犬猫が何度もトイレに行くのに尿が出ない時|原因と受診目安を獣医師が解説

「何度もトイレへ行っているけれど、あまり尿が出ていない気がする」

「ずっと排尿姿勢をとっている」

「少しは出ているみたいだけれど、このまま様子を見ていい?」

犬や猫が何度もトイレへ行っていると、

「頻繁におしっこをしているのかな」

と思うかもしれません。

ですが、

トイレへ行っている=きちんと尿が出ている

とは限りません。

何度も排尿姿勢をとっているのに、

数滴しか出ていない。

ほとんど出ていない。

まったく出ていない。

ということがあります。

特に注意していただきたいのが、尿道閉塞です。

尿の通り道が詰まってしまうと、尿を身体の外へ出せなくなり、短時間のうちに全身状態が悪化することがあります。

特にオス猫では尿道閉塞が起こりやすく、緊急治療が必要になることがあります。

今回は、

  • 何度もトイレへ行く時に確認したいこと
  • 「頻尿」と「尿が出ない」の違い
  • 膀胱炎でみられる症状
  • 猫の特発性膀胱炎とは
  • 膀胱結石・尿路結石について
  • 尿道閉塞とは
  • オス猫で特に注意する理由
  • 便秘と間違えることがある理由
  • 血尿について
  • 動物病院で行うことがある検査
  • 自宅で確認してほしいポイント
  • すぐ受診した方がよい症状

について、獣医師の立場からお伝えします。

  1. まず確認したいのは「本当に尿が出ているか」です
  2. 「頻尿」と「尿が出ない」は同じではありません
  3. 膀胱炎では何度もトイレへ行くことがあります
  4. 猫では「特発性膀胱炎」が多くみられます
  5. 「若い猫の膀胱炎=細菌感染」とは限りません
  6. 犬では細菌性膀胱炎がみられることがあります
  7. 膀胱結石でも頻繁に排尿することがあります
  8. 「尿に結晶がある=結石がある」とも限りません
  9. 特に注意したいのが「尿道閉塞」です
  10. オス猫では特に尿道閉塞へ注意してください
  11. 「朝まで様子を見よう」が危険な場合があります
  12. 尿道閉塞が進むと、トイレ症状以外も現れます
  13. 「便秘だと思っていたら尿が出ていなかった」ことがあります
  14. 血尿がある場合も動物病院へ相談してください
  15. トイレ以外で排尿した時も「しつけ」と決めつけないでください
  16. 陰部をしきりになめる変化にも注意
  17. 動物病院ではまず膀胱の状態を確認します
  18. 尿検査では何が分かる?
  19. 細菌感染が疑われる場合には尿培養を行うことがあります
  20. レントゲンや超音波検査を行うことがあります
  21. 尿道閉塞では血液検査も重要です
  22. 尿道閉塞ではどんな治療をするの?
  23. 水をたくさん飲ませれば詰まりが取れる?
  24. 自己判断で余っている薬を使わないでください
  25. 自宅で毎日確認したい「おしっこチェック」
  26. 猫砂の「尿の塊」は大切な情報です
  27. 写真や動画も診察の参考になることがあります
  28. こんな場合は「早め」ではなく、すぐ相談してください
  29. 「何度もトイレへ行く」は小さな変化ではありません
    1. 参考情報

まず確認したいのは「本当に尿が出ているか」です

犬猫が何度もトイレへ行く時には、

回数だけではなく、実際にどのくらい尿が出ているか

を確認してください。

たとえば、

  • 何度も排尿姿勢をとる
  • しゃがんでいる時間が長い
  • 数滴しか尿が出ない
  • 尿の塊がいつもより小さい
  • 排尿姿勢をとるのに何も出ない
  • トイレから出ても、すぐ戻る

といった様子です。

特に猫砂を使っている猫では、

尿の塊の大きさと数

を普段から見ておくと変化に気づきやすくなります。

「頻尿」と「尿が出ない」は同じではありません

何度もトイレへ行く状態には、大きく分けて、

少量ずつ何度も排尿している状態

と、

排尿しようとしているのに、ほとんど尿が出ていない状態

があります。

前者は膀胱炎などでもみられます。

一方、後者では尿道閉塞など緊急性の高い状態が隠れていることがあります。

見た目だけでは区別が難しい場合もあるため、

「少し出ているから大丈夫」

と自己判断しないことが大切です。

膀胱炎では何度もトイレへ行くことがあります

膀胱に炎症が起こると、

尿を少しためただけでも排尿したくなる。

排尿時に痛みや違和感がある。

という状態になることがあります。

その結果、

  • 何度も排尿する
  • 一回の尿量が少ない
  • 排尿時に力む
  • 血尿が出る
  • トイレ以外で排尿する
  • 陰部を頻繁になめる
  • 排尿時に鳴く

