高齢犬・高齢猫がごはんを食べない時|考えられる原因・自宅で確認したいことを獣医師が解説

「最近、ごはんを残すようになった」

「大好きだったものを出しても、ほとんど口をつけない」

「高齢だから、食べる量が減るのは仕方ないのかな?」

高齢の犬や猫と暮らしていると、食欲の変化に気づくことがあります。

年齢を重ねることで食事量や食べ方が変化することはあります。

しかし、

「高齢だから食べないのだろう」

と年齢だけで判断することはおすすめできません。

食欲の低下は、吐き気や痛み、口の中の問題、持病の変化など、身体の不調を知らせるサインとして現れることがあるからです。

また、一見同じように見える「食べない」という状態でも、

食欲そのものがない場合

と、

食べたいけれど、痛みや飲み込みにくさなどによって食べられない場合

では、考える原因が変わります。

今回は、

  • 高齢犬・高齢猫がごはんを食べなくなる原因
  • 「食べない」と「食べられない」の違い
  • 自宅で確認してほしいこと
  • 食欲が落ちた時に記録しておきたいこと
  • 無理に食べさせない方がよいケース
  • 早めに動物病院へ相談したい症状
  • 通院が難しい時の往診という選択肢

について、獣医師の立場からお伝えします。

「高齢だから食べない」とは限りません

高齢犬・高齢猫では、若い頃と比べて食事の好みや食べる量が変化することがあります。

ですが、高齢の犬猫で食欲が低下している時には、年齢以外の原因も考える必要があります。

たとえば、

  • 吐き気がある
  • 身体のどこかに痛みがある
  • 歯や口の中に問題がある
  • 消化器の病気
  • 腎臓や肝臓の病気
  • 膵臓の病気
  • 心臓や呼吸器の病気
  • 腫瘍
  • 発熱や感染症
  • 便秘
  • お薬の影響
  • 持病の状態が変化している
  • ストレスや環境の変化

など、さまざまな原因が考えられます。

高齢犬・高齢猫では、複数の病気を抱えていることもあります。

そのため、

「年齢のせいかな」

「好き嫌いが出てきたのかな」

と決めつけず、これまでとの違いを見ることが大切です。

「食べない」のか「食べたいけれど食べられない」のか

食事の様子を観察するときには、

食べ物そのものに興味がないのか

それとも、

食べようとはするけれど、うまく食べられないのか

を見てみてください。

たとえば、

ごはんのところまで来る。

匂いを嗅ぐ。

食べようとする。

ところが口に入れるとやめてしまう。

食べ物を口から落とす。

片側だけで噛んでいる。

よだれが増えた。

口元を気にしている。

このような場合には、口の中や歯の痛みなどによって**「食べたいけれど食べられない」**可能性も考えます。

一方で、

食事に近づかない。

匂いを嗅いでも興味を示さない。

好きだったものにも反応しない。

といった場合には、吐き気や全身状態の悪化などによって食欲そのものが落ちている可能性があります。

もちろん、ご家庭で原因を診断することはできません。

ですが、

「どんなふうに食べなくなったのか」

を観察しておくことは、獣医師が原因を考えるうえで大切な情報になります。

食欲だけではなく「元気・水分・排泄」も一緒に見てください

食欲が落ちている時には、食事量だけを見るのではなく、犬猫の全体の状態を確認しましょう。

特に見ていただきたいのが、

  • 元気はあるか
  • 水は飲めているか
  • おしっこは出ているか
  • 便は出ているか
  • 嘔吐していないか
  • 下痢をしていないか
  • 呼吸はいつも通りか
  • 自分で立ったり歩いたりできるか
  • 痛そうな様子はないか

