寝たきりの犬猫の自宅介護|床ずれ・寝返り・排泄などお世話のポイントを獣医師が解説

「寝たきりになって、病院へ連れて行くことが難しくなった」

「寝返りができなくなったけれど、どうしてあげたらいい?」

「食事や排泄のお世話は、今のやり方で大丈夫なのかな?」

高齢や病気によって、犬や猫が自分で立ったり歩いたりすることが難しくなることがあります。

そして寝たきりの状態になると、

病気そのものの治療だけではなく、毎日の介護がとても大切になります。

寝床はどうするのか。

寝返りは必要なのか。

排泄で身体が汚れたらどうするのか。

食事や水分はどう考えるのか。

皮膚に赤いところができていないか。

飼い主さんにとって、初めて経験することばかりかもしれません。

また、

「病院へ連れて行けないから、もう獣医師に診てもらうことはできないのでは」

と不安になる方もいらっしゃいます。

そのような場合には、獣医師がご自宅へ伺う往診という選択肢もあります。

今回は、

  • 寝たきりの犬猫で確認したいこと
  • 床ずれを防ぐために気をつけたいこと
  • 寝返りや体勢について
  • 排泄後のケア
  • 食事や水分について
  • 自宅の介護環境
  • 痛みや苦しさのサイン
  • 往診で相談できること
  • すぐに獣医師へ相談したい変化

について、獣医師の立場からお伝えします。

犬猫が寝たきりになったら「病気+毎日の生活」を見ていきます

寝たきりになった犬猫では、病気そのものの状態を確認することはもちろんですが、日常生活についても考える必要があります。

たとえば、

  • 食事はとれているか
  • 水分はとれているか
  • 呼吸は苦しくないか
  • 排尿・排便はできているか
  • 身体が汚れていないか
  • 痛みはないか
  • 自分で寝返りができるか
  • 皮膚に赤みや傷がないか
  • 落ち着いて眠れているか

