しこり=腫瘍とは限らない|毛包嚢胞(ニョロニョロの正体)と細胞診の重要性

病気の基礎知識・検査ガイド

皮膚にしこりを見つけたとき、
多くの飼い主さんが最初に検索するのは、

「犬 しこり 腫瘍」
「猫 できもの がん」
「しこり 様子見していい?」

こういった言葉かもしれません。

それだけ、**“しこり=腫瘍なのでは”**という不安が強いということだと思います。

ですが実は、皮膚にできるしこりには
腫瘍ではないタイプもあります。

この記事では、しこりを見つけた時に知っておきたい
・腫瘍以外のできものの例
・毛包嚢胞(毛の根元にできる袋)の特徴
・細胞診(針で調べる検査)で分かること
を、できるだけ分かりやすくまとめます。

怖がらせたいのではなく、
「落ち着いて、必要な確認ができるように」
そんな目的で書いています。

しこり=腫瘍とは限らない

皮膚のしこりを見ると、どうしても
「腫瘍かもしれない」
と考えてしまいますよね。

もちろん、腫瘍の場合もあります。

ただ一方で、腫瘍ではなく
皮膚の中に“袋”ができているタイプや、
炎症によってふくらんでいるタイプもあるんです。

見た目だけでは判断が難しいことが多いため、
必要に応じて検査をして考える、という事が必要になります。

毛包嚢胞(毛の根元にできる袋)ってなに?

✅毛包嚢胞とは、毛の根元(毛包)にできる袋状のできものです。

毛の根元に小さな袋ができて、
その中に角質や皮脂、皮膚のかたまりが溜まっていきます。

大切な子の体をなでていて、
「ここ、少しぷにっとしてる?」
「なんか丸いものがある」
と気づくこともあります。

場所としては、体のどこにできてもおかしくありませんが、
背中や首周り、脇腹などで見つかることも多くあります。

犬猫の体を触る時に「しこりはないかな?」と意識をして
触ってみる事が、見つけるポイントの一つになります。

✅針を刺したら「ニョロニョロ」が出ることもある

毛包嚢胞の特徴のひとつに、
細い針を刺したときに
粘土のような、ニョロっとした内容物が出てくることがあります。

この内容物は、
袋の中にたまった角質などが混ざったものです。

こういった所見があると、
「毛包嚢胞の可能性がありそうだな」と考える材料になります。

✅毛包嚢胞は“腫瘍ではない”ことが多い

毛包嚢胞は、一般的には
腫瘍ではないタイプのできものとして扱われます。

そのため、すぐに大きな処置が必要ではなく、
状態によっては経過観察になることもあるんです。

ただし、ここで大切なのは
“恐らく毛包嚢胞=安心”と決めつけないことです。

しこりの種類はさまざまで、
外見や触った感じだけではわからない事が多いからです。

しこりを見つけた時に「油断が禁物」な理由

✅「きっと毛包嚢胞だろう」という希望的観測で、本当の腫瘍を見逃してしまうことがあります。

飼い主さんの気持ちとしては、
「できれば腫瘍じゃないでほしい」
と思うのは自然な事ですよね。

また、毛包嚢胞のように見える場所でも、
炎症が起きて腫れている場合や、
別の皮膚トラブルが重なっている場合もあります。

だからこそ、
“何かがある”と気づけた時点で、獣医師へ相談をして欲しいんです。

細胞診とは?しこり検査でよく使われる方法

✅細胞診とは、しこりやできものに針を刺して、細胞を少し採取し、顕微鏡で確認する検査です。

いわゆる「針を刺して調べる検査」で、
動物病院でもよく行われます。

✅細胞診のメリット

細胞診には、次のようなメリットがあります。

・その場で実施できることが多い
・体への負担が比較的少ない
・腫瘍の可能性があるかどうかを整理しやすい
・内容物の性質(角質っぽい、炎症っぽいなど)が分かることがある

大切な子の様子を見ながら、
必要に応じて短時間でできる検査として選ばれることがあります。

✅痛みはある?麻酔が必要?

針を刺す検査ですが、痛みはほとんどなく、
その場ですぐに実施出来る事が多いんです。

ただ、場所によっては
・敏感で痛みを感じやすい
・動くと危ない
といった理由で、保定をしっかりしたり、
状況によって方法を調整することもあります。

無理をして行うものではないので、
その子の性格や状態に合わせて、獣医師に相談してみて下さいね。

✅細胞診だけで100%分かる?

細胞診はとても役立つ検査ですが、
すべてが一回で完全に判断できるわけではありません。

採れる細胞が少ないこともありますし、
しこりの場所や性質によって
情報が限られてしまうこともあります。

その場合は、追加で
・再検査
・超音波検査
・病理検査(組織を詳しく調べる検査)
を検討することもあります。

大切なのは、
細胞診を“ゴール”にするのではなく、方向性を決める材料にすることです。

しこりがあっても「すぐ手術」とは限らない

✅検査の結果をもとに、今すぐ治療が必要なケースもあれば、定期的な経過観察で十分なこともあります。

しこりを見つけた瞬間、
「もう手術しかないのかな」
と不安になる方も少なくありません。

でも実際には、
しこりの種類・大きさ・場所・増え方などによって
対応が変わってきます。

例えば、
動きが少なく、大きさも変わりにくい場合は
一定期間の経過観察となるケースもあります。

逆に、
短期間で大きくなる
赤くただれる
出血する
といった変化があれば、早めの相談をお勧めします。

「歯じゃない口臭」と同じで、思い込みがズレを生むことも

✅「しこり=腫瘍」「できもの=危ない」と決めつけすぎても、逆に「きっと大丈夫」と決めつけても、どちらも不安が大きくなります。

大切なのは、
落ち着いてその子の状態を記録し、
獣医師へ相談、そして必要な検査を行う事です。

病気の話は、
分からないままだと不安がどんどん大きくなります。

だからこそ「知ること」ができると、
それが安心に繋がると思っているんです。

こんな時は相談していい?もちろん大丈夫です

✅できもので相談していいの?と思わなくて大丈夫です。

「こんな小さいことで受診していいのかな」
「大したことなかったら恥ずかしいな」
そう感じる飼い主さんもいると思います。

しかし、しこりは
**“気づいた時点がいちばん早い”**ことが多いです。

相談のタイミングが早いほど、
選べる選択肢が増えることもあります。

そして何より、
飼い主さんが気づいてくれたこと自体が
大切な子を守る行動だと、私は思っているんです。

まとめ|焦らなくて大丈夫。「知ること」から始めよう

皮膚のしこりは、
腫瘍の可能性がある場合もあれば、
毛包嚢胞のように腫瘍ではないできものもあります。

ただ、見た目だけで区別するのは難しいため、
必要に応じて細胞診などで確認することが
大切になります。

しこりを見つけた時に大切なのは、

✅自分を責めないこと
✅希望的観測で決めつけないこと
✅落ち着いて「知る」行動を選ぶこと

私たち獣医師は、
大切な子と飼い主さんの味方です。

不安や疑問がある時は、
遠慮せず相談してくださいね。

一緒にその子の最善の選択肢を
見つけていきたい。

私の願いです。

福岡犬猫往診クリニック
院長:河野 和一郎(かわの わいちろう)

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