といった症状がみられる場合があります。

ただし「膀胱炎」という言葉には複数の原因が含まれます。

犬と猫でも、原因の傾向は異なります。

猫では「特発性膀胱炎」が多くみられます

猫の下部尿路症状には、

膀胱結石。

尿道栓子。

細菌感染。

腫瘍。

などさまざまな原因があります。

その中でも多くみられるのが、**猫特発性膀胱炎(FIC)**です。

これは、検査をしても結石や細菌感染など明確な原因が見つからない膀胱炎です。

ストレスや環境、神経・ホルモン系など複数の要因が関係すると考えられています。

症状として、

何度もトイレへ行く。

排尿時に力む。

血尿。

トイレ以外で排尿する。

などがみられます。

ただし、

症状だけを見て「特発性膀胱炎だろう」と決めることはできません。

尿道閉塞などを除外することが重要です。

「若い猫の膀胱炎=細菌感染」とは限りません

人の膀胱炎では細菌感染を思い浮かべる方が多いかもしれません。

ですが、猫ではすべての膀胱炎が細菌感染によるものではありません。

特に若い猫の下部尿路症状では、非感染性の原因が多くみられます。

一方、

高齢猫。

糖尿病などの持病がある猫。

尿路に別の病気がある猫。

では細菌感染についても確認することがあります。

そのため、

「膀胱炎だから抗生物質」

と一律に決まるものではありません。

尿検査や必要に応じた尿培養などを行い、原因を考えます。

犬では細菌性膀胱炎がみられることがあります

犬でも、

頻尿。

排尿時の痛み。

血尿。

トイレ以外での排尿。

などがみられることがあります。

犬では細菌性膀胱炎も原因の一つです。

ただし、

結石。

腫瘍。

前立腺疾患。

排尿機能の異常。

など、ほかの病気でも似た症状は起こります。

繰り返し膀胱炎になる場合には、

なぜ再発しているのか

を調べることも大切です。

膀胱結石でも頻繁に排尿することがあります

膀胱の中に結石があると、膀胱粘膜が刺激されて、

何度も排尿する。

血尿。

排尿時の痛み。

などがみられることがあります。

結石の種類には、

ストルバイト。

シュウ酸カルシウム。

尿酸塩。

などがあります。

結石によっては療法食などで溶解できるものがあります。

一方、食事では溶かせず、摘出などが必要になる種類もあります。

そのため、

「結石=必ず手術」でも、「療法食で必ず溶ける」でもありません。

結石の種類や大きさ、場所などによって治療方法を考えます。

「尿に結晶がある=結石がある」とも限りません

尿検査で、

「結晶があります」

と言われることがあります。

尿中の結晶は、結石の種類を考える手がかりになることがあります。

ただし、

結晶があるから必ず膀胱結石がある

とは限りません。

逆に、結石があるのに尿検査で結晶が確認されないこともあります。

結石の有無については、レントゲンや超音波検査なども組み合わせて確認します。

特に注意したいのが「尿道閉塞」です

尿道閉塞とは、

膀胱から身体の外へ尿を出す通り道である尿道が詰まってしまう状態

です。

原因には、

尿道結石。

尿道栓子。

尿道の狭窄。

腫瘍。

その他の機械的・機能的な問題。

などがあります。

尿が完全に出せなくなると、

身体の中に老廃物が蓄積する。

腎臓の数値が急激に悪化する。

血液中のカリウムが上昇する。

といった問題が起こります。

重度の高カリウム血症では、心臓のリズムに影響し、命に関わることがあります。

尿道閉塞は救急疾患です。

オス猫では特に尿道閉塞へ注意してください

猫では特にオス猫が尿道閉塞を起こしやすい傾向があります。

オス猫の尿道は、メス猫と比べて細く長いため、詰まりやすい構造をしています。

去勢済みのオス猫でも起こります。

たとえば、

何度もトイレへ行く。

長時間排尿姿勢をとる。

数滴しか出ない。

排尿時に鳴く。

陰部をしきりになめる。

落ち着かない。

という様子があれば注意してください。

「少しは出ているようだから大丈夫」

とは限りません。

部分的に詰まり、細い尿しか出ていない場合もあります。

「朝まで様子を見よう」が危険な場合があります

夜になって、

「猫が何度もトイレへ行っている」

と気づくことがあります。

それでも元気があると、

「明日の朝まで見てみよう」

と思うかもしれません。

ですが、

排尿姿勢を何度もとるのに尿がほとんど出ていない。

特にオス猫である。

という場合には、夜間でも動物病院へ相談した方がよい状態があります。

完全な尿道閉塞では、時間が経つほど全身状態が悪化する可能性があります。

尿が出ないことは、「少し様子を見る症状」とは限りません。

尿道閉塞が進むと、トイレ症状以外も現れます

最初は、

何度も排尿姿勢をとる。

少量しか出ない。

