「さっきまで普通だったのに、急にぐったりした」
「突然ふらついて、倒れてしまった」
「最近、お腹が張ってきたような気がする」
愛犬にこのような変化がみられた時、
「疲れているのかな」
「少し休めば元気になるかな」
と思うこともあるかもしれません。
ですが、
急な元気の低下やふらつき、倒れる、お腹が張るといった変化の背景に、心臓の“まわり”の問題が隠れていることがあります。
その一つが、
心嚢液貯留(しんのうえきちょりゅう)
という状態です。
「心臓病」と聞くと、心臓そのものや心臓の中に問題が起こる病気をイメージする方が多いと思います。
しかし、心臓のまわりに液体がたまることによって、心臓の働きが妨げられてしまうこともあります。
今回は、
- 犬の心嚢液貯留とは
- 心臓のどこに液体がたまるのか
- なぜ心臓のまわりに液体がたまると危険なのか
- 心嚢液貯留でみられる症状
- 急にぐったりする理由
- お腹が張ることがある理由
- 心嚢液貯留の原因
- 命に関わることがある理由
- 動物病院で行う検査
- 特に大切な心エコー
- 早めに受診したい変化
- 飼い主さんに気づいてほしい「いつもとの違い」
について、獣医師の立場からお伝えします。
- 犬の心嚢液貯留とは?
- 心臓の“まわり”に問題が起きる病気です
- なぜ心臓のまわりに液体がたまると危険なの?
- 心臓が十分に働けなくなると全身にも影響します
- 犬の心嚢液貯留ではどんな症状がみられる?
- 「急に元気がなくなった」は見逃したくない変化です
- 「ぐったりしている」時は普段との違いを見てください
- ふらついたり、倒れたりすることがあります
- 食欲が落ちることもあります
- 呼吸が速くなることもあります
- お腹が張ってくることがあります
- 「太っただけかな」と思うこともあるかもしれません
- 苦しそう・落ち着かないという変化にも注意してください
- 心嚢液貯留の原因は?
- 中高齢の大型犬で比較的みられることがあります
- 心嚢液貯留は命に関わる状態になることもあります
- 急な変化ほど注意してください
- 動物病院ではどんな検査をするの?
- 聴診で心臓の状態を確認します
- レントゲン検査を行うことがあります
- 心エコーはとても大切な検査です
- こんな変化があれば早めに動物病院へ
- 症状が一つだけとは限りません
- 「心臓病=心臓の中の病気」だけではありません
- 病名を知らなくても「いつもと違う」は分かります
- 毎日一緒にいる飼い主さんだから気づけることがあります
- 「少し元気がないだけ」と決めつけないでください
- 愛犬の「いつも」を知っておきましょう
犬の心嚢液貯留とは?
犬の心嚢液貯留とは、
心臓を包んでいる膜の内側に液体がたまってしまう状態
です。
心臓は「心膜」という膜に包まれています。
その心臓のまわりに液体がたまる状態を、心嚢液貯留といいます。
ここで知っておいていただきたいのは、
心臓の「中」に液体がたまるわけではない
ということです。
心臓の中ではなく、
心臓の「外側」
に液体がたまります。
心臓の“まわり”に問題が起きる病気です
心臓病というと、
「心臓そのものが悪くなる」
というイメージを持つ方も多いと思います。
ですが、心嚢液貯留では、
心臓そのものだけではなく、
心臓のまわりにたまった液体が問題になります。
心臓を包んでいる膜の内側へ液体がたまってくることで、外側から心臓を圧迫してしまうからです。
その結果、心臓が本来の動きをしにくくなることがあります。
なぜ心臓のまわりに液体がたまると危険なの?