などです。

寝たきりになる原因や身体の状態は、その子によって異なります。

「寝たきりになった犬猫には、この介護方法」

と、すべての子に同じ対応ができるわけではありません。

だからこそ、その子の状態を診ながら介護方法を考えることが大切です。

寝たきりになると「床ずれ」に注意が必要です

寝たきりの犬猫で注意したいことのひとつが、**床ずれ(褥瘡)**です。

同じ姿勢で長時間横になっていると、身体の一部分に圧力がかかり続けます。

特に、

  • 股関節周辺
  • 足首など骨が出ている部分

には負担がかかりやすくなります。

最初は、

「少し赤いかな?」

という程度でも、状態が進むと皮膚が傷つくことがあります。

そのため、毎日身体を触りながら、

皮膚に赤み・腫れ・傷・湿っているところがないか

確認してあげてください。

毛が多くて皮膚が見えにくい犬猫では、毛を分けながら確認するとよいでしょう。

寝返りは必要?体勢を変えることも大切です

自分で寝返りができない犬猫では、同じ側ばかりを下にしていると身体の一部分に負担がかかります。

そのため、その子の状態に応じて、数時間ごとを目安に体勢を変えるなどの介助を考えることがあります。

ただし、

強い痛みがある。

呼吸が苦しい。

骨折や神経の病気がある。

特定の姿勢でないと呼吸しづらい。

など、身体を動かすこと自体が負担になる場合もあります。

無理に寝返りをさせるのではなく、

どのくらいの頻度で、どのように体勢を変えるのがよいかは獣医師へ相談してください。

大切なのは「○時間ごと」と数字だけを守ることではなく、その子が苦しくない方法で圧迫される場所を変えてあげることです。

寝床は「やわらかければいい」だけではありません

寝たきりの犬猫では、寝床選びも大切です。

長時間身体を預ける場所なので、

  • 身体への圧力を分散しやすい
  • 適度なクッション性がある
  • 身体が沈み込みすぎない
  • 清潔を保ちやすい
  • 濡れたときに交換しやすい

といったことを意識します。

また、寝床が尿や便、水などで濡れた状態が続くと、皮膚トラブルにつながることがあります。

防水シートなどを上手に使いながら、その上に清潔で乾いた敷物を重ねるなど、交換しやすい環境を作っておくとよいでしょう。

寝床についても、その子の体格や病気によって適したものが異なります。

「このベッドで大丈夫かな?」

と迷った場合には、実際に使用している寝床を獣医師に見てもらうのもひとつの方法です。

排尿・排便と身体の清潔を確認しましょう

寝たきりになると、自分でトイレまで移動できなくなることがあります。

そのため、

尿は出ているか。

便は出ているか。

身体が排泄物で汚れていないか。

をこまめに確認してください。

特に尿が皮膚についた状態が続くと、皮膚が炎症を起こすことがあります。

尿や便で汚れた場合には、できるだけ早くやさしくきれいにし、皮膚や被毛を乾いた状態にしてあげることが大切です。

また、

「尿が長時間出ていない」

「排尿しようとしているのに出ない」

「血尿がある」

「下痢が続いて身体が何度も汚れる」

といった変化があれば、獣医師へ相談してください。

オムツは便利ですが、つけっぱなしには注意を

寝たきりの犬猫では、オムツを使用することもあると思います。

オムツは介護の負担を軽減してくれる便利なものですが、尿や便で濡れたまま長時間使用すると、皮膚が蒸れたり、炎症が起きたりすることがあります。

使用する場合には、

こまめに確認して交換すること

が大切です。

また、お尻や後ろ足周辺の毛が長い子では、汚れが絡みやすくなることもあります。

必要に応じてお手入れしやすい状態に整えることについて、獣医師やトリマーへ相談する方法もあります。

食事がとれなくなってきた時

寝たきりになった犬猫では、食欲が低下することがあります。

そのとき、

「何とか食べさせなければ」

と心配になりますよね。

まず確認したいのは、

  • 自分から食べようとするか
  • 食べ物を口まで運ぶと反応するか
  • 飲み込むことができているか
  • 食べると咳き込まないか
  • 吐いていないか
  • どのくらい食べられているか

ということです。

食事がとれない理由は、

病気そのもの。

痛み。

吐き気。

口の中の問題。

身体を起こすことが難しい。

飲み込む力が低下している。

など、さまざまです。

そのため、

食べないからといって、無理に口へ入れることが適切とは限りません。

特に飲み込む力が弱っている子では、安全に食べられる状態なのかを確認することが大切です。

「食べさせ方が分からない」

「むせるようになった」

「ほとんど食べられない」

という場合には、獣医師へ相談してください。

水分についても確認しましょう

食事と同じように、水分がとれているかも大切です。

水飲み場まで移動できなくなった場合には、寝床の近くへ水を置くことで飲めることがあります。

ただし、

身体を起こせない。

飲み込む力が低下している。

水を飲むと咳き込む。

飲んでも吐いてしまう。

といった場合には注意が必要です。

自己判断で無理に大量の水を口へ入れることはせず、その子に合った水分補給の方法を獣医師へ相談してください。

身体をやさしく動かすことが役立つ場合もあります

長期間動かない状態が続くと、筋肉や関節がこわばりやすくなります。

その子の病気や身体の状態によっては、

  • やさしく身体をさする
  • 関節をゆっくり動かす
  • 補助しながら身体を起こす

などのケアが役立つ場合があります。

一方で、骨や関節の病気、神経疾患、強い痛みなどがある子では、不適切な動かし方が負担になることもあります。

マッサージや関節運動についても、自己流で強く行わず、獣医師やリハビリテーションの専門家に方法を確認してから行いましょう。

痛みや苦しさのサインにも注意してください

寝たきりの犬猫は、自分で楽な姿勢へ移動することができない場合があります。

そのため、痛みや不快感がないか日頃から確認してあげてください。

たとえば、

  • 触ると嫌がる
  • 呼吸が速くなった
  • ハアハアして落ち着かない
  • 鳴くことが増えた
  • 眠れない
  • 身体に力が入っている
  • 表情がいつもと違う
  • ご家族への反応が変わった