という症状だけだった猫でも、閉塞が続くと、

  • 元気がなくなる
  • 食欲がなくなる
  • 嘔吐する
  • ぐったりする
  • 脱水する
  • 反応が鈍くなる

など、全身症状がみられることがあります。

この段階では非常に危険な状態になっている可能性があります。

「トイレへ行かなくなったから落ち着いた」

と思ったら、実は具合が悪くなって動けなくなっていた、という可能性もあります。

「便秘だと思っていたら尿が出ていなかった」ことがあります

特に猫では、

トイレの中で長くしゃがむ。

何度も力む。

何も出ない。

という姿を見ると、

「便秘かな?」

と思うことがあります。

ですが、尿道閉塞でも同じように見えることがあります。

動物病院では、

尿を出そうとしているのか。

便を出そうとしているのか。

膀胱が大きく張っているか。

などを確認します。

「便秘だろう」と自己判断して長時間様子を見ないでください。

血尿がある場合も動物病院へ相談してください

尿に血が混ざっていることを血尿と呼びます。

血尿は、

膀胱炎。

尿路結石。

尿路感染症。

腫瘍。

その他の尿路疾患。

などでみられることがあります。

見た目に赤い尿が出る場合もあれば、

肉眼では分からず尿検査で初めて血液反応が確認される場合もあります。

血尿だけでは原因を特定できません。

尿検査などで原因を確認します。

トイレ以外で排尿した時も「しつけ」と決めつけないでください

今まできちんとトイレを使っていた犬猫が、突然トイレ以外で排尿することがあります。

猫では膀胱炎などの下部尿路疾患によって、

トイレへ行くと痛い。

何度も急に排尿したくなる。

という状態になり、トイレ以外で排尿してしまうことがあります。

そのため、

「急に粗相するようになった」

という場合には、行動の問題だけでなく身体の病気についても考えてください。

陰部をしきりになめる変化にも注意

排尿時に違和感や痛みがある犬猫では、

陰部を頻繁になめることがあります。

以前より明らかになめる回数が増えた。

落ち着かない。

トイレと陰部を行ったり来たりする。

という場合には、排尿状態も確認してください。

動物病院ではまず膀胱の状態を確認します

「尿が出ていないかもしれない」

という犬猫では、まず身体検査を行います。

特に重要なのが膀胱の確認です。

尿道閉塞がある場合には、尿で膀胱が大きく張り、硬く痛みを伴っていることがあります。

ただし、

飼い主さんが自宅でお腹を強く押して確認する必要はありません。

痛みがある場合もありますので、排尿できていない疑いがあれば動物病院へ相談してください。

尿検査では何が分かる?

排尿の異常では、尿検査がとても重要です。

尿検査では、

  • 尿の濃さ
  • pH
  • 血液の有無
  • たんぱく
  • 炎症細胞
  • 細菌
  • 結晶

などを確認します。

ただし、尿検査だけですべての原因を診断できるわけではありません。

症状や年齢によっては追加検査を行います。

細菌感染が疑われる場合には尿培養を行うことがあります

細菌性膀胱炎が疑われる場合には、尿を培養して、

本当に細菌がいるか。

どの細菌なのか。

どの抗菌薬が効きやすいか。

を確認する場合があります。

特に、

膀胱炎を繰り返す。

高齢である。

持病がある。

という場合には、尿培養が重要になることがあります。

レントゲンや超音波検査を行うことがあります

結石や膀胱などの状態を確認するために、

レントゲン検査。

超音波検査。

を行う場合があります。

レントゲンで見えやすい結石もあれば、見えにくい種類もあります。

超音波検査では、

膀胱壁。

膀胱内の結石。

尿中の沈殿物。

腫瘤。

などを確認できる場合があります。

必要な検査は、その子の状態によって異なります。

尿道閉塞では血液検査も重要です

尿道閉塞が疑われる場合には、

腎臓の数値。

カリウムなどの電解質。

酸塩基バランス。

などを確認するために血液検査を行います。

尿を出せない状態では、腎臓の数値が上昇する腎後性高窒素血症が起こることがあります。

また、重度の高カリウム血症は心臓に影響する可能性があります。

そのため重症例では、尿道の詰まりを解除するだけでなく、全身状態を安定させる治療も必要です。

尿道閉塞ではどんな治療をするの?

尿道が詰まっている場合には、

まず身体の状態を確認し、

必要に応じて点滴。

電解質異常への治療。

痛みへの治療。

などを行います。

そのうえで、尿道カテーテルなどを使って詰まりを解除し、尿の通り道を確保します。

状態によっては入院が必要です。

繰り返し尿道閉塞を起こす猫では、状況によって外科手術が検討される場合もあります。

水をたくさん飲ませれば詰まりが取れる?