心臓は、
ふくらむ。
縮む。
という動きを繰り返しながら、血液を全身へ送り出しています。
ところが、心臓のまわりに液体がたまってくると、その液体によって心臓が外側から圧迫されることがあります。
すると、
心臓が十分に広がりにくくなります。
そして、血液をうまく送り出せなくなることがあります。
つまり心嚢液貯留では、
心臓そのものの筋肉だけの問題ではなく、まわりにたまった液体によって心臓の動きが妨げられる
ということです。
心臓が十分に働けなくなると全身にも影響します
心臓には、全身へ血液を送り出す大切な役割があります。
ですが、まわりにたまった液体によって心臓が圧迫されると、
十分に広がれない。
↓
血液をうまく送り出せない。
↓
全身の血流に影響が出る。
ということがあります。
そのため心嚢液貯留では、
心臓のまわりに液体がたまっているだけに見えても、
全身の状態に影響する可能性があります。
犬の心嚢液貯留ではどんな症状がみられる?
心嚢液貯留では、
- 急に元気がなくなる
- ぐったりする
- ふらつく
- 倒れる
- 食欲が落ちる
- 呼吸が速くなる
といった変化がみられることがあります。
さらに進行すると、
- お腹が張ってくる
- 苦しそうに見える
- 落ち着かない
- 動きたがらない
といった様子がみられることもあります。
すべての症状が同時に出るとは限りません。
だからこそ、
普段の愛犬と比べて何が変わったのか
を見ることが大切です。
「急に元気がなくなった」は見逃したくない変化です
特に注意していただきたいのが、
「さっきまで普通だったのに、急にぐったりした」
という変化です。
朝はいつも通りだった。
散歩にも行った。
ご飯も食べていた。
それなのに急に元気がなくなった。
このように短時間のうちに状態が変化した時には、
「ちょっと疲れただけかな」
と決めつけないようにしてください。
心嚢液貯留では、急に元気がなくなったり、ぐったりしたりすることがあります。
「ぐったりしている」時は普段との違いを見てください
犬が横になっているだけなら、
眠い。
疲れた。
散歩のあとで休んでいる。
ということもあるでしょう。
ですが、
呼びかけても反応が弱い。
いつもなら動く場面でも動かない。
好きなことにも興味を示さない。
といった変化があれば、
普段の休息とは違う可能性があります。
毎日一緒にいる飼い主さんだからこそ分かる、
「いつもの寝方とは違う」
「なんとなく様子がおかしい」
という感覚も大切にしてください。
ふらついたり、倒れたりすることがあります
心嚢液貯留では、
ふらつく。
倒れる。
という症状がみられることもあります。
愛犬が突然倒れると、とても驚くと思います。
もし、
突然ふらついた。
倒れた。
一度立てなくなった。
という変化があれば、
「その後歩けたから大丈夫」
と判断せず、獣医師へ相談してください。
特に急な変化は見逃したくない症状です。
食欲が落ちることもあります
心嚢液貯留では、
食欲が落ちる
こともあります。
普段は食事を楽しみにしている犬が、
ご飯を残す。
食事に近づかない。
いつもより食べる量が少ない。
という場合には、ほかの変化も一緒に確認してみてください。
食欲の低下だけでは原因を特定することはできません。
ですが、
食欲が落ちている。
さらに元気もない。
呼吸もいつもと違う。
といった変化が重なっている場合には、早めに相談してください。
呼吸が速くなることもあります
心嚢液貯留では、
呼吸が速くなる
ことがあります。
犬の呼吸は、
運動したあと。
興奮している時。
暑い時。
などにも速くなることがあります。
そのため、呼吸が速いという一つの変化だけで心嚢液貯留と判断することはできません。
ですが、
安静にしているのにいつもと呼吸が違う。
ぐったりしている。
苦しそうに見える。
という場合には注意してください。
お腹が張ってくることがあります
心嚢液貯留が進行すると、
お腹が張ってくる
ことがあります。
普段から一緒に暮らしていると、
「最近少しお腹が大きくなったような気がする」
という変化に気づくこともあると思います。
急にお腹が張ってきた。
以前とは見た目が違う。
という場合には、その変化も獣医師へ伝えてください。
「太っただけかな」と思うこともあるかもしれません
お腹が大きく見えると、
「少し太ったのかな?」
と思うこともあるでしょう。
ですが、
最近お腹が張ってきた。
さらに元気もない。
動きたがらない。
呼吸も気になる。
という場合には、
体重の変化だけで判断しないことが大切です。
お腹の張りも、心嚢液貯留でみられることがある変化の一つです。
苦しそう・落ち着かないという変化にも注意してください
心嚢液貯留が進行すると、
苦しそうに見える。
落ち着かない。
動きたがらない。
といった様子がみられることがあります。
犬は、
「心臓が苦しい」
「なんとなく身体がおかしい」
と言葉で伝えることはできません。
その代わり、
じっとしている。
何度も体勢を変える。
普段のように動かない。
といった行動の変化として現れることがあります。
そのため、
病名を知っているかどうかより、いつもと違う行動へ気づくこと
が大切です。
心嚢液貯留の原因は?