ということです。

たとえば、

「食べないけれど、普段通り歩いて水も飲んでいる」

場合と、

「食べず、水も飲まず、ぐったりしている」

場合では、緊急性の考え方も変わります。

ひとつの症状だけではなく、その子全体を見ることが大切です。

「昨日より少ない」ではなく、できれば食べた量を記録しましょう

高齢犬・高齢猫では、少しずつ食事量が減っていると、毎日見ている飼い主さんほど変化に気づきにくいことがあります。

可能であれば、

「朝は半分食べた」

「夜は3口だけ食べた」

「今日はウェットフードを○g食べた」

など、簡単に記録しておきましょう。

さらに、

  • 食べた量
  • 水を飲んだ量や回数
  • 嘔吐の有無
  • 排尿・排便
  • 元気
  • 体重

などを一緒に記録しておくと、変化が分かりやすくなります。

毎日細かく記録する必要はありません。

特に体調が変化している時だけでも、メモやスマートフォンに残しておくと診察時の参考になります。

高齢犬・高齢猫では「体重が減っていないか」も大切です

食事量の変化と一緒に見てほしいのが、体重と身体つきの変化です。

高齢犬・高齢猫では、病気や加齢によって筋肉量が低下することがあります。

「体重はそれほど変わっていないから大丈夫」

と思っていても、

背骨が以前より触りやすい。

腰回りが細くなった。

後ろ足の筋肉が落ちてきた。

という変化がみられることもあります。

特に猫では、高齢になるにつれて体重や筋肉が減少することがあり、病気による体重減少が隠れている場合もあります。

定期的に体重を測れる環境があれば、記録しておくとよいでしょう。

猫が食べない時は特に早めに相談してください

猫の場合、食べない状態を長く放置しないことが特に大切です。

猫では、食事をとれない状態が続くことによって、**肝リピドーシス(脂肪肝)**という重い肝臓の病気につながることがあります。

特に肥満傾向の猫では注意が必要です。

そのため、

「数日様子を見れば食べるかもしれない」

と長く待つことはおすすめできません。

普段よく食べる猫が急に食べなくなった場合や、明らかに食事量が減っている場合には、早めに獣医師へ相談してください。

食欲低下の背景に別の病気が隠れている可能性もあります。

食べない時に、まず自宅で確認したいこと

食欲が落ちていることに気づいたら、できる範囲で次のことを確認してみてください。

いつから食べなくなったのか

今日からなのか。

昨日からなのか。

1週間くらい少しずつ減っていたのか。

食欲が変化した時期を確認しましょう。

まったく食べないのか、量が減ったのか

「一口も食べない」

のか、

「普段の半分程度」

なのかでも状況は異なります。

好きなものなら食べるのか

いつものフードだけ食べないのか。

好きだった食べ物にも反応しないのか。

これも参考になります。

水は飲めているか

飲水量も一緒に確認してください。

普段より極端に増えたり、逆にほとんど飲まなくなったりしている場合には、そのことも獣医師へ伝えましょう。

嘔吐や下痢はないか

食欲低下に加えて嘔吐や下痢がある場合には、より早い対応が必要になることがあります。

口の様子はどうか

よだれが増えていないか。

口臭が急に強くなっていないか。

食べ物を口から落としていないか。

口元を触られることを嫌がらないか。

なども確認しましょう。

ただし、痛みがある犬猫の口を無理に開けようとすると咬まれる危険があります。

無理に確認する必要はありません。

ごはんを少し食べやすくする工夫

獣医師から食事制限などの指示を受けていない場合には、食べやすくするために少し工夫できることもあります。

たとえば、

香りが感じやすいようにする

ウェットフードなどは、適温にすることで香りが立ち、興味を示す場合があります。

ただし、熱くしすぎないよう注意してください。

一度にたくさん出さず、少量ずつ試す

大きな量を見ると食べる気が起きない子でも、少量なら口にすることがあります。

食器の位置を見直す

足腰が弱くなった子では、食器まで歩くことや、身体を低くして食べることが負担になっている場合があります。

その子が無理なく食べられる場所や高さについて考えてみましょう。

静かな場所で食べられるようにする

猫では、人の出入りが多い場所やほかの動物が近くにいることなどが、食事の負担になる場合もあります。

ただし、持病があり療法食を使用している場合や、食事内容に制限がある場合には、自己判断で大きく変更せず獣医師へ相談してください。

無理に口へ食べ物を入れない方がよい場合があります

食べてくれない姿を見ると、

「少しでも食べさせなければ」

と思いますよね。

ですが、無理に口の中へ食べ物を入れることが適切とは限りません。

特に、

  • 飲み込みにくそう
  • 食べると咳き込む
  • 水を飲んでもむせる
  • 意識がぼんやりしている
  • 呼吸が苦しそう
  • 強く嫌がる

といった場合には、自己判断で無理に食べさせないでください。

飲み込む力が低下している場合には、誤って気管へ入ってしまう危険も考える必要があります。

