「最近、散歩の途中で立ち止まるようになった」
「以前より遊ばなくなった気がする」
「少し動いただけで疲れているように見える」
犬や猫が年齢を重ねると、
「もうシニアだから、体力が落ちたのかな」
と思うことがあると思います。
もちろん、年齢とともに活動量や筋力が変化することはあります。
ですが、
「疲れやすくなった」という変化を、すべて年齢のせいにしてよいとは限りません。
心臓病。
呼吸器の病気。
貧血。
関節や身体の痛み。
筋力の低下。
肥満。
さまざまな病気や身体の変化によって、以前より動けなくなることがあります。
今回は、
- 犬猫が疲れやすくなる原因
- 心臓病でみられることがある変化
- 散歩中に確認したいこと
- 呼吸の変化
- 咳について知っておきたいこと
- 心雑音を指摘された場合
- 自宅で観察してほしいこと
- 動画を残しておくメリット
- 早めに受診した方がよい症状
について、獣医師の立場からお伝えします。
- 「疲れやすくなった」とはどんな変化?
- 犬猫が疲れやすくなる原因は心臓だけではありません
- 心臓病では「運動を嫌がる・疲れやすい」ことがあります
- 「散歩の距離が短くなった」は大切な変化です
- 階段を嫌がる時は心臓だけでなく痛みにも注意
- 運動後の呼吸を見てみてください
- 寝ている時・安静時の呼吸も確認しましょう
- 咳がある=心臓病とは限りません
- 健康診断で「心雑音があります」と言われたら
- 心臓病でも初期には症状が分かりにくいことがあります
- 「年齢による変化」と「病気」を見分けるのは簡単ではありません
- 「いつから変わったか」を覚えておきましょう
- 動画を撮っておくと診察の参考になることがあります
- 体重の変化も確認してみてください
- こんな症状がある場合には早めに動物病院へ
- 「元気も食欲もあるから大丈夫」とは限りません
- 飼い主さんが気づいた「いつもと違う」は大切な情報です
- 疲れやすくなった時は「原因を決めつけない」ことが大切です
「疲れやすくなった」とはどんな変化?
「疲れやすい」といっても、犬猫によって表れ方はさまざまです。
犬であれば、
- 散歩の途中で立ち止まる
- 歩く距離が短くなる
- 散歩へ行きたがらない
- 階段や坂道を避ける
- すぐに抱っこを求める
- 遊ぶ時間が短くなる
- 運動後になかなか呼吸が落ち着かない
- 帰宅後に長く休むようになる
などがあります。
猫では犬のように散歩することが少ないため、
- 高い場所へ登らなくなった
- 遊ぶ時間が短くなった
- 以前よく行っていた場所へ行かなくなった
- 少し動くとすぐ横になる
- 寝ている時間がさらに増えた
- 動くことを嫌がる
といった変化として気づくことがあります。
大切なのは、
「何歳だから」ではなく「以前のその子と比べてどう変わったか」
を見ることです。
犬猫が疲れやすくなる原因は心臓だけではありません
疲れやすさから心臓病が見つかることはあります。
ですが、
疲れやすい=心臓病
というわけではありません。
たとえば、
- 心臓病
- 呼吸器疾患
- 貧血
- 関節炎などの痛み
- 筋力低下
- 肥満
- 内分泌疾患
- 神経や筋肉の病気
- 発熱などの全身性疾患
- 暑さによる身体への負担
などでも、活動量が低下したり疲れやすくなったりすることがあります。
特に高齢犬・高齢猫では、複数の問題が同時に起きていることもあります。
そのため、
「心臓が悪いのかな?」
と自己判断するのではなく、身体全体を確認することが大切です。
心臓病では「運動を嫌がる・疲れやすい」ことがあります
心臓は、全身へ血液を送り出すために大切な臓器です。
心臓の働きや血液循環に問題が起こると、状態によっては運動した時に必要な酸素や血流を十分に届けることが難しくなります。
その結果、
以前と同じ距離を歩けない。
すぐ休みたがる。
遊んでいても途中でやめる。
といった運動不耐性がみられることがあります。
犬の心臓病では、
- 疲れやすい
- 散歩を嫌がる
- 呼吸が速い
- 呼吸が苦しそう
- 咳
- 元気がない
- ふらつく
- 倒れる
などがみられることがあります。
ただし、これらの症状だけで心臓病と判断することはできません。
「散歩の距離が短くなった」は大切な変化です
毎日散歩している犬では、普段の散歩が身体の変化に気づく機会になります。
たとえば、
以前は30分歩いていたのに、最近は10分ほどで帰りたがる。
いつも登っていた坂道で止まる。
途中で座り込むようになった。
散歩へ行くこと自体を嫌がる。
という変化です。
