猫の肥大型心筋症とは?症状・血栓のリスク・検査の目安を解説

病気の基礎知識・検査ガイド

「突然、後ろ足を引きずっている」
「呼吸が荒くて、苦しそうに見える」
「痛そうに鳴き続けていて、落ち着かない」

どうしたんだろう、、、心配になりますよね。

猫の心臓病の中でも、代表的な病気のひとつが
肥大型心筋症(HCM:Hypertrophic Cardiomyopathy) です。

この病気は、経過の見え方がさまざまで、
日常では気づきにくいことも多くあります。

そして一方で、ある日突然「緊急性の高い状態」として見つかることもあるため、
知っておくだけでも安心につながるテーマです。

この記事では、

  • 肥大型心筋症とはどんな病気か
  • どんな症状が出やすいのか
  • 血栓(血のかたまり)との関係
  • どんな子が注意したいか
  • 検査や治療、暮らしのポイント

を、できるだけ分かりやすくまとめます。

※この記事は一般的な情報です。
その子の状態によって必要な対応は変わるため、気になる症状がある場合は病院で相談してくださいね。

肥大型心筋症(HCM)は猫の心臓病の代表例

肥大型心筋症とは、簡単に言うと
心臓の筋肉(心筋)が厚くなることで、心臓の動きや血液の流れに負担が出る病気です。

猫の心臓病の中でも比較的多く見られるタイプとして知られており、
健康診断や別の検査で偶然見つかることもあります。

✅肥大型心筋症で起こる変化

肥大型心筋症では、主に次のような変化が起こることがあります。

  • 心臓の壁が厚くなる
  • 心臓の部屋が狭くなる
  • 血液を送り出す効率が落ちる場合がある
  • 心臓の中の血流がよどみやすくなることがある

この「血流がよどみやすい状態」が続くと、
血栓(血のかたまり) ができやすくなる可能性があるとされています。

なぜ血栓ができるの?(後ろ足麻痺と関係することも)

血液は本来、サラサラと流れて全身に酸素や栄養を運びます。

ですが、心臓の中で血の流れが滞りやすくなると、
少しずつ血液が固まりやすくなることがあるんです。

そして、心臓の中でできた血栓が大きくなり、
あるタイミングで血管へ流れていくと、
血管を詰まらせることがあると言われています。

✅血栓が詰まる場所で起こりうること

血栓がどこに詰まるかで、症状は大きく変わります。

  • 後ろ足へ向かう血管で詰まる場合
     → 突然、後ろ足が動かない/立てない
  • 腎臓へ向かう血管で詰まる場合
     → 急に体調が崩れ、腎臓に負担がかかることがある
  • 脳へ向かう血管で詰まる場合
     → 脳梗塞が出ることがある

もちろん、すべてのケースがこの病気とは限りません。
ただ「急に起きた強い異変」の場合は、早めに獣医師へ相談してみて下さいね。

こんな症状が突然出ることがあります

肥大型心筋症が疑われるきっかけとして、
飼い主さんが気づきやすい症状は次のようなものです。

✅急に出ることがある症状

  • 突然、後ろ足が動かない(立てない)
  • 痛そうに鳴き続ける
  • 呼吸が荒い、速い

特に、後ろ足の異変が急に出た場合は、
強い痛みを伴うこともあり、緊急性が高いことがあります。

「様子を見れば落ち着くかも」と迷ってしまう気持ちも分かります。
ですが、こうした症状が出た場合は、緊急性が高い為、
できるだけ早めの相談をお勧めします。

実は“静かに進むタイプ”もあります

肥大型心筋症は、突然の症状で見つかることもありますが、
実は「ゆっくり進む」「症状が分かりにくい」こともあります。

そのため、日常の中では

「元気そうに見えるし、大丈夫かな」
「歳のせいで動かなくなったのかも」

と感じやすい病気でもあります。

✅見逃されやすい小さなサイン

  • 寝ている時間が増えた
  • 動きが少しゆっくりになった
  • 遊びの時間が短くなった
  • 呼吸が以前より速い気がする
  • 食欲にムラがある

こうした変化は、もちろん心臓病だけが原因とは限りません。
しかし「積み重なってきた違和感」は、検査のきっかけになるのではないでしょうか。

どんな子が注意したい?(若い子でも油断できない理由)

