■はじめに
大切な子の視力が少しずつ落ちてきたように感じると、
「この先、この子は大丈夫かな…、生活が不便になってしまうのかな」
そんな心配が胸をよぎってしまう方もいるでしょう。
たしかに視力の変化は、
暮らしの中で戸惑いが出やすい変化のひとつです。
しかし、目が見えにくくなったとしても、
安心して、穏やかに暮らす工夫はたくさんあるんです。
今回は、おうちで簡単に取り入れられる
“やさしい環境づくり”のアイデアをまとめました。
■視力の変化は「不安のサイン」ではありません
視力が低下すると、
物にぶつかりやすくなったり、
段差を怖がったり、
歩き方が慎重になる様子がみられることがあります。
それは、決して弱さでも、
「もう何もできない」という意味でもありません。
むしろ、
見えづらい世界の中でも一生懸命暮らそうとする、
その子の健気な姿のあらわれなのかもしれません。
その子が安心して過ごせるように、
ご家族にできる工夫を少しずつ取り入れていくことで、
日常はぐっと穏やかになります。
■工夫①:家具の配置を“変えない”という安心
視力が落ちてくると、実は
“いつもの場所”がとても大切になります。
その子の頭の中には「おうちの地図」があるので…
・大きな家具の場所を動かさない
・通り道をふさがない
・急な模様替えはしない
たったこれだけでも、
その子が迷わず歩ける環境を作る事ができるんです。
■工夫②:香りや音は “見えない世界を照らす灯り”
視覚以外の感覚──
とくに 嗅覚・聴覚・触覚 は、
視力が落ちてくると今まで以上に大切な役割を果たします。
・家族のにおいがついたタオルをそばに置く
・鈴付きの首輪で気配を知らせる
・音が鳴るおもちゃで位置を理解しやすくする
「見えていなくても、あなたのそばにいるよ」
視覚以外で安心を伝えてくれるのが、これらの感覚なんです。
■工夫③:滑り止め・ステップで“安全な道づくり”
視力が低下すると、
段差や滑りやすい床が怖くなってしまう事があります。
・フローリングには滑り止めマット
・高い場所へ上がるときはステップやスロープ
・イスやソファの下は暗くて見えづらいので安全確保
こうした環境づくりは、
その子が歩きやすくなるだけでなく、
「転ばない」という安心にも繋がるのでお勧めです。
■工夫④:バリアフリーを見直す時間に
視力が落ちると、
その子が怖く感じやすいか、
人の目線では中々気付かない事があります。
・家具の角が鋭くないか
・コードが床を横断していないか
・水飲み場まで迷わず歩けるか
少し目線を低くして、
その子の目線になってみる事が大切。
■工夫⑤:声かけとスキンシップは、最高の安心
視力が低くなってくると、
急に触られたり抱っこされると驚いてしまうことがあります。
・必ず声をかけてから触る
・名前を呼んで存在を伝える
・近づくときに、床をやさしくトントンと叩く
「ここにいるよ」「大丈夫だよ」
その声が、その子にとっての近くにいるよという合図になります。
見えなくても、
あなたの声や手の温もりが、
その子の視力のサポートになると思っています。
■よくある不安にも、そっと寄り添って
「見えないのがかわいそう」
「この先の生活が不安」
このような気持ちを抱えることは自然なことです。
しかし、
視力が落ちたとしても、
大きな不安を感じなくても大丈夫です。
視力が落ちても少し工夫をする事で、
その子が安心できる空間を作る事ができるからです。
■気づきにくい変化をそっと見守る
視力の変化に気づかない場合も多くあります。
・物にぶつかりやすくなった
・段差をためらう
・歩き方が慎重になった
このような行動が増えると、
「もしかして見えづらいのかな?」と考えてみて下さい。
そしてこれらが続く場合は、
獣医師に相談してみて下さいね。
■おわりに
視力が落ちても、
その子にとっての安心は
“見える世界”だけではないんです。
視力以外の感覚もあります。
そして、
あなたの手の温もりや声もあります。
小さな工夫からで大丈夫。
そして不安になった時は獣医師に相談して下さい。
焦らずに、大切な子との今の時間を穏やかに過ごしていけますように。
【福岡犬猫往診クリニック 院長】
獣医師:河野 和一郎(かわの わいちろう)
