犬猫の便に鮮血がついた時|考えられる原因・便の見方・受診目安を獣医師が解説

「犬の便に赤い血がついている」

「猫が血便をしたけれど、すぐ病院へ行った方がいい?」

「元気はあるけれど、便の表面に血がついている」

犬や猫の排便を片づけている時、赤い血を見つけると驚くと思います。

血便といっても、

便の表面に少し赤い血がついている。

下痢に血が混ざっている。

粘液と一緒に血が出ている。

排便の最後に血が垂れる。

便全体が黒っぽい。

など、見え方はさまざまです。

そして、

「血が出た」という情報だけでは、原因をひとつに決めることはできません。

診察では、

いつから出ているのか。

便は下痢なのか、形があるのか。

排便回数は増えているか。

便を出そうとして何度も力んでいないか。

食欲や元気はあるか。

嘔吐はないか。

といった情報を組み合わせながら原因を考えていきます。

今回は、

  • 鮮血便とは何か
  • 赤い血と黒い便の違い
  • 獣医師が最初に確認すること
  • 下痢と一緒に鮮血が出る場合
  • 普通便に血がついている場合
  • 急に始まった血便と長く続く血便
  • 考えられる主な原因
  • 動物病院で行うことがある検査
  • 自宅で準備しておくと役立つもの
  • 早めに受診した方がよい症状

について、獣医師の立場からお伝えします。

  1. 鮮血便とは「赤い血が便に混じる・付着する状態」です
  2. 「赤い血」と「黒いタール状の便」は少し意味が違います
  3. 獣医師がまず聞きたいのは「いつから?」です
  4. 次に確認するのが「便そのものの状態」です
  5. 下痢+鮮血+粘液は「大腸性下痢」でみられることがあります
  6. 「何度もトイレへ行く」ことも重要な情報です
  7. 普通の便の表面に赤い血がついている場合は?
  8. 鮮血便の原因はひとつではありません
  9. 急な環境変化やストレスが関係することもあります
  10. 食べ物についても詳しく確認します
  11. 寄生虫などを調べることもあります
  12. 子犬・子猫の血便は早めに相談してください
  13. 高齢犬・高齢猫で繰り返す血便にも注意が必要です
  14. 「便が細くなった」という変化も伝えてください
  15. 診察ではお腹だけでなく肛門や直腸を確認する場合があります
  16. 血液検査を行うこともあります
  17. レントゲンや超音波検査が必要になる場合もあります
  18. 慢性的な症状では内視鏡や生検を検討することがあります
  19. 診察へ行く時は「便の写真」が役立ちます
  20. 可能であれば便を持参することもあります
  21. 自宅で記録してほしいこと
  22. 人用の下痢止めを自己判断で使わないでください
  23. 血便でも緊急性が低い場合はあります
  24. こんな血便は早めに動物病院へ相談してください
  25. 血便の診察では「症状を説明できる原因か」を考えています
  26. 血便を見た時は「血の量」だけでなく便全体を見てください
    1. 参考情報