もちろん、
暑い。
足腰が痛い。
肉球を傷めている。
体重が増えた。
という場合にも同じような行動はみられます。
だからこそ、
「何メートル歩けたか」だけではなく、歩き方・呼吸・痛み・帰宅後の状態まで一緒に見る
ことが大切です。
階段を嫌がる時は心臓だけでなく痛みにも注意
「最近階段を嫌がる」
「ソファへ上がらなくなった」
という変化もあります。
心臓や呼吸への負担から運動を避けている場合もありますが、
高齢犬・高齢猫では、
関節炎。
腰や背中の痛み。
筋力低下。
などでも同じような変化がみられます。
特に、
立ち上がる時につらそう。
歩き始めがぎこちない。
後ろ足が滑る。
身体を触ると嫌がる。
という様子があれば、痛みについても確認する必要があります。
「動かない=体力低下」と決めつけないことが大切です。
運動後の呼吸を見てみてください
散歩や遊びのあとには、呼吸が速くなることがあります。
特に犬は、体温調節のためにハアハアと口を開けて呼吸することがあります。
ですが、
以前より少し動いただけで息が上がる。
休んでもなかなか呼吸が落ち着かない。
以前より呼吸が苦しそう。
という場合には注意が必要です。
心臓病だけではなく、肺や気道など呼吸器の病気でも、運動した時に疲れやすくなることがあります。
「疲れているように見える」のか、「呼吸がつらくて動けない」のか
という違いも、診察では重要な情報になります。
寝ている時・安静時の呼吸も確認しましょう
運動中だけでなく、
落ち着いて休んでいる時や寝ている時の呼吸
も大切です。
呼吸が苦しい犬猫では、
安静にしているのに呼吸が速い。
胸やお腹を大きく使って呼吸する。
横になることを嫌がる。
首を伸ばして呼吸する。
といった様子がみられることがあります。
心臓病のある犬などでは、獣医師から自宅で安静時・睡眠時の呼吸数を確認するようすすめられることもあります。
ただし、
「○回なら必ず病気」
と数字だけで自己判断するのではなく、普段のその子との違いを確認し、気になる場合には獣医師へ相談してください。
咳がある=心臓病とは限りません
犬の心臓病では咳がみられることがあります。
そのため、
「高齢犬が咳をしているから心臓かな?」
と思う方もいると思います。
ですが、咳には、
気管や気管支の病気。
肺の病気。
感染症。
気道の問題。
など、心臓以外の原因もあります。
特に高齢の小型犬では、心雑音と咳の両方があっても、必ずしも咳の原因が心不全とは限りません。
また、猫では心臓病によって咳をすることは犬ほど一般的ではありません。
猫の心臓病では、呼吸が速い、呼吸が苦しそう、食欲が落ちるなど、別の変化として現れることがあります。
咳だけで原因を決めつけず、診察を受けてください。
健康診断で「心雑音があります」と言われたら
健康診断などで、
「心雑音があります」
と言われることがあります。
心雑音とは、心臓や血管の中の血流によって聞こえる通常とは異なる音です。
心雑音が聞こえた場合には、
年齢。
犬種・猫種。
心雑音の大きさや位置。
症状があるか。
心拍数やリズム。
などを確認し、必要に応じて詳しい検査を検討します。
検査には、
- 胸部レントゲン
- 心臓超音波検査
- 心電図
- 血圧測定
- 血液検査
などが使われることがあります。
必要な検査は、その子の状態によって異なります。
心臓病でも初期には症状が分かりにくいことがあります
心臓に病気があっても、初期には目立った症状がない場合があります。
健康診断で初めて心雑音を指摘され、
「元気なのに心臓病なの?」
と思うこともあります。
反対に、
疲れやすい。
呼吸が変わった。
という症状が出ている場合には、病気が進行している可能性もあります。
そのため、
症状が出るまで待つのではなく、
定期的な健康診断。
聴診。
必要に応じた検査。
を受けることも大切です。
「年齢による変化」と「病気」を見分けるのは簡単ではありません
高齢になると、
筋肉量が減る。
関節が動かしづらくなる。
睡眠時間が増える。
活動量が減る。
といった変化がみられることがあります。
そのため、
病気による変化が、
「歳をとったから仕方ない」
と見過ごされてしまうことがあります。
ですが、
以前より明らかに散歩時間が短くなった。
数週間で急に動かなくなった。
呼吸の仕方が変わった。
食欲や体重も変化した。
という場合には、一度身体の状態を確認することをおすすめします。
「いつから変わったか」を覚えておきましょう
診察を受ける時には、
「疲れやすいです」
だけではなく、
いつ頃から、どのように変化したのか
