暑い日が続く夏。
愛犬や愛猫に、
「少し便がゆるい」
「食欲が落ちている」
「何度か吐いた」
といった変化がみられると、
「暑いからかな?」
「夏バテかもしれない」
と思うこともあるのではないでしょうか。
確かに夏は、暑さによって体力を消耗したり、水分摂取量や食欲が変化したりと、犬猫にとっても体調管理に気をつけたい季節です。
ですが、獣医師としてお伝えしたいのは、
下痢や嘔吐を「夏だから」「夏バテだから」と決めつけないでほしい
ということです。
下痢や嘔吐は、胃腸の不調だけではなく、さまざまな病気のサインとして現れることがあります。
今回は、
- 夏に犬猫が下痢や嘔吐をしたときに考えたいこと
- 下痢や嘔吐で注意したい脱水
- 自宅で確認してほしいポイント
- 動物病院へ早めに相談したい症状
について、獣医師の立場からお伝えします。
夏に犬猫が下痢・嘔吐するのは「夏バテ」だけではありません
犬や猫に下痢や嘔吐がみられた場合、
「お腹を壊したのかな?」
「胃腸炎かな?」
と思われる飼い主さんも多いと思います。
もちろん、一時的な胃腸の不調によって症状が起こることもあります。
しかし、下痢や嘔吐=胃腸炎とは限りません。
たとえば、
- 消化器の病気
- 膵臓の病気
- 腎臓や肝臓の病気
- 感染症
- 寄生虫
- 食べ慣れないものによる胃腸障害
- 誤食や異物
- 中毒
など、さまざまな原因が考えられます。
また、夏に特に気をつけたい熱中症でも嘔吐がみられることがあります。
そのため、
「暑い時期だから仕方がない」
「夏バテなら少し様子を見れば治るかな」
と季節だけで判断せず、愛犬・愛猫の全身状態を見ることが大切です。
夏は「熱中症」の症状にも注意してください
夏に嘔吐がみられたときには、胃腸の問題だけでなく、熱中症の可能性についても考える必要があります。
特に、
- 激しくハアハアしている
- よだれが多い
- 体が非常に熱く感じる
- 足元がふらつく
- ぐったりしている
- 意識がぼんやりしている
- 倒れてしまった
などの症状があり、さらに嘔吐がみられる場合には注意が必要です。
熱中症は命に関わることがあるため、緊急性の高い状態です。
暑い場所にいたあとや、お散歩・運動のあとにこうした症状がみられる場合には、すぐに涼しい場所へ移動させ、動物病院へ連絡してください。
単に、
「夏だから食欲がない」
「暑くて少し吐いただけ」
と考えないことが大切です。
下痢や嘔吐が続くと「脱水」に注意
犬猫が下痢や嘔吐をすると、体から水分が失われます。
さらに、気持ち悪さによって水を飲む量が減ったり、飲んでも吐いてしまったりすると、脱水が進むことがあります。
特に注意してほしいのが、
子犬・子猫、シニアの犬猫、持病のある子、体の小さな子です。
こうした子たちは、体調の変化による影響を受けやすいことがあります。
「下痢をしているけれど元気だから」
「吐いたのは少しだけだから」
と症状の回数だけを見るのではなく、
元気・食欲・飲水・尿・いつもの行動に変化がないか
まで一緒に見てあげてください。
犬猫が下痢・嘔吐したときに自宅で確認したいこと
動物病院を受診するとき、飼い主さんからいただく情報は診断を考えるうえでとても大切です。
愛犬・愛猫に下痢や嘔吐があったら、できる範囲で次のことを確認してみてください。
1.いつから始まったのか
今日からなのか。
昨日からなのか。
数日前から少しずつ続いているのか。
症状が始まった時期を確認しておきましょう。
2.何回くらい吐いた・下痢をしたのか
「1回だけ」と「短時間に何度も」では、状況が異なります。
できれば回数と時間を記録しておくと、診察の際に役立ちます。
3.吐いたもの・便の状態
吐いたものには、
- 食べたフード
- 黄色や透明な液体
- 泡
- 異物
- 血液
などが含まれていないか確認してください。
便についても、
軟らかい程度なのか、水のような下痢なのか、血液や黒っぽい便がみられないかなどを見ておきましょう。
可能であれば、便や吐いたものを写真に撮っておくことをおすすめします。
4.元気と食欲はあるか
下痢や嘔吐と同じくらい大切なのが、全身状態です。
いつも通り歩いているか。
呼びかけに反応するか。
ごはんを食べるか。
いつものように過ごせているか。
飼い主さんだからこそ分かる、
「なんとなくいつもと違う」
という感覚も、とても大切な情報です。
