犬猫の点滴は自宅でもできる?皮下点滴と静脈点滴の違い・往診でできることを獣医師が解説

「病院まで連れて行くのが難しいけれど、点滴は続けたい」

「高齢になって通院のたびに疲れてしまう」

「注射が必要と言われたけれど、自宅でしてもらうことはできる?」

高齢の犬や猫、持病のある子では、継続して点滴や注射などの治療が必要になることがあります。

一方で、

病院までの移動。

車への乗り降り。

待合室での待ち時間。

キャリーでの移動。

といった通院そのものが、大きな負担になることもあります。

そのような場合には、獣医師がご自宅へ伺い、往診で点滴や注射を行える場合があります。

ただし、

「点滴なら何でも自宅でできる」

というわけではありません。

犬猫の状態や病気、脱水の程度、必要な薬、点滴方法などによっては、設備の整った動物病院で治療を行う必要があります。

今回は、

  • 犬猫の点滴にはどのような方法があるのか
  • 皮下点滴と静脈点滴の違い
  • 自宅で点滴を検討できるケース
  • 動物病院での点滴が必要になりやすいケース
  • 注射は自宅でもできるのか
  • 点滴前に状態確認が必要な理由
  • 点滴後に確認したいこと
  • 持病がある犬猫の注意点
  • 飼い主さん自身が点滴する場合について
  • 往診とかかりつけ医の使い分け

について、獣医師の立場からお伝えします。

犬猫の「点滴」はすべて同じではありません

飼い主さんから、

「点滴をしてほしい」

とご相談いただくことがあります。

一般的に「点滴」と呼ばれていますが、犬猫に水分や電解質などを補う方法はいくつかあります。

代表的なのが、

皮下点滴(皮下補液)

と、

静脈点滴(静脈内輸液)

です。

どちらも身体へ水分を補う治療ですが、行う目的や適している状態が異なります。

「以前、病院で点滴してもらったから今回も同じ方法で」

とは限りません。

まず現在の犬猫の状態を確認し、どの方法で、どのくらいの量を、どのくらいの速さで補う必要があるのかを獣医師が判断することが大切です。

皮下点滴とは?

皮下点滴は、皮膚の下に輸液剤を投与し、そこから少しずつ身体へ吸収させる方法です。

動物病院だけではなく、犬猫の状態や治療内容によっては往診でも行われることがあります。

たとえば、

  • 軽度から中等度の脱水がある
  • 慢性疾患の管理をしている
  • 高齢で通院が負担になっている
  • 継続的な補液が必要と判断されている

といった場合に検討されることがあります。

特に慢性腎臓病の猫などでは、獣医師の判断によって継続的な皮下補液が治療の一部になることがあります。

ただし、

脱水している犬猫なら必ず皮下点滴でよい

というわけではありません。

身体の状態によっては、より速く確実に水分を補う必要があります。

静脈点滴とは?

静脈点滴は、血管にカテーテルを入れ、輸液剤を直接血管内へ投与する方法です。

皮下点滴と比べて、必要な量をより正確に管理しながら投与できることが特徴です。

たとえば、

  • 脱水が重い
  • 血圧や循環状態に問題がある
  • 嘔吐や下痢などで水分を大きく失っている
  • 口からほとんど水分をとれない
  • 急激に状態が悪化している
  • 継続的な管理やモニタリングが必要

といった場合には、静脈点滴が必要になることがあります。

特に、血液の循環量が不足しているショックなどの状態では、皮下点滴では十分な対応ができません。

そのような場合には、設備や継続的な管理ができる動物病院での治療が必要になります。

「皮下点滴」と「静脈点滴」はどちらが良い?

