「慢性腎臓病の子の生活で、いちばん大事なことは?」
そう聞かれた時、私はまず「水分が足りない時間を作らない工夫」について説明をします。
慢性腎臓病は、経過が長く付き合っていく事が多い病気です。
その分、日々のケアが積み重なって「その子の過ごしやすさ」に繋がると思っているんです。
この記事では、慢性腎臓病でよく見られる多飲多尿の理由と、脱水を防ぐために飼い主さんができることを、できるだけ分かりやすくまとめました。
「点滴って必要なの?」「家でできるの?」と悩む方にも参考になるように書いています。
慢性腎臓病とは
慢性腎臓病は、腎臓の働きが少しずつ落ちていく状態を指します。
腎臓は、体の中の“いらなくなったもの”を尿として外に出すだけでなく、
- 体の水分バランスを整える
- 体に必要なミネラルのバランスを保つ
- 血圧に関わる調整をする
など、複数の大切な役割を持っています。
そのため腎臓の働きが落ちてくると、見た目は元気に見えても、体の中では少しずつ負担が積み重なっていることがあるんです。
多飲多尿が起こる理由
慢性腎臓病でよく見られる変化のひとつが「多飲多尿」です。
尿がたくさん出るようになり、その分、のどが渇いて水をたくさん飲むようになります。
✅腎臓は「尿を濃くする」仕事もしている
腎臓には、体の状態に合わせて尿を濃くしたり薄くしたりする働きがあります。
慢性腎臓病では、この“濃くする力”が落ちやすく、結果として尿が薄くなり、量が増えることがあります。
✅尿が増える=体の水分が出ていく
尿の量が増えると、体から水分が出ていく時間が長くなります。
そのため、その子の体は「水分を入れてバランスを取ろう」として、自然と飲水量が増えることがあります。
「水を切らさない」が大切な理由
慢性腎臓病の子は、脱水になりやすい。
多飲多尿の子ほど「飲めているから大丈夫」と思われがちですが、実際は“飲めない時間”ができた時に一気に脱水へ繋がってしまう事あるんです。
✅脱水は体調を崩すきっかけになりやすい
脱水が進むと、
- 食欲が落ちる
- いつもより元気がない
- 体重が短期間で減る
- 便が硬くなる
などの変化が出ることがあります。
また、水分が不足すると血液が濃くなりやすく、腎臓にとって負担になる場面もあります。
ここで大切なのは「脱水に対して怖がる」のではなく、
“脱水を起こさない工夫が、体調の安定に繋がりやすい”という視点です。
家でできる水分管理の工夫
ここからは、今日からできるちょっとした工夫をまとめます。
✅水飲み場を増やす
- いつもの場所だけでなく、水飲み場を増やす
- 部屋ごとに1つ置く
- 高齢の子は段差が少ない場所にも置く
「行きやすいところ、飲みやすいところ」だけで、飲む回数が増えることがあります。
✅器の形や高さを見直す
- お皿が深すぎると飲みにくい子もいます
- 低すぎると首がつらい子もいます
その子の体格や姿勢に合わせて、器のタイプを変えてみるのもひとつの方法です。
✅水分の多いごはんを活用する
水分補給は「水だけ」ではありません。
体質や病状、食事内容によって合う合わないはありますが、
- ぬるめのお湯でふやかす
- 水分量の多い食事を取り入れる
- 獣医師と相談しながらスープ状にする
など、“食事からの水分”を意識することで水分摂取が多くなる子もいます。
✅飲まない時間を作らない工夫
冬は空気が乾燥し、暖房で体の水分が奪われやすくなることもあります。
出かける時間が長い日は、
- 帰宅後すぐに飲める場所を作る
- いつもより水飲み場を増やす
- こぼしやすい子は安定した器にする
など、「飲める環境」を先に整えておくと安心ではないでしょうか。
「お口以外からの水分補給」という考え方
慢性腎臓病の子で、体調の波が出やすくなった時に検討されることがあるのが「皮下点滴(皮下補液)」です。
✅皮下点滴は“その子に合うか”が大切
ただし皮下点滴はには、注意点もあります。
状態によっては別の方法が合うこともありますし、心臓の病気などがある場合は注意が必要な場面もあります。
だからこそ、自己判断で始めるのではなく、必ずかかりつけの獣医師と相談しながら進めることが大切です。
✅「急な脱水を防ぐ」ための選択肢になることも
飲める量が不安定になってきた子や、体調を崩しやすい子では、
“脱水で一気に状態が落ちる”ことを避ける目的で皮下点滴を使う場合があります。
皮下点滴を検討するときの目安
「うちの子にも必要?」と悩む時は、以下の点を獣医師と相談してみましょう。
✅体重が短期間で落ちる
✅食欲が不安定な日が増える
✅水を飲む量が日によって大きく違う
✅元気の波が大きくなってきた
✅血液検査で腎臓の数値が変化してきた(と言われた)
ただし、これらは“必ず点滴”という意味ではありません。
「相談のきっかけ」だと思ってもらえるとわかりやすいと思います。
受診時に相談するとスムーズなポイント
病院で相談する時は、次の情報があると獣医師へ伝わりやすいです。
✅飲水量の目安(だいたいでOK)
✅尿の回数や量の変化
✅最近の体重(可能なら推移)
✅食欲のムラ、吐く・下痢などの有無
✅今の食事内容(フード名や形状)
慢性腎臓病は、検査結果と生活の情報を合わせて見ていくことで、方針が立てやすくなります。

まとめ:腎臓を支える基本は「脱水を作らない工夫」
慢性腎臓病の子の暮らしで大切なのは、
「日々の水分補給を安定させる工夫」です。
- 多飲多尿はよくある変化のひとつ
- 水を切らさない環境づくりが安心につながる
- 皮下点滴は、必要に応じて検討される“水分補給の選択肢”
- 迷ったら、遠慮せずに獣医師へ相談してOK
「これくらいで相談していいのかな」
そう思う時ほど、相談が早いほど安心につながることもあります。
大切な子の腎臓を支えるために、できるところから。
一緒に、その子に合う方法を探していきましょう。
福岡犬猫往診クリニック
院長:河野 和一郎(かわの わいちろう)