尿が出にくそうな時、

「水をたくさん飲ませれば流れるかな」

と思うかもしれません。

ですが、尿道が詰まっている状態では、

水を飲ませることで閉塞を解除することはできません。

また、体調が悪い猫へ無理に水を飲ませることで負担になる場合があります。

尿道閉塞が疑われる時には、自宅で何とかしようとせず動物病院へ相談してください。

自己判断で余っている薬を使わないでください

以前膀胱炎になった時の薬が残っていると、

「同じ症状だから飲ませよう」

と思うことがあります。

ですが、

膀胱炎。

結石。

尿道閉塞。

細菌感染。

では治療が異なります。

同じようなトイレ症状でも原因は同じとは限りません。

特に尿道閉塞では、薬を飲ませながら待っていることで治療が遅れる危険があります。

以前処方された薬を自己判断で使用せず、まず獣医師へ相談してください。

自宅で毎日確認したい「おしっこチェック」

尿路の病気を早く見つけるためには、普段の排尿を知っておくことが大切です。

確認したいのは、

  • 1日の排尿回数
  • 1回の尿量
  • 尿の色
  • 排尿にかかる時間
  • 排尿時に力んでいないか
  • 鳴いていないか
  • トイレ以外でしていないか
  • 陰部を気にしていないか

などです。

すべて毎日記録する必要はありません。

「普段はどのくらい」という感覚を持っておくこと

が大切です。

猫砂の「尿の塊」は大切な情報です

固まるタイプの猫砂を使用している場合には、

尿の塊の数。

大きさ。

を見てみてください。

普段は大きな塊が数個あるのに、

今日は小さな塊が何個もある。

ほとんど塊がない。

という変化があれば重要です。

多頭飼育ではどの猫の尿か分かりにくいことがあります。

一頭だけ排尿の異常が疑われる場合には、可能な範囲でトイレ利用を確認してください。

ただし、尿が出ていない可能性が高い場合には、確認のために長時間待たず受診を優先してください。

写真や動画も診察の参考になることがあります

安全に撮影できる場合には、

何度もトイレへ入る様子。

排尿姿勢。

少量しか出ていない様子。

血尿。

などを写真や動画に残しておくと診察の参考になることがあります。

ただし、

「動画を撮ってから病院へ行こう」

と受診を遅らせないでください。

尿がほとんど出ていない場合には、受診を優先します。

こんな場合は「早め」ではなく、すぐ相談してください

特に、

  • 何度も排尿姿勢をとるのに尿が出ない
  • 数滴しか出ない状態を繰り返している
  • オス猫で尿が出ているか分からない
  • 排尿時に強く鳴く
  • お腹を痛がる
  • 嘔吐している
  • 食欲がない
  • 急にぐったりしてきた
  • 反応がおかしい

という場合には、尿道閉塞の可能性も考える必要があります。

尿が出ない状態は緊急です。

夜間であっても、利用できる動物病院や夜間救急へ連絡してください。

「何度もトイレへ行く」は小さな変化ではありません

犬猫は、

「おしっこが痛い」

「出そうなのに出ない」

「何度トイレへ行っても出ない」

と話すことはできません。

その代わり、

何度もトイレへ行く。

長時間しゃがむ。

少量しか出ない。

トイレ以外で排尿する。

陰部をなめる。

鳴く。

落ち着かない。

という行動で身体の変化を示すことがあります。

そして、その中には、

膀胱炎のように適切な診療が必要な病気だけでなく、

尿道閉塞のように短時間で命に関わる状態

も含まれています。

だからこそ、

「何度もトイレへ行っているから尿は出ているだろう」

ではなく、

実際にどのくらい出ているか

を確認してください。

普段のおしっこの量や回数を知っていることが、

「今日は何か違う」

という早い気づきにつながります。


※この記事は、犬猫の頻尿・排尿困難・尿道閉塞などについて一般的な情報をお伝えするものです。排尿異常の原因や緊急性は犬猫によって異なります。何度も排尿姿勢をとるのに尿が出ない、数滴しか出ない、特にオス猫で排尿できていない可能性がある場合には、自己判断で様子を見続けず速やかに動物病院へご相談ください。

参考情報

  • Merck Veterinary Manual「Lower Urinary Tract Disease in Cats」
  • Merck Veterinary Manual「Urethral Obstruction in Small Animals」
  • Merck Veterinary Manual「Overview of Urolithiasis in Small Animals」
  • Merck Veterinary Manual「Bacterial Cystitis in Small Animals」
  • Cornell University College of Veterinary Medicine「Feline Lower Urinary Tract Disease」
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