犬の心嚢液貯留では、
- 腫瘍
- 炎症
- 出血
- 原因がはっきりしないもの
などが関係することがあります。
つまり、
「心嚢液貯留」という一つの状態にも、背景にはさまざまな原因がある
ということです。
そのため、症状だけを見て原因まで自己判断することはできません。
動物病院で状態を確認することが大切です。
中高齢の大型犬で比較的みられることがあります
心嚢液貯留は、
中高齢の大型犬で比較的みられることがある病気
です。
ですが、
「うちの犬は大型犬ではないから関係ない」
と症状だけを見過ごさないでください。
大切なのは、
犬種や年齢だけではなく、
現在どのような変化が起きているか
を見ることです。
心嚢液貯留は命に関わる状態になることもあります
心嚢液貯留で特に注意が必要なのは、
たまった液体によって心臓が強く圧迫されることです。
心臓が十分に働けなくなると、
全身へ血液を送り出すことが難しくなります。
そのため、状態によっては命に関わることもあります。
だからこそ、
「少し元気がないだけかな」
「今日は疲れているだけかな」
と長く様子を見続けないことが大切です。
急な変化ほど注意してください
特に、
さっきまで普通だったのに急にぐったりした。
突然倒れた。
急に動かなくなった。
という変化がある場合には注意してください。
毎日一緒にいると、
食欲が少し落ちた。
動きがゆっくりになった。
という徐々に起こる変化だけでなく、
突然起こる変化
に気づくこともあります。
急な変化がある時には、早めに動物病院へ相談してください。
動物病院ではどんな検査をするの?
心嚢液貯留が疑われる場合、動物病院では、
- 聴診
- レントゲン検査
- 超音波検査(心エコー)
などを行いながら、
心臓のまわりに液体がたまっていないか
を確認していきます。
症状だけで心嚢液貯留と判断するのではなく、検査によって状態を確認します。
聴診で心臓の状態を確認します
動物病院では、まず聴診を行うことがあります。
日頃の診察でも行われることの多い検査ですが、心臓の状態を確認するための大切な診察の一つです。
愛犬に急な変化が起きた場合には、
「いつから」
「どのような症状が出たか」
といった情報と合わせて診察を受けることになります。
レントゲン検査を行うことがあります
心嚢液貯留が疑われる場合には、
レントゲン検査
を行うことがあります。
聴診だけではなく、画像による検査も組み合わせながら、犬の状態を確認していきます。
心エコーはとても大切な検査です
そして、心嚢液貯留を確認するために特に大切なのが、
超音波検査(心エコー)
です。
心エコーを行うことで、
心臓のまわりに液体がたまっていないか
を確認していきます。
「心臓のまわりに液体がある」という状態は、外から犬を見ているだけでは分かりません。
だからこそ、
急にぐったりした。
倒れた。
呼吸がおかしい。
お腹が張ってきた。
といった変化がある場合には、動物病院で確認することが大切です。
こんな変化があれば早めに動物病院へ
愛犬に、
- 急にぐったりした
- 倒れた
- 呼吸が苦しそう
- お腹が張っている
- 元気が急に落ちた
という変化がみられた場合には、
「少し様子を見よう」
と長く待たず、早めに獣医師へ相談してください。
特に、
「さっきまで普通だったのに急に変わった」
という場合には注意してください。
症状が一つだけとは限りません
心嚢液貯留では、
元気がない。
食欲がない。
呼吸が速い。