鮮血便とは「赤い血が便に混じる・付着する状態」です

便に赤い血が見える状態は、一般的に**鮮血便(hematochezia)**と呼ばれます。

鮮血は消化されていない赤い血液です。

犬猫では、

結腸。

直腸。

肛門周囲。

など、消化管の比較的後ろ側から出血している時にみられることが多くあります。

ただし、

「赤い血だから必ずこの場所」

と見た目だけで断定することはできません。

診察では、便の状態やほかの症状も合わせて考えます。

「赤い血」と「黒いタール状の便」は少し意味が違います

血便について知っておいていただきたいのが、便の色です。

胃や小腸など消化管の上部で出血した血液は、消化されながら腸を通過するため、

黒っぽい。

ベタっとしている。

タールのように見える。

という便になることがあります。

このような便は**メレナ(黒色便)**と呼ばれます。

一方、鮮血便では赤い血がそのまま見えます。

つまり、

赤い血なのか。

黒くタール状なのか。

という違いは、獣医師が出血している場所や原因を考えるための大切な情報になります。

獣医師がまず聞きたいのは「いつから?」です

血便の診察で私が最初に知りたい情報のひとつが、

いつから血が出ているのか

ということです。

昨日から突然始まった。

数日前から続いている。

数週間、出たり止まったりしている。

数か月前から時々みられる。

では、考える病気が変わってきます。

急に始まった血便では、

食事の変化。

普段食べないものを食べた。

ストレス。

急性の腸炎。

感染症や寄生虫。

などについて考えます。

一方、血便が何度も繰り返されたり長期間続いたりする場合には、

慢性的な腸の炎症。

ポリープなど直腸・大腸の病変。

腫瘍。

その他の慢性疾患。

などについても検討する必要があります。

次に確認するのが「便そのものの状態」です

「血便が出ました」

と聞いたあと、次に確認したいのが、

便自体はどうだったか

です。

たとえば、

水のような下痢。

柔らかい便。

粘液が多い便。

形は普通の便。

便の表面だけに血がついている。

といった違いです。

ここには大切な情報があります。

下痢+鮮血+粘液は「大腸性下痢」でみられることがあります

大腸に炎症が起こると、

便の回数が増える。

1回に出る便の量が少なくなる。

何度も排便姿勢をとる。

粘液が混じる。

鮮血が混じる。

排便時に痛そうにする。

といった症状がみられることがあります。

このような状態は大腸性下痢の特徴です。

たとえば、

「昨日から下痢になった」

「少量の便を何度もする」

「最後に粘液と赤い血が出る」

という場合には、大腸の炎症を考える材料になります。

「何度もトイレへ行く」ことも重要な情報です

大腸炎などでは、便意が刺激されるため、

排便したばかりなのに、また外へ行きたがる。

何度もトイレへ行く。

排便姿勢をとるのに少量しか出ない。

最後は粘液や血だけ出る。

ということがあります。

飼い主さんから見ると、

「便が出ないから便秘かな?」

と思う場合もあります。

ですが、大腸炎による**しぶり(テネスムス)**で何度も排便姿勢をとっている可能性もあります。

逆に、本当に便秘していることもあります。

そのため、

排便姿勢だけでは便秘と判断しない

ことが大切です。

普通の便の表面に赤い血がついている場合は?

便そのものには形があり、

その表面に線を引いたように赤い血がついている。

という場合もあります。

このような時には、

直腸。

肛門周囲。

大腸の後ろ側。

など、便が最後に通る場所で出血している可能性も考えます。

たとえば、

炎症。

粘膜の傷。

ポリープ。

腫瘍。

などです。

ただし、便の見た目だけで原因を断定することはできません。

何度も繰り返す場合や、排便しづらそうな様子がある場合には診察を受けてください。

鮮血便の原因はひとつではありません

犬猫の鮮血便には、さまざまな原因があります。

たとえば、

  • 急性の大腸炎
  • 食事の急な変更
  • 普段食べないものの摂取
  • ストレス
  • 寄生虫
  • 細菌などによる感染
  • 食事への反応
  • 慢性的な腸の炎症
  • 直腸や大腸のポリープ
  • 腫瘍
  • 肛門周囲の病変
  • その他の消化管疾患