5.水は飲めているか
水を自分から飲んでいるのか。
飲んだ水を吐いていないか。
いつもより極端に多く飲んでいないか。
飲水の変化も確認しましょう。
6.誤食の可能性はないか
夏は帰省や旅行、バーベキューなど、普段とは違う食べ物が身近に増えることもあります。
家族が知らない間に食べ物を与えていなかったか。
ゴミ箱をあさっていなかったか。
おもちゃや布、ひもなどがなくなっていないか。
人の薬や犬猫にとって危険な食べ物を口にした可能性がないか。
少し振り返ってみてください。
「関係ないかもしれない」と思うことでも、診断につながる手がかりになる場合があります。
こんな症状がある場合は早めに動物病院へ
下痢や嘔吐があるとき、特に次のような様子がみられる場合には、早めに動物病院へ相談してください。
- 短時間に何度も吐いている
- 水を飲んでも吐いてしまう
- 血を吐いている
- 血便や黒っぽい便が出ている
- ぐったりしている
- 食欲が大きく低下している
- お腹を痛がっている
- お腹が張っている
- 呼吸がいつもと違う
- ふらついている
- 意識や反応がおかしい
- 誤食や中毒の可能性がある
また、症状が一見軽くても、子犬・子猫、シニア、持病がある子では早めに相談することをおすすめします。
大量の嘔吐や下痢、呼吸困難、熱中症、誤食・中毒が疑われる場合などは、緊急対応が必要になることがあります。
人の下痢止めや吐き気止めを自己判断で与えないでください
愛犬・愛猫が苦しそうにしていると、
「家にある薬を少し飲ませたら楽になるかな」
と思うことがあるかもしれません。
しかし、人用の薬を自己判断で犬猫へ与えることは避けてください。
犬と猫でも安全に使える薬や量が異なりますし、人には問題なくても犬猫には危険な成分もあります。
また、
「吐いたから絶食させよう」
「水も飲ませない方がいいかな」
と自己判断することもおすすめできません。
特に嘔吐している犬猫では、すでに脱水が進んでいる可能性もあります。
食事や水分をどうするかについても、症状や持病などによって対応は変わります。
迷ったときには動物病院へ相談し、その子に合った指示を受けてください。
受診するときに持って行くと役立つもの
診察の際には、
- 便や吐いたものの写真
- 症状が起きた時間と回数のメモ
- 現在飲んでいる薬
- 持病についての情報
- 誤食した可能性がある物のパッケージや写真
などがあると、状況を把握する助けになります。
便の状態によっては検査に使用できる場合もありますので、持参した方がよいか迷う場合は、受診前に動物病院へ確認してみてください。
「夏だから」と決めつけず、“いつもと違う”を大切に
夏は暑さによって体調管理が難しくなる季節です。
だからこそ、
「暑いから仕方ない」
「夏バテだと思う」
だけで終わらせないことが大切です。
下痢や嘔吐は、一時的な胃腸の不調のこともあります。
一方で、体の中で起きている病気を知らせるサインになっていることもあります。
毎日一緒に暮らしている飼い主さんだからこそ、
「いつもより元気がない」
「いつもの吐き方と違う」
「何となく様子がおかしい」
と感じることがあります。
その違和感を、大切にしてください。
症状だけを見るのではなく、その子全体を見ること。
そして、
「もう少し様子を見ても大丈夫かな?」
と迷ったときには、かかりつけの動物病院へ相談してください。
早めに相談した結果、
「大きな問題ではなかった」
のであれば、それもひとつの安心につながります。
大切な愛犬・愛猫が暑い夏を元気に過ごせるように、日頃から小さな体調の変化を見てあげてくださいね。
獣医師
かわの わいちろう
※この記事は、犬猫の下痢・嘔吐について一般的な情報をお伝えするものです。原因や緊急性は、年齢・持病・症状・経過などによって異なります。症状が続く場合や体調に異変がある場合は、かかりつけの動物病院へご相談ください。
参考情報
- MSD Veterinary Manual「Vomiting in Dogs」
- MSD Veterinary Manual「Vomiting in Cats」
- MSD Veterinary Manual「What to Do in a Dog or Cat Emergency」

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