などがみられることがあります。

犬や猫は、必ずしも大きな声で鳴いて痛みを表現するわけではありません。

普段との行動や表情の違いが、痛みを考える手がかりになることもあります。

気になる変化があれば、写真や動画を撮影し、獣医師に見てもらう方法もあります。

寝たきりの子では体温管理にも気をつけます

自分で自由に場所を移動できない犬猫では、

「暑いから涼しいところへ行く」

「寒いから暖かいところへ移動する」

ということができません。

そのため、

室温。

寝床の温度。

身体が冷えすぎていないか。

暑くなりすぎていないか。

なども確認してください。

暖房器具や保温グッズを使用する場合には、低温やけどにも注意が必要です。

人用の暖房器具を直接身体へ当てたままにするなど、犬猫自身が逃げられない状態で使用しないようにしてください。

ご家族だけで抱え込まないことも大切です

寝たきりの犬猫の介護は、想像以上に大変なことがあります。

大型犬の場合には、寝返りを手伝うだけでも力が必要です。

夜中に何度も状態を確認することもあります。

排泄のお世話。

食事。

お薬。

身体を清潔にすること。

寝返り。

そして、常に、

「苦しくないかな」

「これで大丈夫かな」

と心配しながら過ごす。

介護するご家族にも、身体的・精神的な負担がかかることがあります。

だからこそ、

「全部自分たちだけでやらなければ」

と思わなくても大丈夫です。

できないこと。

大変なこと。

困っていること。

夜のお世話が難しいこと。

そうしたことも、獣医師へ伝えてください。

その子の状態だけではなく、ご家族が続けられる介護方法を考えることも大切です。

寝たきりの犬猫も往診で診察できる場合があります

寝たきりになり、動物病院へ連れて行くことが難しくなった場合には、往診が選択肢になることがあります。

往診では、ご自宅へ伺い、普段過ごしている場所でその子の状態を確認します。

その子の状態に応じて、

身体の診察。

痛みや呼吸の確認。

皮膚や床ずれの確認。

排泄や食事についての相談。

寝床や介護環境についての相談。

ご自宅で可能な治療。

などを検討します。

実際に生活している場所を見ることができるため、

「どのように寝かせているのか」

「食事や水はどこに置いているのか」

「排泄のお世話はどのようにしているのか」

といったことを確認しながら、具体的な方法を一緒に考えられることも往診の特徴です。

寝たきりでも動物病院での診療が必要なことがあります

寝たきりだからといって、すべての診療を往診だけで行えるわけではありません。

状態によっては、動物病院の設備を使用した検査や治療が必要になることがあります。

特に、

  • 呼吸が非常に苦しそう
  • 意識や反応が明らかにおかしい
  • けいれんが続いている
  • 強い痛みがある
  • 短時間で急激に状態が悪化した
  • 尿が出ない
  • 繰り返し嘔吐している
  • 出血が多い

などの場合には、早めに獣医師へ相談してください。

緊急性が高い場合には、往診を待つよりも設備の整った動物病院へ直接向かった方がよいことがあります。

「寝たきりだから移動させたくない」

というお気持ちは自然なものだと思います。

ですが、状態によっては、移動による負担よりも緊急の検査・治療を受けることの方が大切になる場合があります。

判断に迷ったときには、まず現在の状態を獣医師へ伝えてください。

寝たきりになっても「できること」はあります

大切な犬や猫が自分で立てなくなった姿を見ると、

「もう何もしてあげられないのでは」

と思ってしまうことがあるかもしれません。

ですが、寝たきりになってからもできることはあります。

身体が痛くないようにする。

清潔な寝床を整える。

床ずれを防ぐ。

排泄を手伝う。

食事や水分について考える。

苦しくない姿勢を探す。

その子が安心できる場所で、ご家族のそばで過ごす。

一つひとつは小さなことに見えるかもしれません。

ですが、こうした毎日のケアが、その子の生活を支えています。

そして、

「病院へ連れて行けないから、もう診てもらえない」

と考えなくても大丈夫です。

通院することが難しくなった時には、往診という方法もあります。

今その子に必要なことと、ご家族が続けられることを一緒に考えながら、無理の少ない介護方法を見つけていただけたらと思います。

福岡市で寝たきりの犬猫の往診をご検討の方へ

福岡犬猫往診クリニックでは、福岡市を中心に、寝たきりになった犬猫の往診も行っています。

「寝たきりになり、病院へ連れて行けない」

「床ずれや介護について相談したい」

「自宅でどのようなことをしてあげられるか知りたい」

という場合には、往診専用LINEからご相談いただけます。

▼往診についてのご相談はこちら
https://lin.ee/P5x6bjfZ

犬猫の状態によっては、往診ではなく動物病院での検査・治療をご案内する場合があります。

福岡犬猫往診クリニック
獣医師 かわの わいちろう


※この記事は、寝たきりになった犬猫の自宅介護や往診について一般的な情報をお伝えするものです。寝返り、食事、水分、運動などの適切な方法は、病気や身体の状態によって異なります。実際の介護方法については、かかりつけの獣医師へご相談ください。

参考情報

  • AAHA「2023 AAHA Senior Care Guidelines for Dogs and Cats」
  • MSD Veterinary Manual「Evaluation and Initial Treatment of Dog and Cat Emergencies」
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