などです。

年齢や症状によって考えやすい原因も異なります。

そのため、

血便を見ただけで「きっと○○だ」と自己判断することはおすすめしません。

急な環境変化やストレスが関係することもあります

犬では、

旅行。

ペットホテル。

引っ越し。

家族構成の変化。

生活リズムの変化。

などのあとに下痢が起こることがあります。

そこで鮮血や粘液が混ざる場合もあります。

診察では、

「最近何か変わったことはありませんでしたか?」

という質問をすることがあります。

一見、腸とは関係なさそうな生活の変化も診断のヒントになることがあります。

食べ物についても詳しく確認します

血便が急に始まった場合には、

いつものフードを変更した。

新しいおやつを食べた。

脂肪の多いものを食べた。

拾い食いをした。

人の食べ物を食べた。

ゴミ箱をあさった。

ということがなかったか確認します。

「いつもと少し違うものを食べた」

という情報が、原因を考えるうえで役立つことがあります。

寄生虫などを調べることもあります

血便や下痢が続く場合には、便検査を行うことがあります。

犬猫では、腸管寄生虫などによって下痢や血便が起こる場合があります。

特に、

子犬・子猫。

新しく家へ迎えた子。

多頭飼育。

屋外へ出る猫。

定期的な予防が十分でない場合。

などでは、寄生虫についても確認することがあります。

便検査の方法は疑われる病気によって異なり、1回の検査だけでは判断できない場合もあります。

子犬・子猫の血便は早めに相談してください

子犬・子猫では身体が小さく、下痢が続くことで脱水が進みやすい場合があります。

また、感染症や寄生虫などについても確認が必要になることがあります。

特に、

何度も下痢をする。

嘔吐もある。

食べない。

ぐったりしている。

ワクチン接種がまだ十分ではない。

という場合には、自己判断で長時間様子を見ず動物病院へ相談してください。

高齢犬・高齢猫で繰り返す血便にも注意が必要です

高齢犬・高齢猫では、

「少し血がついただけだから」

と何度も様子を見ているうちに、血便を繰り返していることがあります。

高齢の犬猫で、

数週間から数か月にわたり繰り返す。

以前より排便しづらそう。

便が細くなった。

体重が減った。

食欲が落ちた。

という変化がある場合には、詳しい検査が必要になることがあります。

ポリープや腫瘍などを含め、慢性的な原因について確認します。

「便が細くなった」という変化も伝えてください

血液だけでなく、便の太さや形も情報になります。

以前より細い便が続く。

便が平たくなった。

何度も排便姿勢をとる。

排便時に痛そう。

という場合には、直腸や大腸の状態について確認が必要になることがあります。

普段の便と比べて変化していないか見てみてください。

診察ではお腹だけでなく肛門や直腸を確認する場合があります

血便の原因を調べるために、

全身の身体検査。

腹部の触診。

肛門周囲の確認。

などを行います。

症状によっては、直腸検査を行う場合もあります。

肛門から指が届く範囲を確認することで、

直腸内の腫瘤。

ポリープ。

狭窄。

痛み。

その他の異常。

などについて情報が得られる場合があります。

必要性は犬猫の状態によって判断します。

血液検査を行うこともあります

血便が続いている場合や全身状態が悪い場合には、血液検査を行うことがあります。

たとえば、

貧血がないか。

炎症の変化はないか。

脱水していないか。

肝臓や腎臓などに問題がないか。

全身疾患が隠れていないか。

などを確認します。

血便は腸の症状ですが、腸だけを見ればよいとは限りません。

犬猫全体の状態を確認することが大切です。

レントゲンや超音波検査が必要になる場合もあります

症状によっては、

腹部レントゲン。

超音波検査。

などを行う場合があります。

たとえば、

異物が疑われる。

腹部に痛みがある。

腫瘤が疑われる。

症状が長く続いている。

ほかの消化器症状もある。

という場合です。

どの検査が必要かは、問診と身体検査の結果を見ながら判断します。

慢性的な症状では内視鏡や生検を検討することがあります

鮮血便が長く続き、

一般的な検査をしても原因が分からない。

直腸よりさらに奥の大腸を確認したい。

慢性的な炎症や腫瘍を疑う。

という場合には、内視鏡検査などを検討することがあります。

内視鏡では腸粘膜を直接確認し、必要に応じて組織を採取して詳しく調べます。

すべての血便ですぐ内視鏡をするわけではありません。

症状・期間・年齢・これまでの検査結果をもとに、必要な検査を段階的に考えていきます。

診察へ行く時は「便の写真」が役立ちます

血便を見つけた場合には、可能であれば便の写真を撮っておくことをおすすめします。

診察へ行く頃には便を片づけてしまい、

「どのくらい血が出ていたか説明しづらい」

ということがよくあります。

写真があれば、

便の色。

形。

血液の量。

粘液の有無。

などを確認できます。

ただし、緊急性が高い状態で写真撮影を優先する必要はありません。

可能であれば便を持参することもあります

便検査が必要になる可能性がありますので、新鮮な便を持参すると役立つ場合があります。

持参方法は動物病院へ確認してください。

また、

何時ごろ排便したものか。

下痢が何回あったか。

血は毎回出るのか。

なども分かると診察の参考になります。

自宅で記録してほしいこと

血便が出た時には、

  • いつから
  • 何回出たか
  • 鮮血の量
  • 便の硬さ
  • 粘液の有無
  • 排便時に力んでいるか
  • 食欲
  • 元気
  • 嘔吐
  • 飲水
  • 最近食べたもの
  • フード変更
  • 誤食の可能性
  • 最近の環境変化