これは、どちらが優れているというものではありません。

犬猫の状態によって使い分けます。

比較的安定していて、皮下からゆっくり水分を吸収できる状態であれば、皮下点滴を選択する場合があります。

一方、

短時間で水分を補う必要がある。

循環状態が悪い。

重度の脱水がある。

全身状態が悪い。

という場合には、静脈点滴など、より集中的な治療が必要になります。

大切なのは、

「自宅でできる方法を選ぶ」のではなく、「今のその子に必要な方法を選ぶ」こと

です。

往診で皮下点滴ができる場合があります

通院が難しくなった犬猫では、往診で皮下点滴を行える場合があります。

たとえば、

「慢性疾患で定期的に補液を受けている」

「高齢になり、病院へ行くだけで疲れてしまう」

「寝たきりになり、家族だけでは病院へ連れて行けない」

といったケースです。

往診では、ご自宅で犬猫の身体の状態を確認したうえで、

現在も点滴が必要なのか。

皮下点滴でよい状態なのか。

どの程度の量が必要なのか。

病院での検査が必要ではないか。

などを考えます。

「通院できないから、とりあえず点滴だけする」というものではありません。

点滴も治療のひとつなので、診察したうえで行うことが大切です。

「いつもの点滴」でも毎回同じとは限りません

以前から定期的に点滴を受けている子では、

「いつもの点滴をお願いします」

ということもあると思います。

ですが、犬猫の身体の状態は日々変化しています。

昨日までと同じ治療が、今日も適しているとは限りません。

たとえば、

食事がとれているか。

水が飲めているか。

嘔吐や下痢はないか。

尿は出ているか。

呼吸は苦しくないか。

体重は変わっていないか。

むくみのような変化はないか。

などを確認します。

必要に応じて、血液検査などで身体の状態を確認することもあります。

点滴は単なる「水分補給」ではありません。

身体の状態に合わせて量や方法を決める必要がある医療行為です。

点滴は多ければ多いほど良いわけではありません

水分が足りないと聞くと、

「たくさん点滴した方が良いのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、点滴には適切な量があります。

必要以上の水分を身体へ入れると、犬猫の状態によっては**体内に水分が過剰にたまる「輸液過剰」**を起こす可能性があります。

特に、

  • 心臓病がある
  • 腎臓の状態が悪い
  • 血液中のたんぱく質が低い
  • 水分バランスを調整する力が低下している

といった子では、より慎重な判断が必要です。

そのため、

「前回○mLだったから今回も同じ」

と飼い主さん自身で量を変更したり増やしたりしないようにしてください。

心臓病や腎臓病がある子は特に慎重に

慢性腎臓病では皮下点滴が行われることがあります。

一方で、

腎臓病がある=たくさん水分を入れればよい

ということではありません。

また、心臓病がある犬猫では、過剰な輸液によって身体への負担が大きくなる場合があります。

そのため、

腎臓の状態。

心臓の状態。

尿量。

食事や飲水量。

体重。

呼吸。

むくみ。

などを確認しながら治療内容を考える必要があります。

点滴は、その子の病名だけではなく、その日の身体の状態を見ながら調整する治療です。

注射も往診で行える場合があります

点滴と同じように、注射についても往診で対応できる場合があります。

ただし、

どの注射でも自宅でできるわけではありません。

薬には、

皮下に投与するもの。

筋肉へ投与するもの。

静脈から投与するもの。

投与後に状態確認が必要なもの。

などがあります。

また、注射薬によっては保存方法や投与方法にも注意が必要です。

往診で安全に実施できる治療なのか、動物病院で行う必要があるのかを、犬猫の状態や使用する薬によって判断します。

「注射だけお願いします」でも診察が必要です

以前に処方された注射を続けている場合でも、

「今日は注射だけお願いします」

という形で、身体の状態を確認せず治療だけを行うことが適切とは限りません。

病気の状態が変化していれば、

薬の量。

使用する薬。

治療頻度。

治療そのもの。

を見直す必要がある場合があります。

そのため、往診でも基本的には現在の状態を確認し、

その治療を今日行ってよいのか

を判断します。

飼い主さん自身が自宅で皮下点滴する場合もあります

病気や治療内容によっては、獣医師から指導を受け、飼い主さんがご自宅で皮下点滴を行うケースもあります。

たとえば、一部の慢性腎臓病の猫では、長期的な管理の中で自宅での皮下補液が提案されることがあります。

ただし、

獣医師から指示を受けずに自己判断で始めるものではありません。

輸液の種類。

量。

頻度。

中止する目安。

体調が変化した時の対応。

など、その子ごとに決める必要があります。

また、飼い主さんが自宅で点滴することに大きな負担や不安を感じる場合もあります。

「自分でできないといけない」

と思わず、難しい場合には獣医師へそのことも相談してください。

点滴後に確認してほしいこと

点滴をした後も、犬猫の様子を確認することが大切です。

特に、

  • 呼吸がいつもより速くないか
  • 苦しそうにしていないか
  • 強くぐったりしていないか
  • 嘔吐していないか
  • 食欲や元気はどうか
  • 尿は出ているか
  • 身体に気になる腫れがないか

