はじめに ― 「最近、少し変わったかも」と感じる瞬間
「最近、寝てばかりいる気がする」
「ごはんの食べ方が前よりゆっくりに見える」
そんな変化をふと感じる瞬間はありませんか。
秋から冬へ向かう11月は、季節の変わり目の影響を受けやすく、
ゆっくりと年齢を重ねてきた子たちに、小さな変化があらわれやすい時期でもあります。
もちろん、すべてが年齢や体の不調に繋がるというわけではありませんが、
普段との“違い”を感じたときは、いつもより気を付けてその子を観察をする事をお勧めしております。
11月は変化が見えやすくなる季節
夏の間に溜まった疲れは、気温が下がることで外に出やすくなります。
身体の巡りがゆっくりになることで、動きが落ち着いたり、食欲にムラが出たりと、
「ちょっと気になる変化」が目に留まりやすくなる時期です。
季節と体調の関係は様々で、どの子にも当てはまるわけではありません。
しかし、「そういえば最近こういう変化があるかも」と気づくきっかけになるかもしれないと思っています。
小さなサインを見逃さないために
年齢のせいかな、寒さのせいかな――
そう思って見過ごしてしまいそうになる変化も、
大切な子の“今の声”として、受け取ってあげることができるかもしれません。
毎日一緒に過ごしている飼い主さんだからこそ、気付ける小さな気付きもあると思っています。
その気付きが、「実はサインだった」という事も珍しくはありません。特別なことをしなくても、
だからこそ、飼い主さんの気付きを大切にして欲しいと思っております。
11月に見えやすくなる理由① ― 体温変化と冷え
11月は気温が一気に下がる日も多く、体温を保つ力が弱まりやすい時期です。先日の福岡市も、突然一気に気温が下がりました。
筋肉量が少なくなってきた子は特に、冷えの影響を受けやすいと言われています。
冷えが進むと血の巡りがゆっくりになり、
関節の動きが重く感じられたり、体全体の動きが慎重になったりすることも。
もちろん、全ての子に当てはまるわけではありませんが、
「前より寒がりになった気がする」と感じたときは、環境を見直すタイミングなのかもしれません。
11月に見えやすくなる理由② ― 昼夜の寒暖差と自律神経
秋から冬にかけては、昼と夜の寒暖差が大きくなり、体の調整が難しくなることがあります。
自律神経が忙しく働く季節とも言われ、なんとなく「疲れやすい」「元気が出にくい」
そんな様子が見えることもあります。これは、人間も同じですよね。
このような場合は、
気温差の少ない環境を整えてあげたり、安心して眠れる場所を用意してあげたりすることで、
その子にとって過ごしやすい時間を作る事に繋がると思っています。
気になる変化のチェックリスト
11月に見られやすい“ちょっとした変化”の例として、こんなものがあります。
- 動きがゆっくりになった
- 毛づやが落ちて見える
- ごはんの食べ方に変化がある
- 寝ている時間が増えたように感じる
- 目が白っぽく見えることがある
ひとつでも気になる項目は、ありましたか?
「最近どうかな?」と観察をしてみて、気になる異変がある時は獣医師に相談してみて下さいね。
11月に見えやすくなる理由③ ― 夏の疲れが表に出やすい
夏の暑さ、湿度、水分不足、食欲のムラ――
これらが秋になってから、ゆっくりと体に影響を残していることもあります。
特に、高温多湿の夏を乗り越えた子は、秋の涼しさによって
体が休もうとするように見えることもあるようです。
「夏から比べて少し疲れてる?」
そんなふうに感じたら、無理のない生活リズムを意識してあげる事をお勧めしております。
冷え対策でできること
寒さを感じやすくなる11月には、
心地よく眠れる環境づくりを意識して頂く事を、お勧めしています。
- 寝床を床から少し高くする
- ブランケットを重ねて冷気を避ける
- 朝晩は20〜23℃くらいの室温を意識する
小さな工夫ですが、冷えをゆるやかにしてあげる事が、大切なポイントになります。
ごはんの工夫でできること
年齢を重ねると、食欲にムラが出たり、食べ方が変わったりすることもありますよね。
そんなときは、無理に食べさせるのではなく、食べやすさを整える工夫をお勧めしております。
- 消化のやさしいフードに変えてみる
- ぬるめのお湯をかけて香りを立ててみる
- 少量を数回に分けてあげる
その子の負担にならない方法を探してあげること。それが、工夫に繋がると思っています。
年齢を受けとめるということ
“老化”という言葉には、どこか寂しさを感じる方もいるかもしれません。
でも、それは一緒に重ねてきた年月があるからこそ生まれる気持ちなのだと思います。
ゆっくりと変わっていく姿も、
その子とともに積み重ねてきた歴史のひとつ。
変化を恐れるのではなく、
「今のその子」を大切に見守りながら過ごすことが、
これからの穏やかな時間につながっていくのではと、私は考えております。
我が家にも、シニア猫の家族がおります。日々、変わっていく姿もその事の生活の歴史があったからこそと思っているんです。
さいごに ― あなたのぬくもりが、その子のぬくもり
11月は、季節も心も、ゆっくり冬へ向かう時期。
変化が見えやすい季節だからこそ、
いつもより少し気を付けて、観察をしてみるタイミング。
異変を感じたら、気軽に獣医へ相談してみて下さいね。
そして、年齢を重ねた変化は、あなたのそばで過ごしてきた時間の証。
あなたと人生を共に歩んだ、歴史だと思っています。
季節の変化に気を付けながら、大切な子と、今日も温かい時間を過ごして下さいね。
獣医師:河野 和一郎(かわの わいちろう)