などを確認してみてください。

全部完璧に記録する必要はありません。

「血便以外に何が変わったか」

が分かるだけでも役立ちます。

人用の下痢止めを自己判断で使わないでください

「下痢を止めれば血も止まるのでは?」

と考えることがあります。

ですが、人用の下痢止めや胃腸薬の中には犬猫に適さないものがあります。

また、原因によっては下痢を無理に止めることが適切ではない場合もあります。

自己判断で人用の薬を使用せず、獣医師へ相談してください。

血便でも緊急性が低い場合はあります

便の表面にごく少量の鮮血が一度ついただけで、

元気がある。

食欲がある。

嘔吐していない。

その後普通の便に戻った。

という場合には、必ずしも重い病気というわけではありません。

ただし、

血便だけから緊急性を完全に判断することはできません。

その子の年齢や持病なども関係します。

不安な場合には動物病院へ相談してください。

こんな血便は早めに動物病院へ相談してください

特に、

  • 血液量が多い
  • 血の混じった下痢を何度も繰り返す
  • 嘔吐も続いている
  • 水を飲んでも吐く
  • ぐったりしている
  • 食欲がない
  • 強い腹痛がありそう
  • 歯ぐきが白っぽい
  • 脱水が疑われる
  • 子犬・子猫である
  • 高齢で持病がある
  • 誤食や中毒の可能性がある
  • 黒くタール状の便が出ている

という場合には、早めに獣医師へ相談してください。

犬では、突然激しい血様の下痢と嘔吐が起こる**急性出血性下痢症候群(AHDS)**など、急速な脱水により治療が必要になる病気もあります。

「血が出ているけれど元気になるまで待とう」

と長時間様子を見続けない方がよい状態もあります。

血便の診察では「症状を説明できる原因か」を考えています

獣医師は、

鮮血だからこの病気。

下痢だからこの病気。

と一つの情報だけで診断するわけではありません。

いつから。

どのような便。

血の付き方。

排便回数。

痛み。

食欲。

嘔吐。

年齢。

これまでの病気。

身体検査。

そして必要な検査。

それらを組み合わせながら、

「考えている病気で、今起こっている症状をきちんと説明できるか」

を確認していきます。

たとえば、

昨日から急に下痢になり、少量の便を何度もして鮮血と粘液が混じる。

という場合と、

1か月前から普通の便の表面に時々鮮血がつき、排便後も何度も力んでいる。

という場合では、同じ「鮮血便」でも診察の考え方は違います。

血便を見た時は「血の量」だけでなく便全体を見てください

鮮やかな赤い血を見ると、どうしても血液そのものに目が向くと思います。

ですが、診察で知りたいのは、

血だけではありません。

便は硬い?柔らかい?

粘液はある?

何回排便した?

便の量は多い?少ない?

排便後も力んでいる?

食欲と元気は?

こうした情報が、原因を考える手がかりになります。

そして、

一度だけなのか。

繰り返しているのか。

ほかの症状もあるのか。

によって受診の必要性も変わります。

便に赤い血を見つけた時には、

「血が出た」という一点だけを見るのではなく、その子の便と身体全体の変化を見ること

を意識していただけたらと思います。


※この記事は、犬猫の鮮血便・血便について一般的な情報をお伝えするものです。血便の原因や緊急性は、年齢・症状・出血量・持病などによって異なります。大量の血便、繰り返す嘔吐や下痢、元気消失、黒色便などがある場合には、早めに動物病院へご相談ください。

参考情報

  • MSD Veterinary Manual「Colitis in Small Animals」
  • MSD Veterinary Manual「The Digestive System in Animals」
  • Merck Veterinary Manual「Introduction to Digestive Disorders of Dogs」
  • Merck Veterinary Manual「Acute Hemorrhagic Diarrhea Syndrome in Dogs」
  • Cornell University College of Veterinary Medicine「Diarrhea」
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