「散歩から帰ってきたら、なんだか元気がない」
「いつもより疲れているように見える」
「食欲も少し落ちている気がする」
愛犬にこのような変化があっても、
「今日はたくさん歩いたから疲れたのかな」
と思うことがあるかもしれません。
ですが、一見すると軽い体調不良のように見える変化の背景に、病気が隠れていることがあります。
その一つが、マダニが感染に関わる犬バベシア症です。
犬バベシア症では、バベシアという原虫が犬の赤血球に寄生し、赤血球が破壊されることで溶血性貧血を起こすことがあります。
症状の程度には個体差があり、軽い体調不良から始まる場合もあれば、重い症状へ進むこともあります。
今回は、
- 犬バベシア症とは
- マダニとの関係
- 貧血が起こる理由
- 犬バベシア症でみられる症状
- 歯ぐきの色で気づける変化
- 黄疸や血色素尿について
- 草むらで注意したいこと
- 秋になってもマダニ対策が必要な理由
- 散歩後に確認したいこと
- 動物病院へ相談したい変化
について、獣医師の立場からお伝えします。
犬バベシア症とは?
犬バベシア症は、「バベシア」という原虫が犬の赤血球に寄生することで起こる病気です。
そして、この病気の感染に関わっているのがマダニです。
犬バベシア症は、九州地方や中国地方など、西日本で多くみられます。
そのため、この地域で犬と暮らしている飼い主さんには、ぜひ知っておいていただきたい病気の一つです。
ただし、感染した犬すべてに同じ症状が現れるわけではありません。
軽い体調不良から始まることもあれば、重い症状がみられることもあります。
犬バベシア症では「貧血」に注意が必要です
犬バベシア症で重要な変化の一つが貧血です。
バベシア原虫が赤血球に寄生すると、赤血球が破壊されることがあります。
このように、赤血球が壊されることで起こる貧血を溶血性貧血といいます。
赤血球には、身体の各部へ酸素を運ぶ大切な役割があります。
その赤血球が減ってしまうと、身体へ十分な酸素を運ぶことが難しくなります。
その結果、
元気がなくなる。
疲れやすくなる。
動きたがらなくなる。
といった変化として現れることがあります。
重症化した場合には、輸血などの治療が必要になることもあります。
犬バベシア症ではどんな症状がみられる?
犬バベシア症では、次のような変化がみられることがあります。
- 歯ぐきが白っぽく見える
- 動きたがらない
- 食欲が落ちる
- 元気がなくなる
- 疲れやすくなる
- 発熱する
どの犬にもすべての症状が出るわけではありません。
だからこそ、
「いつもの愛犬と比べてどうか」
を見ることが大切です。
特に、
普段なら喜んで散歩へ行くのに動きたがらない。
いつもなら食べるご飯を残す。
何となく元気がない。
という小さな変化も見逃さないようにしてください。
歯ぐきが白っぽくなっていないか確認してみましょう
犬バベシア症で特に気づいていただきたいのが、歯ぐきの色です。
通常、犬の歯ぐきはピンク色をしています。
ところが貧血が起こると、いつもより白っぽく見えることがあります。
毎日細かく確認する必要はありません。
ですが、愛犬が元気な時に、
「普段の歯ぐきはこのくらいの色」
と知っておくと、変化に気づきやすくなります。
「今日はなんとなく白い気がする」
という変化があり、さらに元気や食欲も低下している場合には、動物病院へ相談してください。
「散歩のあとに疲れているだけ」とは限りません
散歩から帰ってきたあとに犬が横になっていると、
「今日はたくさん歩いたから疲れたのかな」
と思うこともあるでしょう。
もちろん、単純に散歩で疲れて休んでいることもあります。
ですが、
いつもより明らかに元気がない。
なかなか動こうとしない。
食欲もない。
歯ぐきも白っぽい。
という変化が重なっている場合には、
「疲れているだけ」
と決めつけないことが大切です。
犬バベシア症では、疲れやすさや元気の低下もみられることがあります。
黄疸がみられることもあります
犬バベシア症では、赤血球が破壊されることで、貧血以外の変化が現れることもあります。
その一つが黄疸です。
黄疸では、
白目。
歯ぐき。
などが黄色っぽく見えることがあります。
普段と比べて、
「白目が黄色い気がする」