肥大型心筋症は、年齢に関係なく見つかることがあります。
そのため「若いから大丈夫」と決めつけず、
気になる場合は早めに確認することが大切です。

✅注意したい傾向

  • 遺伝的な要素が関わる可能性がある
  • 純血種で見つかることがある
  • 家系に心臓病がある場合は注意したい

もちろん、純血種だから必ず発症するわけではありません。
ただ「知っておくと安心」なポイントとして覚えておくと良いです。

シニア期では甲状腺との関係も大切

猫のシニア期では、心臓の負担を増やす病気のひとつとして
甲状腺機能亢進症 が知られています。

甲状腺ホルモンが過剰になると、
体の代謝や心拍数が上がり、心臓に負担がかかりやすくなることがあります。

そのため、

「肥大型心筋症が疑われる」
「心臓が少し気になる」

というときは、状況によって

  • 甲状腺ホルモン検査
  • 心臓のエコー検査

などを組み合わせて確認することをお勧めしています。

検査では何をする?(心エコーの重要性)

肥大型心筋症は、見た目や症状だけで判断が難しいことが多いです。
そのため、必要に応じて検査を行いながら状態を確認します。

✅よく行われる検査

  • 聴診(心雑音や不整脈の確認)
  • 胸部レントゲン(心臓や肺の状態)
  • 心臓のエコー検査(壁の厚さ・動き・血流の確認)
  • 血液検査(全身状態、甲状腺など)

特に心臓のエコー検査は、心臓の形や動きを直接確認できるため、
診断や方針を考える上で重要な検査になることがあります。

治療で大切なのは「心臓の負担を減らすこと」

心臓病のケアで大切なのは、
その子の状態に合わせて 心臓にできるだけストレスをかけない ことです。

ストレスは、興奮や急な運動だけでなく、
環境の変化、来客、騒音、寒暖差などでも影響することがあります。

✅生活の中でできるストレス対策

  • 生活リズムをできるだけ一定にする
  • 静かで落ち着ける場所をつくる
  • 室温の変化を少なくする
  • 急な興奮を避ける工夫をする

そして、その次に大切な荷は お薬 です。

お薬は「心臓の働きを支える選択肢」

心臓病のお薬は、病気を“完全に消す”というよりも、
心臓の負担を減らして、生活を穏やかに保つための選択肢
として使われることがあります。

✅よくあるお薬の目的(例)

  • 心臓の負担を軽くする
  • 呼吸の苦しさを緩和する
  • その他

ただし、どのお薬が合うかは、その子の状態によって異なります。
自己判断での中断や変更はせず、病院で相談しながら進めましょう。

まとめ|早期発見と定期チェックが安心につながる

肥大型心筋症は、猫の心臓病の中でも代表的な病気のひとつです。

そしてこの病気は、

  • 日常では気づきにくいことがある
  • ある日突然、強い症状で見つかることがある
  • 血栓が関係する可能性もある

という特徴があります。

だからこそ大切なのは、
「若いから大丈夫」と油断しすぎず、
心エコーなどの検査を上手に活用しながら、状態を把握していくこと

そして、もし

  • 呼吸が荒い
  • 後ろ足が突然動かない
  • 痛そうに鳴き続ける

こうした異変があった時は、迷わず早めに相談してくださいね。

心臓にできるだけ負担をかけない生活と、必要なお薬、定期的な検査。
その子が穏やかに過ごせる時間を守るために、できることはきっとあります。

大切な子と、安心できる毎日が続きますように。

福岡犬猫往診クリニック
院長:河野 和一郎(かわの わいちろう)

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