「今ま飲めていた薬を、急に嫌がるようになった」
「ごはんに混ぜていたけれど、食欲が落ちて飲ませられない」
「錠剤を飲み込むことが難しくなってきた」
犬や猫の病気によっては、毎日お薬を続ける必要があります。
最初は問題なく飲めていても、
高齢になった。
食欲が落ちた。
口の中に痛みがある。
飲み込む力が低下した。
薬の味を嫌がるようになった。
などの理由から、今までと同じ方法では飲ませることが難しくなる場合があります。
そのような時、
「何とかして飲ませなければ」
と飼い主さんが一生懸命になるあまり、犬猫にもご家族にも大きな負担がかかってしまうことがあります。
また、
「飲めないなら、薬をやめてもいいのかな?」
「錠剤を砕いてごはんに混ぜてもいい?」
「別の形の薬に変えられないの?」
と迷うこともあると思います。
今回は、
- 犬猫がお薬を飲めなくなる理由
- 錠剤を飲めない時に考えられる工夫
- ごはんに薬を混ぜる時の注意点
- 薬を砕いたり割ったりしてもよいのか
- 液体のお薬へ変更できる場合
- 薬を飲んだ後に吐いた時の考え方
- お薬を自己判断で中止しない方がよい理由
- 今の薬を続けてよいか迷った時
- 通院が難しい場合の往診という選択肢
について、獣医師の立場からお伝えします。
- 犬猫がお薬を飲めなくなる理由はいろいろあります
- 「薬を飲ませられないこと」も獣医師へ伝えてください
- 錠剤を飲めない時には薬の形を相談できることがあります
- ごはんに薬を混ぜてもいい?
- 薬を砕いたり割ったりするのは自己判断しないでください
- 人用のお薬を代わりに使わないでください
- 薬を飲んだあと吐いた時は、もう一度飲ませる?
- 飲み忘れた時も「次に2回分」は自己判断で行わないでください
- 「症状が良くなったから薬をやめる」も注意が必要です
- 「今飲んでいる薬を続けていい?」と思った時
- お薬の副作用かな?と思った時に記録してほしいこと
- お薬の一覧を作っておくと診察に役立ちます
- かかりつけ医のお薬を往診で相談することもできます
- 通院が難しい場合には往診でお薬について相談できることがあります
- 往診でも詳しい検査が必要になることがあります
- お薬が飲めなくなった時こそ、一人で抱え込まないでください
- 福岡市で犬猫のお薬について往診をご希望の方へ
犬猫がお薬を飲めなくなる理由はいろいろあります
「昨日まで普通に飲めていたのに、急に薬を嫌がるようになった」
ということがあります。
その理由は単純に薬が嫌いになっただけとは限りません。
たとえば、
- 薬の味やにおいが苦手
- 食欲が低下している
- 吐き気がある
- 歯や口の中が痛い
- 飲み込む力が弱っている
- 薬を飲んだ後に気分が悪くなった経験がある
- 身体を押さえられることへの恐怖が強くなった
- 高齢になり身体の状態が変わった
など、さまざまな理由があります。
特に、
「ごはんは食べたいのに薬だけ嫌がる」
場合と、
「食事そのものを食べなくなったため、薬も飲めない」
場合では考え方が違います。
後者では、薬の飲ませ方よりも先に、なぜ食欲が低下しているのかを確認する必要があります。
「薬を飲ませられないこと」も獣医師へ伝えてください
診察では、
「この薬を1日2回飲ませてください」
といった説明を受けることがあります。
ですが、実際に自宅へ帰ってみると、
どうしても口を開けてくれない。
吐き出してしまう。
ごはんに混ぜると食事そのものを食べなくなる。
毎回逃げ回ってしまう。
ということもあります。
そのような時に、
「ちゃんと飲ませられない自分が悪い」
と考える必要はありません。
お薬は、処方するだけではなく、実際にご家庭で続けられることも大切です。
「この方法では難しいです」
「毎回かなり嫌がります」
と獣医師へそのまま伝えてください。
薬の種類や病気によっては、別の方法を考えられる場合があります。
錠剤を飲めない時には薬の形を相談できることがあります
犬猫に使用する飲み薬には、
- 錠剤
- カプセル
- 液体
- 粉薬
- ペースト状の薬
など、さまざまな形があります。
同じ成分でも、薬によっては複数の剤形がある場合があります。
たとえば、
大きな錠剤を飲み込めない。
錠剤を口へ入れると吐き出す。
という場合には、使用している薬によっては液体など別の方法を検討できることがあります。
ただし、すべての薬を好きな形へ変更できるわけではありません。
薬の成分や安定性、吸収のされ方などによって、使用できる剤形は異なります。
「錠剤が飲めません」
ということも、遠慮せず獣医師へ相談してください。
ごはんに薬を混ぜてもいい?