が分かると診察の参考になります。
たとえば、
「2か月ほど前から散歩時間が30分から15分になった」
「ここ1週間、坂道で必ず止まる」
「3日前から遊んだ後の呼吸がなかなか落ち着かない」
といった情報です。
完璧に覚えている必要はありません。
大まかな経過でも構いません。
動画を撮っておくと診察の参考になることがあります
自宅や散歩中の様子を、動物病院では再現できないことがあります。
安全に撮影できる場合には、
- 歩いている様子
- 疲れて立ち止まる様子
- 呼吸の様子
- 咳の様子
- ふらつき
- 遊んだ後の状態
などを動画に残しておくと診察の参考になります。
ただし、
呼吸が非常に苦しそう。
意識がおかしい。
倒れている。
など緊急性が高い場合には、動画撮影より受診を優先してください。
体重の変化も確認してみてください
体重の変化も重要です。
体重が増えている場合には、肥満によって運動時の負担が大きくなっている可能性があります。
一方で、
食欲があるのに体重が減る。
筋肉が減ってきた。
という場合には、別の病気が隠れている可能性があります。
高齢犬・高齢猫では、
体重だけではなく筋肉量も少しずつ変化する
ことがあります。
定期的に体重を測り、以前との変化を見ておくとよいでしょう。
こんな症状がある場合には早めに動物病院へ
疲れやすさだけでなく、
- 安静にしていても呼吸が苦しそう
- 明らかに呼吸が速い状態が続く
- 猫が口を開けて呼吸している
- 舌や歯ぐきの色がおかしい
- 意識を失う、倒れる
- ふらつきが強い
- ほとんど動けない
- 急激に元気がなくなった
という場合には、早めの診療が必要になることがあります。
特に呼吸困難や意識の異常がある場合には、様子を見続けず動物病院へ連絡してください。
「元気も食欲もあるから大丈夫」とは限りません
犬猫では、
食事は食べられている。
家族にはいつも通り反応する。
という状態でも、身体の中で病気が進んでいることがあります。
もちろん、
少し疲れやすいだけですぐ重い病気を疑う必要はありません。
ですが、
以前にはなかった変化が続いている
のであれば、
「食欲があるから大丈夫」
「シニアだから仕方ない」
だけで終わらせず、一度かかりつけの動物病院で相談してみてください。
飼い主さんが気づいた「いつもと違う」は大切な情報です
獣医師が診察できるのは、その子の生活の一部分です。
毎日の散歩。
ごはん。
睡眠。
遊び方。
階段の上り下り。
家族への反応。
こうした普段の姿を一番よく知っているのは飼い主さんです。
「病気なのかは分からないけれど、何となく前と違う」
という感覚が、診察につながることがあります。
「気のせいかもしれない」と思う変化も、遠慮せず獣医師へ伝えてください。
疲れやすくなった時は「原因を決めつけない」ことが大切です
犬猫が疲れやすくなった時、
高齢だから。
心臓だから。
太ったから。
とひとつの原因に決めつけてしまうと、ほかの病気を見逃してしまうことがあります。
大切なのは、
いつから変わったのか。
何をすると疲れるのか。
呼吸はどうか。
咳はあるか。
痛そうではないか。
体重は変化していないか。
食欲や元気はどうか。
を一緒に見ることです。
心臓病が見つかることもあれば、
関節の痛み。
呼吸器の病気。
貧血。
肥満。
その他の病気。
が原因だったということもあります。
「疲れやすい」という小さな変化を、身体全体を見直すきっかけにしていただけたらと思います。
※この記事は、犬猫の疲れやすさ・運動不耐性・心臓病などについて一般的な情報をお伝えするものです。疲れやすさには心臓病以外にもさまざまな原因があります。症状が続く場合や、呼吸困難・失神・急激な元気消失などがある場合には、早めに動物病院へご相談ください。
参考情報
- Merck Veterinary Manual「Diagnosis of Cardiovascular Disease in Dogs」
- Merck Veterinary Manual「Heart Failure in Dogs and Cats」
- Merck Veterinary Manual「Clinical Signs of Respiratory Disease in Animals」
- AAHA「2023 AAHA Senior Care Guidelines for Dogs and Cats」
- Cornell University College of Veterinary Medicine「Pets Get Heart Disease Too」