また、猫では無理に口へ食べ物を入れることで、食事そのものへの嫌悪を強めてしまうこともあります。

「どうすれば食べさせられるか」だけでなく、「安全に食べられる状態なのか」

を確認することが大切です。

食欲を増やす薬だけで解決するとは限りません

食欲が落ちている場合には、状態によって食欲を促す薬が使われることがあります。

ですが、

「食べないから食欲増進剤」

だけでよいとは限りません。

たとえば吐き気が強ければ、まず吐き気への対応が必要になることがあります。

痛みが原因であれば、痛みへの治療が必要です。

口の中に問題があれば、その原因を確認する必要があります。

つまり、

食欲低下そのものだけでなく、「なぜ食べられなくなったのか」を考えることが大切です。

使用する薬については、その子の病気や身体の状態によって異なるため、必ず獣医師の診察を受けてください。

こんな時は早めに獣医師へ相談してください

高齢犬・高齢猫が食べない時、特に次のような変化がある場合には早めに相談してください。

  • ほとんど何も食べない
  • 水もほとんど飲めない
  • 水を飲んでも吐いてしまう
  • 何度も嘔吐している
  • ぐったりしている
  • 呼吸が苦しそう
  • 強い痛みがあるように見える
  • 立てない、歩けない
  • 意識や反応がいつもと違う
  • 尿が出ていない
  • 急激に体重が減っている
  • 白目や歯ぐきが黄色っぽく見える

また、

「いつもと明らかに違う」

と飼い主さんが感じることも大切なサインです。

特に高齢犬・高齢猫では複数の病気が関係していることもあるため、「食欲だけ」の問題だと考えず、全身状態を確認することが大切です。

通院が難しい時には往診という方法があります

食べられない状態が続いている時には、獣医師による状態確認が必要になることがあります。

一方、高齢犬・高齢猫では、

「病院まで車に乗せることが難しい」

「寝たきりになって移動できない」

「大型犬なので家族だけでは抱えられない」

「病院へ行くだけでかなり疲れてしまう」

といったこともあります。

そのような場合には、ご自宅で診察を受ける往診が選択肢になることがあります。

往診では、

食欲が低下した経過。

水分がとれているか。

吐き気や痛みがないか。

口の中に気になるところがないか。

普段どのように食事をしているか。

どのような環境で過ごしているか。

などを確認しながら、その子に必要な対応を考えます。

状態によっては、ご自宅で可能な治療や、お薬について検討できる場合もあります。

往診より動物病院での検査・治療が必要な場合もあります

「病院へ連れて行くことが難しいから、往診ですべて診てもらいたい」

と思われることもあるかもしれません。

ですが、食欲低下の原因によっては、

  • 血液検査
  • レントゲン検査
  • 詳しい画像検査
  • 入院管理
  • 集中的な点滴や治療

など、動物病院の設備が必要になることがあります。

特に急激に状態が悪化している場合には、往診を待つよりも動物病院へ直接受診した方がよいこともあります。

大切なのは、

「往診か病院か」にこだわるのではなく、今その子に必要な医療につなげることです。

判断に迷う場合には、現在の状態を獣医師へ伝えて相談してください。

食べられなくなった時こそ「年齢のせい」と決めつけないでください

高齢の犬や猫が食べなくなると、

「もう歳だから」

と思ってしまうことがあるかもしれません。

もちろん、年齢とともに食事の量や好みが変わることはあります。

ですが、

食べなくなったことが病気の変化を知らせる最初のサインになることもあります。

だからこそ、

昨日と比べてどうなのか。

1週間前と比べてどうなのか。

食べ方そのものは変わっていないか。

水は飲めているか。

元気はあるか。

体重は減っていないか。

その子の「いつも」と比べることを大切にしてください。

食べない理由が分かれば、できる対応が見つかることもあります。

そして、通院が難しくなった場合にも、

「病院へ連れて行けないから診てもらえない」

と諦める必要はありません。

往診という選択肢も含め、その子に合った診療方法を考えていただけたらと思います。

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福岡犬猫往診クリニック
獣医師 かわの わいちろう


※この記事は、高齢犬・高齢猫の食欲低下について一般的な情報をお伝えするものです。食欲が低下する原因や必要な治療は、病気・年齢・身体の状態などによって異なります。食べない状態が続く場合や、元気消失・嘔吐・呼吸の異常などがある場合には、早めに獣医師へご相談ください。

参考情報

  • AAHA「2023 AAHA Senior Care Guidelines for Dogs and Cats」
  • Cornell Feline Health Center「Anorexia」
  • MSD Veterinary Manual「Feline Hepatic Lipidosis」
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