薬によっては、少量の食事やおやつなどに混ぜて飲ませる方法を利用できる場合があります。
ただし、いくつか注意したいことがあります。
まず、
薬を混ぜた食事を全部食べられるか
という点です。
いつもの食事全体に薬を混ぜてしまい、途中で食べるのをやめると、どのくらい薬を飲めたのか分からなくなります。
そのため、食事に混ぜてもよい薬であれば、最初に少量の食べ物へ入れ、確実に食べられたことを確認してから残りの食事を与える方法を考えることがあります。
ただし、
食事と一緒に飲んではいけない薬。
食事によって吸収が変わる薬。
療法食を食べている子。
などもいます。
「この薬は食事に混ぜてもいいですか?」
と処方時に確認しておくと安心です。
薬を砕いたり割ったりするのは自己判断しないでください
大きな錠剤を見ると、
「細かく砕いてごはんに混ぜればいいのでは?」
と思うかもしれません。
ですが、薬によっては砕いたり割ったりしない方がよいものがあります。
薬の中には、
身体の中でゆっくり成分が出るように作られている。
特定の場所で溶けるように加工されている。
表面をコーティングしている。
といったものがあります。
このような薬を自己判断で砕いたり割ったりすると、本来想定されていた薬の働き方が変わる可能性があります。
そのため、
錠剤を砕く・割る・カプセルを開ける前には、必ず獣医師へ確認してください。
人用のお薬を代わりに使わないでください
犬や猫がつらそうにしていると、
「家にある人用のお薬を少し使えないかな」
と思うことがあるかもしれません。
ですが、人では一般的に使用されている薬でも、犬や猫では重大な問題を起こすものがあります。
また、人と犬猫では適切な量も異なります。
そのため、
人用のお薬を自己判断で犬猫へ与えないでください。
同じように、
以前別の犬に処方された薬。
同居している猫のお薬。
昔処方されて残っている薬。
なども、現在の犬猫へ自己判断で使用しないようにしてください。
薬を飲んだあと吐いた時は、もう一度飲ませる?
お薬を飲ませた直後に吐いてしまうと、
「もう一度同じ薬を飲ませた方がいい?」
と迷うと思います。
ですが、これは自己判断で追加投与しない方が安全です。
吐いたタイミング。
薬がそのまま出てきたか。
どの薬を飲んだのか。
犬猫の状態。
によって判断が変わります。
すでに身体へ吸収され始めている場合にもう一度同じ量を与えると、結果的に過量になる可能性があります。
薬を飲んだ後に吐いた場合には、
薬の名前・飲ませた時間・吐いた時間・吐いた物の様子
を確認して獣医師へ相談してください。
飲み忘れた時も「次に2回分」は自己判断で行わないでください
毎日薬を飲ませていると、
「朝の薬を忘れてしまった」
ということもあると思います。
その時、
「夜に2回分飲ませればいいかな」
と自己判断しないでください。
薬によって、
気づいた時点で投与するのか。
次の時間まで待つのか。
など対応が異なります。
また、薬の種類によっては急に中止することが適切ではない場合もあります。
飲み忘れに気づいた場合には、その薬について獣医師へ確認してください。
「症状が良くなったから薬をやめる」も注意が必要です
犬猫の状態が良くなると、
「もう元気だから薬は必要ないかな」
と思うことがあります。
ですが、お薬には、
症状を一時的に抑えているもの。
一定期間続ける必要があるもの。
長期的な病気を管理しているもの。
などがあります。
そのため、元気になったからといって飼い主さんの判断だけで中止すると、病状が再び悪化することがあります。
反対に、
体調が変わったため、その薬を続けることが適切ではなくなっている場合もあります。
つまり、
「続ける」「やめる」のどちらも自己判断せず、現在の状態を確認して決めること
が大切です。
「今飲んでいる薬を続けていい?」と思った時
高齢犬・高齢猫や持病のある子では、長期間お薬を続けていることがあります。
その中で、
以前より食欲が落ちた。
体重が減った。
水を飲む量が変わった。
歩けなくなった。
嘔吐するようになった。
元気がなくなった。
という変化があれば、
今の薬が現在の身体の状態に合っているか
を確認する必要があります。
以前に適切だった薬や量が、ずっと同じとは限りません。
定期的な検査結果や症状の変化を見ながら、必要に応じて治療内容を見直します。
お薬の副作用かな?と思った時に記録してほしいこと
薬を始めたあとに、
「なんだかいつもと違う」
と感じることもあると思います。
その場合には、
- 薬を始めた日
- 薬の名前
- 飲ませた時間
- 変化が出た時間
- 食欲
- 嘔吐や下痢
- 元気
- 呼吸
- 歩き方
- 排尿・排便
などを確認してください。
気になる様子を安全に撮影できる場合には、写真や動画も診察時の参考になります。
ただし、
呼吸が苦しい。
意識がおかしい。
けいれんしている。
