心臓病の犬猫が横にならない時|寝方の変化・呼吸・受診の目安を獣医師が解説

「前までは横になって眠っていたのに、最近は座ったまま休んでいる」

「寝ようとしても、すぐに起きてしまう」

「夜になると何度も場所を変えて、なかなか眠らない」

心臓病の犬や猫と暮らしていると、このような寝方の変化に気づくことがあります。

寝る姿勢は、その子の性格や好み、室温、寝床などによっても変わります。

そのため、

寝方が変わった=心臓病が悪化した

とは限りません。

ですが、心臓病のある犬猫では、呼吸がしづらくなった時に、

横になるより身体を起こしていた方が楽。

伏せたまま休む。

寝ようとしても何度も起きる。

といった変化がみられることがあります。

特に大切なのは、

「どんな姿勢で寝ているか」だけではなく、「以前のその子と比べて変わったか」

を見ることです。

今回は、

  • 心臓病の犬猫で寝方が変わる理由
  • 横にならず座ったまま休む理由
  • 何度も寝る場所を変える時に考えたいこと
  • 心臓病以外で寝方が変わる原因
  • 寝ている時の呼吸で確認したいこと
  • 睡眠時・安静時呼吸数の測り方
  • 咳について知っておきたいこと
  • 自宅で記録してほしい変化
  • すぐに受診した方がよい呼吸のサイン

について、獣医師の立場からお伝えします。

心臓病の犬猫では、なぜ寝方が変わることがあるの?

犬猫の心臓病が進行し、心臓の働きや血液循環に影響が出ると、状態によっては肺や胸の中に水分がたまり、呼吸が苦しくなることがあります。

そのような時には、

いつものように横になると苦しい。

身体を起こした姿勢の方が呼吸しやすい。

首を少し伸ばした方が楽。

と感じることがあります。

その結果、

  • 横にならず座ったまま休む
  • 胸を床につけた伏せの姿勢でいる
  • 頭や首を高くして休む
  • 寝てもすぐ起きる
  • 何度も姿勢を変える
  • なかなか深く眠れない

といった様子がみられる場合があります。

このように、横になることで呼吸がつらくなり、身体を起こした姿勢を選ぶ状態は、人の医療では「起坐呼吸」と表現されることがあります。

犬猫でも、呼吸困難がある時に身体を起こした姿勢をとることがあります。

「横にならない」は大切なサインになることがあります

普段から伏せて眠る子。

丸まって眠る子。

横向きで眠る子。

仰向けになる子。

寝姿は一頭ずつ違います。

ですから、

「この姿勢なら異常」

と寝方だけで判断することはできません。

それより大切なのが、

いつもの寝方が変わったか

ということです。

たとえば、

これまで毎晩横になって熟睡していた犬が、急に座ったまま休むようになった。

いつも丸くなって眠っていた猫が、伏せた姿勢のまま頭を上げている時間が増えた。

という変化です。

こうした「以前との違い」がある場合には、寝方以外の変化も確認してみてください。

寝ようとしてもすぐ起きる場合は「休めない理由」を考えます

犬猫が、

横になる。

数分で起きる。

別の場所へ移動する。

また横になる。

再び起きる。

ということを繰り返す場合があります。

この時、

「落ち着きがないだけかな」

と思うかもしれません。

ですが、身体に何らかの不快感があり、楽に休める姿勢が見つからない可能性があります。

たとえば、

呼吸が苦しい。

身体が痛い。

暑い。

吐き気がある。

不安がある。

排泄したい。

などでも、何度も姿勢や寝場所を変えることがあります。

そのため、

「何度も起きる=心臓病」

とも限りません。

心臓病以外でも寝方が変わることがあります

ここはとても大切です。

犬猫の寝方が変化する原因は、心臓病だけではありません。

たとえば、

  • 関節炎など身体の痛み
  • 腰や背中の痛み
  • 呼吸器の病気
  • 発熱
  • 吐き気や腹部の不快感
  • 室温が暑い・寒い
  • 寝床が身体に合っていない
  • 不安や認知機能の変化
  • 排泄したい