などを見てください。

皮下点滴では、投与した部分が一時的にふくらんで見えることがあります。

通常は少しずつ身体へ吸収されていきます。

ただし、

「いつまで経っても吸収されない気がする」

「呼吸が苦しそうになった」

「体調が明らかに悪化した」

といった場合には、獣医師へ連絡してください。

点滴をしても良くならない時は、原因を確認する必要があります

点滴は、多くの病気で重要な治療になります。

ですが、

点滴をすればすべての体調不良が良くなるわけではありません。

たとえば、

食べない。

元気がない。

嘔吐する。

ぐったりする。

という症状の背景には、さまざまな病気があります。

点滴によって脱水を改善することはできても、病気そのものに別の治療が必要な場合があります。

「点滴をしたのに元気にならない」

という場合には、さらに検査が必要かもしれません。

点滴だけを繰り返すのではなく、なぜ体調が悪いのかを確認することが大切です。

こんな時は往診ではなく動物病院での治療が必要になることがあります

通院が難しい子であっても、状態によっては往診を待たず、設備の整った動物病院での診療が必要になります。

たとえば、

  • 呼吸が非常に苦しそう
  • 意識がない、反応がおかしい
  • けいれんが続いている
  • 短時間で急激にぐったりした
  • 大量に出血している
  • 嘔吐や下痢が激しい
  • 水を飲んでもすぐ吐いてしまう
  • ほとんど尿が出ていない
  • 強い脱水が疑われる
  • ショック状態が疑われる

などです。

こうした状態では、静脈点滴や酸素投与、検査、継続的なモニタリングなどが必要になる場合があります。

「通院が大変だから往診を待とう」

と自己判断せず、まず動物病院や獣医師へ現在の状態を伝えてください。

かかりつけの動物病院と往診を併用する方法もあります

自宅で点滴を受けるようになったからといって、これまでのかかりつけの動物病院をやめる必要はありません。

たとえば、

定期的な血液検査は、かかりつけの動物病院。

通院が難しい時の皮下点滴は、往診。

という使い分けもできます。

また、

状態が安定している時期は自宅で治療を続け、

体調が変化した時には動物病院で詳しい検査を受ける、

という方法もあります。

かかりつけ医には、

過去の血液検査。

診断内容。

使用している薬。

これまでの治療経過。

など、大切な情報があります。

往診を利用する場合にも、可能であればこうした情報を共有してください。

治療する場所が変わっても、その子の医療はひとつながりです。

点滴を続けたいのに通院が難しくなった時には

高齢になったり、病気が進行したりすると、

「治療は続けたい」

という気持ちがあっても、

病院まで移動させることが難しい。

通院後の疲れが大きい。

寝たきりで車へ乗せられない。

大型犬で家族だけでは運べない。

という場面が出てくることがあります。

そのような時には、

「もう通院できないから、治療も終わり」

と考える前に、自宅で続けられる治療があるか獣医師へ相談してみてください。

往診でできること。

飼い主さんが自宅でできること。

動物病院でなければできないこと。

それぞれを整理することで、その子に合った方法が見つかることがあります。

自宅で治療を続ける時こそ、状態の変化を大切に

自宅で点滴や注射を続けられるようになると、通院の負担を減らせる場合があります。

一方で、

「自宅で治療できる=病院へ行かなくてよい」

という意味ではありません。

治療を続けながら、

食欲。

飲水。

尿。

便。

体重。

呼吸。

元気。

歩き方。

などを観察し、変化があれば獣医師へ伝えてください。

定期的な検査が必要な病気では、状態が安定していても予定された診察や検査を受けることも大切です。

その子にとって、

治療によるメリット。

通院による負担。

必要な検査。

ご家族が続けられる方法。

を一緒に考えながら、無理の少ない治療方法を選んでいただけたらと思います。

福岡市で犬猫の点滴・注射の往診をご検討の方へ

福岡犬猫往診クリニックでは、福岡市を中心に犬猫の往診を行っています。

犬猫の状態や治療内容に応じて、往診で皮下点滴や注射などを行える場合があります。

「点滴は続けたいけれど、病院へ連れて行くことが難しくなった」

「高齢になり、通院することが負担になっている」

「自宅で治療できる内容なのか知りたい」

という場合には、往診専用LINEからご相談いただけます。

▼往診についてのご相談はこちら
https://lin.ee/P5x6bjfZ

犬猫の状態や必要な治療によっては、往診ではなく設備の整った動物病院での検査・治療をご案内する場合があります。

福岡犬猫往診クリニック
獣医師 かわの わいちろう


※この記事は、犬猫の点滴・注射や往診について一般的な情報をお伝えするものです。適切な輸液の種類・量・投与経路・頻度は、犬猫の病気や身体の状態によって異なります。自己判断で点滴量や頻度を変更したり、人用・他の動物用の薬を使用したりしないでください。

参考情報

  • AAHA「2024 AAHA Fluid Therapy Guidelines for Dogs and Cats」
  • Cornell Feline Health Center「Chronic Kidney Disease」
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