急激にぐったりした。
顔が腫れるなど急な変化がある。
といった場合には、記録することよりも早く獣医師へ連絡することを優先してください。
お薬の一覧を作っておくと診察に役立ちます
複数の病気を治療している犬猫では、飲んでいる薬が増えることがあります。
その場合には、
- 薬の名前
- 1回量
- 1日何回か
- いつから飲んでいるか
- 何のための薬か
などを一覧にしておくと便利です。
処方された薬だけではなく、
サプリメント。
市販のケア用品。
なども使用している場合には獣医師へ伝えてください。
薬の袋を保管しておいたり、スマートフォンで写真を撮っておいたりする方法でも構いません。
特に、普段とは違う獣医師や往診を利用する場合には大切な情報になります。
かかりつけ医のお薬を往診で相談することもできます
すでにかかりつけの動物病院で治療を受けている場合でも、通院が難しくなった時に往診を併用することがあります。
その場合には、
現在の薬。
最近の検査結果。
診断されている病気。
これまでの治療経過。
などが分かる資料を準備してください。
往診では、その情報と現在の身体の状態を合わせて確認します。
ただし、
「かかりつけ医でもらった薬と同じものを、そのまま出してほしい」
というだけで必ず同じ薬を処方できるとは限りません。
今もその薬が必要なのか。
量は適切なのか。
身体の状態に変化はないか。
を診察したうえで判断します。
通院が難しい場合には往診でお薬について相談できることがあります
高齢になったり、寝たきりになったりすると、
「お薬について相談したいだけなのに、病院まで連れて行くことが難しい」
ということもあります。
そのような場合には、獣医師がご自宅へ伺う往診という選択肢があります。
往診では、
現在の症状。
食欲。
水分。
排泄。
呼吸。
体重や身体の状態。
現在飲んでいるお薬。
これまでの検査結果。
などを確認し、治療について考えます。
診察した結果、必要と判断した場合には、ご自宅で続けられるお薬について検討することもあります。
往診でも詳しい検査が必要になることがあります
お薬の見直しをするためには、身体の状態を確認する検査が必要なこともあります。
たとえば、
血液検査。
尿検査。
レントゲンなどの画像検査。
血圧測定。
その他、病気に応じた検査。
などです。
往診で行える検査には限りがあります。
そのため、現在の薬を安全に続けるために詳しい検査が必要と判断した場合には、設備の整った動物病院をご案内することがあります。
「往診なら薬だけもらえる」というものではありません。
必要な医療へつなげることも往診の役割のひとつです。
お薬が飲めなくなった時こそ、一人で抱え込まないでください
毎日のお薬は、短期間なら頑張れても、何か月、何年と続くと大きな負担になることがあります。
特に、
毎回逃げる。
咬もうとする。
何度も吐き出す。
食事そのものを警戒するようになった。
という状態になれば、犬猫にもご家族にもストレスがかかります。
その時に大切なのは、
「もっと上手に飲ませなければ」と頑張り続けることだけではありません。
薬の形を変えられないか。
回数を変更できないか。
別の治療方法がないか。
本当に今も同じ薬が必要なのか。
獣医師と一緒に見直すことができます。
治療は、処方できることだけではなく、
その子とご家族が実際に続けられること
も大切だと思っています。
福岡市で犬猫のお薬について往診をご希望の方へ
福岡犬猫往診クリニックでは、福岡市を中心に犬猫の往診を行っています。
「病院へ連れて行くことが難しいけれど、お薬について相談したい」
「今飲んでいる薬を続けてよいのか確認したい」
「薬をうまく飲ませられなくなった」
という場合には、往診専用LINEからご相談いただけます。
現在飲んでいるお薬がある場合には、お薬の袋や検査結果など、治療内容が分かるものをご準備ください。
▼往診についてのご相談はこちら
https://lin.ee/P5x6bjfZ
犬猫の状態や必要な治療によっては、設備の整った動物病院での検査・診療をご案内する場合があります。
福岡犬猫往診クリニック
獣医師 かわの わいちろう
※この記事は、犬猫のお薬の飲ませ方や往診での相談について一般的な情報をお伝えするものです。薬によって、投与方法・食事との関係・割ったり砕いたりできるかどうか・飲み忘れ時の対応などは異なります。処方された薬の使用方法を自己判断で変更せず、獣医師へご相談ください。
参考情報
- Merck Veterinary Manual「How Drugs Are Given to Animals」
- Cornell University College of Veterinary Medicine「Giving Your Cat Oral Medications」
- FDA「Veterinary Medication Errors」