など、さまざまな原因があります。

特に高齢犬・高齢猫では、心臓病と関節の痛みなど、複数の問題を同時に抱えていることもあります。

だからこそ、

「心臓病だから寝方が変わった」

と最初から決めつけず、身体全体を見ることが大切です。

痛みがある子も何度も姿勢を変えることがあります

高齢犬・高齢猫では、関節炎など慢性的な痛みがみられることがあります。

たとえば、

横になろうとすると痛い。

同じ姿勢を長く続けるとつらい。

起き上がる時に痛い。

という状態では、何度も身体の向きを変えたり、寝る場所を移動したりすることがあります。

呼吸ではなく痛みが原因の場合には、

  • 立ち上がる時につらそう
  • 歩き始めがぎこちない
  • 階段を嫌がる
  • ソファへ上らなくなった
  • 身体を触ると嫌がる
  • 後ろ足が滑る

などの変化が一緒にみられることがあります。

寝姿だけではなく、日中の歩き方も確認してみてください。

心臓病の子では「寝ている時の呼吸」が大切です

心臓病の犬猫と暮らしている場合、寝姿と一緒に見ていただきたいのが呼吸です。

特に、

運動直後。

興奮している時。

暑くてハアハアしている時。

ではなく、

静かに眠っている時や、完全に落ち着いて休んでいる時

の呼吸が参考になります。

たとえば、

以前より明らかに呼吸が速い。

胸やお腹の動きが大きい。

浅い呼吸を繰り返している。

寝ていても呼吸が落ち着かない。

という変化がないか確認してください。

睡眠時・安静時呼吸数を自宅で確認する方法があります

心臓病の犬猫では、獣医師から睡眠時呼吸数・安静時呼吸数を自宅で確認するよう案内されることがあります。

方法は難しくありません。

犬猫が落ち着いて眠っている時に、胸やお腹の上下を見ます。

胸が上がって下がる一往復を「1回」

として数えます。

30秒間数えて2倍すれば、1分間の呼吸数を出すことができます。

たとえば、

30秒間に12回なら、

1分間では約24回です。

大切なのは、一度の数字だけを見ることではありません。

普段のその子がどのくらいなのかを知り、その数字から持続的に増えていないかを見ること

です。

呼吸数はどのくらいなら正常?

健康な犬猫が静かに休んでいる時の呼吸数は、一般的に1分間15~30回程度がひとつの目安とされています。

ただし、

年齢。

体温。

室温。

興奮。

身体の状態。

などによっても変化します。

また、心臓病ですでに治療を受けている犬猫では、獣医師からその子ごとの目標値を指示されることがあります。

そのため、

数字だけで「心不全だ」「大丈夫だ」と自己判断しないこと

が大切です。

普段より明らかに増えている状態が続く場合や、1分間35回を超える呼吸が安静時に続くような場合には、かかりつけの獣医師へ相談してください。

呼吸数を測る時は「本当に休んでいる時」に

呼吸数を測る時には注意点があります。

散歩から帰った直後。

遊んだ直後。

興奮している時。

暑くてハアハアしている時。

毛づくろいをしている時。

などは、正確な安静時呼吸数を測るのに適していません。

できれば、

ぐっすり眠っている時

に確認してください。

毎日同じような時間帯に測り、簡単に記録しておくと変化が分かりやすくなります。

「いつもの呼吸数」を知っておくことに意味があります

たとえば、

普段は寝ている時に20回前後だった犬が、

数日かけて28回、32回、36回と増えてきた。

という場合。

一回だけ「36回だった」という情報よりも、

普段からどのように変化してきたか

が重要な診療情報になります。

カレンダーやスマートフォンに、

9月1日 22回
9月2日 23回
9月3日 28回

という程度に記録するだけでも構いません。

獣医師から呼吸数を記録するよう指示されている場合には、その指示に従ってください。

呼吸数だけでなく「呼吸の仕方」を見てください

呼吸数がそれほど増えていなくても、呼吸そのものが苦しそうな場合があります。

特に、

  • 胸やお腹を大きく使っている
  • 首を伸ばしている
  • 鼻を大きく動かしている
  • 横になれない
  • 頭を高く保っている
  • 落ち着かず何度も姿勢を変える