お腹が張る。
というように、複数の変化が重なってみられることがあります。
愛犬の様子がおかしい時には、
一つの症状だけを見るのではなく、
今日の元気。
食欲。
呼吸。
歩き方。
お腹の見た目。
など、普段と何が違うのかを確認してください。
「心臓病=心臓の中の病気」だけではありません
心臓病という言葉を聞くと、
心臓そのもの。
心臓の内部。
に問題が起きている病気を想像する方も多いと思います。
ですが今回お伝えした心嚢液貯留のように、
心臓のまわりに液体がたまることで、心臓の働きに影響が出る状態
もあります。
心臓の外側に起きた変化によって、心臓が十分に動けなくなることがあるのです。
病名を知らなくても「いつもと違う」は分かります
飼い主さんが、
「これは心嚢液貯留だ」
と判断する必要はありません。
むしろ、自宅で病名を判断することはできません。
ですが、
昨日までとは違う。
いつもの元気がない。
急に倒れた。
呼吸がおかしい。
お腹が張ってきた。
という変化には気づくことができます。
そして、その変化を獣医師へ伝えることが大切です。
毎日一緒にいる飼い主さんだから気づけることがあります
動物病院で診察する時間は限られています。
ですが飼い主さんは、愛犬と毎日一緒に生活しています。
だからこそ、
「いつもなら玄関まで迎えに来るのに今日は来ない」
「いつもより動きたがらない」
「昨日までは普通だったのに急に元気がなくなった」
という小さな変化に気づけることがあります。
そうした、
飼い主さんだから分かる“いつもとの違い”
はとても大切です。
「少し元気がないだけ」と決めつけないでください
もちろん、
元気がない。
食欲がない。
呼吸が速い。
といった症状があれば、すべて心嚢液貯留というわけではありません。
ですが、心嚢液貯留のように命に関わる状態が隠れている場合もあります。
だからこそ、
病名を自己判断するのではなく、
急な変化を見逃さないこと
が大切です。
特に、
急にぐったりした。
突然倒れた。
呼吸が苦しそう。
お腹が張ってきた。
元気が急に落ちた。
という場合には、早めに動物病院へ相談してください。
愛犬の「いつも」を知っておきましょう
病気を早く見つけるために、
難しい医学知識をすべて覚える必要はありません。
まず大切なのは、
普段の愛犬を知っておくこと
です。
いつもの元気。
いつもの食欲。
いつもの呼吸。
いつもの動き方。
いつものお腹の見た目。
それを知っているからこそ、
「今日は何か違う」
と気づくことができます。
心嚢液貯留は、心臓そのものではなく、心臓のまわりに液体がたまることで心臓の働きに影響が出る状態です。
たまった液体によって心臓が圧迫され、十分に血液を送り出せなくなると、状態によっては命に関わることもあります。
だからこそ、
急にぐったりした。
突然倒れた。
呼吸が苦しそう。
お腹が張ってきた。
という変化があれば、
「少し様子を見よう」
と長く待たず、獣医師へ相談してください。
毎日一緒にいる飼い主さんだからこそ気づける、
小さな「いつもと違う」
があります。
今回の記事が、大切な愛犬の異変に気づくきっかけになればと思っています。
※この記事は、犬の心嚢液貯留について一般的な情報をお伝えするものです。急にぐったりした、倒れた、呼吸が苦しそう、お腹が張っている、元気が急に落ちたなどの変化がみられる場合には、長く様子を見ず、早めに動物病院へご相談ください。
獣医師 かわの わいちろう
