることがあった日

×=つらそうな時間が多かった日

など、簡単に記録してみる方法もあります。

さらに、

  • 食事
  • 水分
  • 呼吸
  • 排泄
  • 痛み
  • 歩行
  • 家族への反応

などを少しメモしておくと、獣医師へ相談するときにも役立ちます。

大切なのは、数字だけで結論を出すことではありません。

飼い主さんだけで判断を抱え込まず、その記録を獣医師と一緒に見ながら今後を考えるために使うことです。

自宅で少しでも過ごしやすくするために

終末期やシニア期では、生活環境を少し変えるだけで過ごしやすくなることがあります。

たとえば、

食事や水を近くに置く

歩くことが難しくなった子では、寝床から無理なく届く場所に置くことで負担を減らせる場合があります。

床を滑りにくくする

足腰が弱った犬では、フローリングで滑ることが大きな負担になることがあります。

マットなどを利用して歩きやすくする方法があります。

寝床を見直す

長く横になっている子では、身体に負担がかかりにくく、清潔に保ちやすい寝床を考えます。

トイレまでの距離を短くする

猫では、トイレの位置や入口の高さが負担になる場合があります。

犬でも、排泄場所まで移動することが難しくなることがあります。

ただし、その子の病気や身体の状態によって適した方法は異なります。

往診では実際の生活環境を確認しながら、ご自宅でできる工夫について相談できることもあります。

ご家族の負担についても考えることが大切です

在宅療養というと、

「この子のためなら、家族が何でも頑張らなければ」

と思ってしまうことがあるかもしれません。

ですが、介護が長く続くと、

夜間も何度も起きる。

排泄のお世話が必要になる。

食事や水分の介助が必要になる。

身体を動かすために力が必要になる。

など、ご家族にも大きな負担がかかることがあります。

ご家族が無理なく続けられる方法を考えることも、在宅ケアでは大切です。

できないことがあるからといって、ご家族の愛情が足りないわけではありません。

「ここが大変です」

「夜のお世話が難しくなってきました」

「どうしたらいいか分かりません」

ということも、獣医師へ伝えてください。

その子だけではなく、ご家族も含めて続けられる方法を考えていくことが大切だと思っています。

「最期まで自宅で」と決めなくても大丈夫です

一度在宅療養を始めると、

「最後まで絶対に自宅で過ごさせなければ」

と思ってしまうことがあるかもしれません。

ですが、途中で方針が変わっても構いません。

状態が変われば、必要な医療も変わります。

ご自宅で穏やかに過ごせていたとしても、急に呼吸が苦しくなったり、強い痛みが出たり、緊急の処置が必要になったりすることがあります。

その場合には、動物病院での治療を選ぶこともあります。

反対に、病院で治療を受けて状態が落ち着いたあと、ご自宅へ戻って在宅療養を続けることもあります。

往診か病院かを一度決めたら変えられないわけではありません。

その時々の状態に合わせて考えていくことができます。

こんな変化がある場合には早めに獣医師へ相談してください

在宅療養中に、

  • 呼吸が明らかに苦しそう
  • 強い痛みがあるように見える
  • 食事や水分がほとんどとれない
  • 繰り返し嘔吐している
  • 尿が出ない
  • 立てなくなった
  • 意識や反応が明らかに変わった
  • けいれんが続いている
  • 短時間で急激に状態が悪化した

などの変化がみられた場合には、早めに獣医師へ相談してください。

特に緊急性が高い状態では、往診を待つのではなく、設備の整った動物病院での診療が必要になる場合があります。

「この変化は急いだ方がいい?」

と判断に迷う場合にも、現在の様子を伝えて相談してください。

終末期だからこそ「これからどう過ごしたいか」を考えてみてください

大切な犬や猫の終末期について考えることは、簡単なことではありません。

「もっと治療をした方がいいのかな」

「家で過ごさせるという選択でいいのかな」

「今、この子は苦しくないのかな」

何度も迷うことがあると思います。

そのときに、ひとつの正解を探そうとしなくてもよいと私は思っています。

大切にしたいことは、ご家庭によって違います。

できるだけ治療を続けたい。

通院の負担を減らしたい。

家族がそばにいられる時間を大切にしたい。

痛みや苦しさをできるだけ少なくしてあげたい。

まず、

「この子にどんな時間を過ごしてほしいか」

をご家族で考えてみてください。

そして、それを獣医師へ伝えてください。

治療することだけではなく、その子とご家族がどのように時間を過ごしていくかを一緒に考えることも、終末期の診療では大切だと思っています。

福岡市で終末期の犬猫の往診をご検討の方へ

福岡犬猫往診クリニックでは、福岡市を中心に、終末期や在宅療養中の犬猫の往診を行っています。

「病院へ連れて行くことが難しくなった」

「できるだけ自宅で過ごさせてあげたい」

「今の状態で、自宅で何ができるのか知りたい」

という場合には、往診専用LINEからご相談いただけます。

▼往診についてのご相談はこちら
https://lin.ee/P5x6bjfZ

犬猫の状態によっては、往診ではなく動物病院での検査・治療をご案内する場合があります。

福岡犬猫往診クリニック
獣医師 かわの わいちろう


※この記事は、終末期の犬猫の在宅ケアや往診について一般的な情報をお伝えするものです。適切な治療やケアは、病気・症状・身体の状態などによって異なります。呼吸困難やけいれん、意識状態の変化など緊急性の高い症状がみられる場合は、速やかに獣医師へご相談ください。

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