「歯ぐきの色がいつもと違う」
という変化があれば注意してください。
尿が赤色・赤褐色に見えることもあります
犬バベシア症では、尿の色が変化することもあります。
赤血球が破壊されることで、
ヘモグロビン尿(血色素尿)
がみられることがあります。
その場合、尿が、
赤色。
赤褐色。
に見えることがあります。
普段の尿と明らかに色が違う場合には、その変化も動物病院へ伝えてください。
元気・食欲だけでなく「歯ぐき・尿」も確認してください
犬の体調を見る時には、
元気。
食欲。
だけに目が向きやすいと思います。
ですが、犬バベシア症では、
歯ぐきの色
や
尿の色
にも変化が現れることがあります。
そのため愛犬の様子がおかしい時には、
今日はご飯を食べているか。
いつものように動いているか。
歯ぐきはいつもの色か。
尿の色に変化はないか。
というように、いくつかのポイントを一緒に見てみてください。
犬バベシア症の感染に関わるのがマダニです
犬バベシア症の感染に関わるのがマダニです。
マダニが犬の血液を吸う際に、バベシア原虫が犬の体内へ入り、感染することがあります。
そのため、犬バベシア症の予防を考えるうえでは、
マダニとの接触をできるだけ避けること
が大切です。
草むらを歩く時には特に注意してください
犬の散歩では、
草むら。
草の多い公園。
などへ入ることがあります。
このような場所を歩く場合には、マダニとの接触に注意してください。
もちろん、
「草むらを歩いたら必ずマダニがつく」
という意味ではありません。
ですが、犬がマダニと接触する可能性がある場所では、普段からマダニ予防を意識しておくことが大切です。
夏が終わってもマダニ対策を忘れないでください
マダニというと、
「夏に気をつけるもの」
というイメージを持っている方もいると思います。
ですが、
秋になってもマダニへの注意は必要です。
涼しくなったからといって、マダニ対策をすぐにやめてしまわないようにしてください。
犬バベシア症を予防するためにも、
- 適切なマダニ予防を行う
- 草むらでは特に注意する
- 散歩後は身体をチェックする
といったことを意識していただきたいと思います。
散歩から帰ったら身体をチェックしてみましょう
普段のお散歩でも、帰宅後に愛犬の身体を見てみてください。
「今日は草むらをたくさん歩いた」
という日には、特にマダニが付いていないか確認する習慣をつけておくとよいでしょう。
大切なのは、
特別な日にだけ気をつけることではなく、
普段の散歩のあとにも愛犬の身体を見る習慣をつくること
です。
「いつもと違う」を見つけることが大切です
犬バベシア症は、犬によって症状の程度が異なります。
軽い体調不良から始まることもあれば、突然の貧血や血色素尿によって重症化することもあります。
そのため、
「少し元気がないだけ」
「散歩のあとだから疲れているだけ」
と思うような変化でも、注意してください。
特に、
- 歯ぐきが白っぽい
- 食欲がない
- 動きたがらない
- 元気がない
- 疲れやすい
- 発熱している
- 白目や歯ぐきが黄色っぽい
- 尿が赤色・赤褐色に見える
といった変化がある場合には、早めに動物病院へ相談してください。
普段の愛犬を知っていることが、変化に気づくきっかけになります
愛犬の病気へ早く気づくためには、
特別な知識だけが必要なわけではありません。
普段の、
元気。
食欲。
動き方。
歯ぐきの色。
尿の色。
を知っていることも大切です。
毎日一緒に暮らしているからこそ、
「今日はいつもと少し違う」
という変化に気づけることがあります。
犬バベシア症は、マダニが感染に関わる病気の一つです。
そして感染すると、赤血球が破壊され、貧血などを起こすことがあります。
大切なのは、
日頃からマダニ対策を続けること。
そして、
愛犬のいつもと違う変化を見逃さないこと。
秋になってもマダニへの注意を忘れず、普段のお散歩やスキンシップの中で愛犬の身体を見てあげてください。
※この記事は、犬バベシア症について一般的な情報をお伝えするものです。症状の程度は犬によって異なります。歯ぐきが白っぽい、食欲がない、動きたがらない、発熱などの変化がみられる場合には、動物病院へご相談ください。
獣医師 かわの わいちろう