といった変化があれば注意してください。

呼吸の回数と呼吸の努力の両方を見ること

が大切です。

猫が口を開けて呼吸している時は注意してください

犬は運動後や暑い時に口を開けてハアハアすることがあります。

一方、猫が安静時に口を開けて呼吸している場合には注意が必要です。

猫の心臓病では、状態が進行すると、

呼吸が速い。

呼吸が苦しそう。

口を開けて呼吸する。

元気がなくなる。

といった症状がみられることがあります。

心臓病だけでなく、猫喘息など呼吸器の病気でも同じような症状がみられます。

猫が安静にしているのに口を開けて呼吸している場合には、様子を見続けず早めに動物病院へ連絡してください。

咳が増えていないかも確認してください

犬の心臓病では、状態によって咳がみられることがあります。

特に、

夜。

寝ている時。

興奮した時。

運動後。

などに咳が増えたと感じることがあります。

ただし、

咳がある=必ず心臓病

ではありません。

気管。

気管支。

肺。

感染症。

など、さまざまな原因で咳は起こります。

また、猫では心臓病による咳は犬ほど一般的ではありません。

そのため、咳だけで心臓病の悪化と判断するのではなく、呼吸数や呼吸の仕方なども含めて獣医師へ相談してください。

寝方の変化を動画に残しておきましょう

動物病院では、

「家では横にならないんです」

と伝えても、その場では普通に横になることがあります。

そのため、安全に撮影できる場合には、

  • 座ったまま休んでいる姿勢
  • 伏せたまま頭を上げている姿勢
  • 横になろうとしてすぐ起きる様子
  • 呼吸の様子
  • 咳をしている様子

などを動画に残しておくと診察の参考になることがあります。

特に、心臓病のある子では、

「自宅で普段どう休んでいるか」

が大切な情報になります。

ただし、明らかな呼吸困難がある時には動画を撮り続けることより受診を優先してください。

「いつから寝方が変わったか」も記録してください

診察時には、

「最近横にならない」

だけではなく、

いつ頃から始まったのか。

毎日なのか。

夜だけなのか。

運動後だけなのか。

咳も増えたのか。

呼吸数も変わったのか。

食欲や元気はどうか。

などが分かると診察の参考になります。

たとえば、

3日前から夜だけ座って休むことが増えた

昨日から横になるとすぐ起きる

という程度でも構いません。

寝る場所そのものも確認してみてください

寝方が変わった時には、身体だけではなく環境についても確認します。

たとえば、

室温が高すぎないか。

寝床が暑くないか。

クッションが柔らかすぎないか。

滑りやすくないか。

痛みのある身体では入りづらい寝床になっていないか。

などです。

特に高齢犬・高齢猫では、以前は快適だった寝床が身体に合わなくなることがあります。

心臓病があるからといって、すべての寝方の変化を心臓だけで説明しないことが大切です。

心臓病の薬を自己判断で増減しないでください

心臓病の犬猫で呼吸数が増えたり、寝方が変わったりすると、

「薬を少し増やした方がいいのかな」

と思うかもしれません。

ですが、

心臓のお薬や利尿薬などを自己判断で増減しないでください。

呼吸状態が変化する原因は心不全だけとは限りません。

また、薬を増量すると、

脱水。

腎臓への影響。

電解質バランスの変化。

などが問題になる場合があります。

寝方や呼吸が変わった場合には、現在のお薬の名前・量・飲ませた時間などを確認し、獣医師へ相談してください。

こんな症状があれば早めに獣医師へ相談してください

心臓病がある犬猫で、

  • 今まで横になれていたのに座ったまま休む
  • 寝ようとしても何度も起きる
  • 安静時の呼吸数が普段より増えている
  • 咳が増えた
  • 散歩ですぐ疲れるようになった
  • 食欲が落ちた
  • 元気がなくなった

といった変化がみられる場合には、早めにかかりつけの獣医師へ相談してください。

軽い変化の段階で相談することで、状態の確認や治療の見直しにつながる場合があります。

こんな呼吸は「様子を見る」より受診を優先してください

特に注意したいのが、

  • 明らかに呼吸が苦しそう
  • 胸やお腹を大きく使って呼吸している
  • 横になることができない
  • 首を伸ばして呼吸している
  • 猫が口を開けて呼吸している
  • 舌や歯ぐきが青白い・紫色に見える
  • 意識がぼんやりしている
  • 倒れた
  • ぐったりして動けない

といった状態です。

このような場合には、呼吸困難など緊急性の高い状態の可能性があります。

「朝まで様子を見よう」

と長時間待たず、動物病院や夜間救急病院へ連絡してください。

「横にならない」だけを見るのではなく、全体の変化を見ましょう

心臓病の子の寝方が変わると、

「心臓が悪くなったのでは」

と心配になると思います。

確かに、呼吸が苦しくなったことで寝姿が変わる場合があります。

一方で、

痛み。

室温。

寝床。

不安。

その他の病気。

などでも同じような変化は起こります。

だからこそ、

寝方。

呼吸数。

呼吸の仕方。

咳。

食欲。

元気。

運動量。

を一緒に見てください。

「いつもと違う寝方」は飼い主さんだから気づけるサインです

診察室で獣医師が見る犬猫の姿は、その子の生活のごく一部分です。

毎晩どのように眠るのか。

どの場所がお気に入りなのか。

どの姿勢が一番落ち着くのか。

それを一番知っているのは、一緒に暮らしているご家族です。

だからこそ、

「昨日までと何か違う」

という気づきには意味があります。

もちろん、寝方が変わったからといってすぐに大きな病気を意味するわけではありません。

ですが、心臓病のある子では、

いつもの姿勢で眠れない。

呼吸が変わった。

何度も起きる。

といった小さな変化が、身体の状態を見直すきっかけになることがあります。

今日、その子が眠っている時に、

どんな姿勢で眠っているか。

呼吸は穏やかか。

いつも通り落ち着いて眠れているか。

そっと見てみてください。

毎日の小さな変化を知っておくことが、必要な時に早く獣医師へ相談することにつながります。


※この記事は、心臓病の犬猫にみられることがある寝方や呼吸の変化について一般的な情報をお伝えするものです。寝方の変化には、心臓病だけではなく痛み・呼吸器疾患・環境・不安などさまざまな原因があります。明らかな呼吸困難、猫の安静時の開口呼吸、意識異常、虚脱などがみられる場合には、速やかに動物病院へご相談ください。

参考情報

  • Merck Veterinary Manual「Heart Failure in Dogs」
  • Cornell University College of Veterinary Medicine「Pets Get Heart Disease Too」
  • Cornell University College of Veterinary Medicine「Hypertrophic Cardiomyopathy」
  • VCA Animal Hospitals「Home Breathing Rate Evaluation」
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